2018年大学入試徹底研究

2018年大学入試徹底研究

18歳人口の減少にも関わらずセンター試験の志願者増で幕を開けた18年入試。国公立大の志願者が7年連続で減少する一方、私立大は大規模大学の定員管理の厳格化などの影響もあり12年連続の増加となった。学部志望動向は文系学部人気が続き、理系は医療系を中心に志願者が減っている。


18歳人口減少もセンター試験の志願者増加

18歳人口が減少するにも関わらず、今春のセンター試験の志願者は前年を6704人上回る58万2671人、実際の受験者数は55万4212人だった。志願者増の要因として考えられるのは、現役生の志願率が44・6%と過去最高を更新したこと。さらに、定員管理の厳格化により、都市部の大規模私立大が合格者を減らして難化した影響で不合格者が増え、今春入試に臨む浪人が多くなったことが考えられる。

受験科目数別の志願状況を見ると、7科目以上の国公立型の受験生が減少したのに対し、3科目の私立型の受験生の増え幅が大きかったことが特徴。私立大のセンター利用入試は、大半の方式が出願するだけで合否が決まるので活用しやすいことに加え、一般入試と比較して意外に倍率が低い大学が多いことも要因となっている。

大学入試センターからは公表されない、大手予備校などが算出する5教科7(8)科目の予想平均点は、ほぼ前年並み。大手予備校の分析によると、720点以上の高得点層が減少しており、高得点が取りにくい問題だったという。

科目別の平均点は、英語のリスニングが大きく下がった。実践的な英語力が求められて難化したためで、06年の導入以来、最低だ。国語や生物も下がっている。平均点が上がったのは、地歴のB科目、倫理、政治・経済、化学など。理科は基礎科目が30点台、専門科目が概ね60点台に収まるなど、理想的な出題となった。

主要科目の実際の平均点は以下のとおり。▼英語123.75点▼国語104.68点▼数学(ⅠA61.91点、ⅡB51.07点)▼地歴・公民(日本史B62.19点、世界史B67.97点、地理B67.99点、「倫理、政治・経済」73.08点)▼基礎理科(化学30.42点、物理31.32点、生物35.62点)、専門理科(化学60.57点、物理62.42点、生物61.36点)

今春のセンター試験の平均点は前年と大きく変わらず、安定した入試だったといえる。ただ、問題を細かく分析すると、国語の現代文で内容理解を問う出題があり、数学ⅠAで思考の過程を重視するなど、思考力、判断力、表現力を重視する、21年に「大学入試センター試験」に代わって実施される「大学入学共通テスト」を意識した出題があった。今後もこうした傾向が強まる可能性があるが、センター試験対策を見直す必要はないと予備校関係者はいう。日々の授業を大事にしてしっかりと勉強をした受験生は、出題傾向が変わっても対応できるようだ。

国公立大の志願者は7年連続減少

今春の国公立大の一般入試の志願者は46万9244人で、前年を5309人下回った。国公立大の志願者は、7年連続の減少だ。国立大と公立大で分けて見ると、国立大が5912人減で33万205人なのに対し、公立大は603人増の13万9039人だった。

2018年 志願状況

国立大の志願者が減ったのは、今春から一橋大が推薦入試の導入に伴い後期を縮小するなど、難関大を中心に後期縮小の動きが進んでいるため。さらに、現行の教育課程になり、理系は範囲が広い専門理科を2科目学ばなければならず、文系も基礎理科とはいえ2科目必要という科目負担増の影響も大きい。このため、国立大より入試科目のハードルが低い、公立大に目を向ける受験生や、私立大一本に絞る受験生が増えていることが国立大の志願者が増えない一因だ。公立大は、公立小松大と公立諏訪東京理科大の志願者を加えると、さらに増え幅が大きくなる。

地域別の出願状況を見ると、志願者が前年を上回ったのは東北、北陸、中国で、九州は微増。北海道や関東、東海、近畿、四国は減少した。昨年とは対照的に、地方の大学で志願者が減少し、前年に志願者が増えて難化した都市部の大学は、反動でハードルが下がったようだ。

難関大の状況を見ると、旧七帝大(東大、京大、北海道大、東北大、名古屋大、大阪大、九州大)に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた国立難関10大学の前期の志願者指数は102(前年を100とした時の値、以下同じ)でほぼ前年並み、後期は、一橋大の後期縮小の影響が大きく97と減少した。

個別大学の出願状況を見ると、増加が顕著だったのは、北海道大、東北大、大阪大、東北大は世界最高水準の教育研究活動を行える実力と潜在能力が認められた「指定国立大」に選ばれた影響が大きいようだ。北海道大は理系学部の志願者増。大阪大は、昨年新規に導入した「世界適塾入試」の定員が埋まらず、一般入試に振り替えた。その分、倍率が下がった反動で今春の志願者が増えたようだ。東大は、前年の志願者増の反動はなく微増、京大は理系学部の減少が響き、2年連続の志願者減になった。九州大は、微増だった。

2018年 志願者数トップ10 国公立大
国立難関10大学に次ぐクラスの志願者数は、千葉大は前年を下回りながら1万人台をキープして、3年連続で国公立大の中でトップ。筑波大や新潟大、大阪市立大、熊本大も志願者が減少し、やや易化した。岡山大は前年並みで、志願者が増えて難化した大学には、金沢大や大阪府立大がある。その他の大学で志願者増が顕著なのは、秋田大や茨城大、岐阜大、山陽小野田市立山口東京理科大、鹿児島大などで、地方の大学を中心に志願者が増えている。

大学の出願状況は、前年に増えた大学が減少し、減っていた大学は増加するという、隔年現象が起きがちだ。来春は、今春と逆の出願状況になる可能性が高いことを意識しておいた方がよさそうだ。もっとも、国公立大入試全体を見れば、来春も極端に志願者が増えることはなく安定した入試になると見られている。5教科7(8)科目を学ぶのは大変だが、それを頑張り通せば、合格にぐっと近づく状況は、今春と変わらなさそうだ。

私立大の志願者は12年連続増加

今春の私立大の志願者指数は107で、12年連続の増加になった。地域別に見ると、大規模大学が集中する、関東、東海、近畿の志願者増が顕著。志願者が減っているのは東北だけという状況だ。

志願者増の要因はいくつかある。まず、ネット出願や複数学部(学科)に出願することによる併願割引制度、さらに一回の受験で複数学部(学科)の合否判定を受けられるなど、出願しやすい環境が挙げられる。定員管理の厳格化が進み、大規模大学で難化が進んでいるため、併願校数が増えていることもある。

大学生の就職状況が好調な点も大きな要因だ。就職状況がよいため、文系学部の志願者が増えていることが、文系の定員が多い私立大にとって追い風になっている。現行の教育課程になり理科や数学の負担が重くなったことから、国立から志望変更する受験生の影響も考えられる。

個別の大学で志願者が最も多かったのは近畿大。前年を9000人以上上回る15万6225人となり、5年連続で志願者数日本一になった。クロマグロの完全養殖成功による研究成果である近大マグロの発信や入試制度の見直し、キャンパス整備など、様々な改革を打ち出していることが要因だ。

2018年 志願者数トップ10 私立大

2位も昨年と同じ法政大で、地方からの受験生が増えたこともあり、3年連続で10万人を超えた。近畿大と法政大以外で今春の志願者が10万人を超えたのは、3位の明治大、4位の早稲田大、5位の東洋大、6位の日本大で、昨年に引き続き、6校に上った。
大学の難易度が近いグループごとの志願状況を見ると、最難関の早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)の志願者指数は102で前年並み。早稲田大が昨年に引き続き増加したのに対し、慶應義塾大は減少に転じた。それでも、慶應義塾大の入試レベルに影響を与えることはなく、最難関の私立大であることに変わりはない。上智大は英語外部試験を活用するTEAP(アカデミック英語能力判定試験)方式の志願者が大きく増えた影響で全体でも前年を上回った。21年からの大学入学共通テストでの英語外部試験の活用が決まり、英語の4技能を意識する受験生が増えている影響が大きく、他大学でも英語外部試験を活用した方式の志願者が増えている。東京理科大も前年の志願者を上回った。

MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の指数は109。このグループで昨年、唯一志願者が減った中央大が大幅増に転じたこともあり、全大学で志願者が増えて難化した。日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)の指数は107で、全大学の志願者が増えている。

近畿圏の関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の指数は104で、産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)が108といずれも志願者が増えた。両グルーブの大学の中で唯一、志願者が前年を下回ったのは関西学院大だが、慶應義塾大と同様に、入試レベルが下がることはない。

来年も私立大人気が続くと見られる上、大規模総合大学では、定員管理の厳格化が進み合格者が絞られる。大都市圏を中心に厳しい入試が見込まれるので、私立大を目指す生徒は注意が必要だ。

文系人気継続、医療系は志願者減少

今春も文系学部の出願状況が堅調で、私立大を中心に文系学部の人気が高く理系学部が低い「文高理低」の出願状況となった。

国公立大学部系統別志願者

私立大学部系統別志願者数

文系の中でも社会科学系の志願者の伸びが大きく、経営系の志願者指数は、国公立大が110で、私立大は113だった。経済系は国公立大は101と前年並みだが、私立大は110、商学系は国公立大が90と減少し、私立大は、106と伸びている。国公立大の商学系の志願者が減っているのは、設置大学が限られ定員が少ないため、僅かな減少でも指数が大きく変化するためだ。経済・経営・商学系は、一般的な会社員としての就職に繋がる学部であり、大学生の好調な就職状況が志願者増の大きな要因となっている。

法学系は国公立大が98で私立大が105。司法試験に合格するまでに大変な労力と時間を要するにも関わらず、弁護士になっても必ずしも職が保証されるわけではなく、努力が報われにくいことが、経済・経営・商学系に比べて志願者が伸びない要因となっている。社会学系は国公立大が112で、私立大が113だった。国公立大の社会福祉系の伸びが146と大きいのは、新設学部ができた影響だ。

社会の急速なグローバル化を背景に人気が高まる国際系は、国公立大の109に対し私立大は105。文・人文系は国公立大が92で私立大が110と、国公立大は志願者が減少した。教育系は国公立大が95で私立大が100で横ばい。志願者が増えないのは、大学生の就職状況が好調なため、一般企業を目指す受験生が増えている影響が大きい。

企業の採用意欲は相変わらず高く、大学生の好調な就職状況が続くと見られている。そのため、来春入試でも文系学部の人気が維持されることが予想される。社会科学系を中心とした文系学部の志望者は、注意が必要だ。

理系学部の状況を見ると、理工系は国公立大が100で私立大が105。文高理低といわれるなか、国公立大が前年並みの指数を維持し、私立大は上回っているのは、情報系学部・学科の影響が大きい。人工知能(AI)の発達やIoT(モノのインターネット)社会へのニーズの高まりなどから、情報系の志願者は増えているのだ。

農学系は国公立大が95、私立大が91と志願者が減っている。食料や環境問題などについて学ぶ農学は、これから重要性が増す分野だが、情報系のように目に見える形での大きな話題がないことから受験生の興味関心が向かないようだ。この系統を目指す受験生にとって、来春入試も好ましい状況が続くと見られる。

医療系も志願者が減少傾向。中でも難関の国公立大医学系(医学科)の人気が下がっており、指数は93で私立大が96。地域医療従事者や特定診療科の医師不足を背景とした医学部(医学科)の定員増に呼応して人気が高くなったが、受験生離れが続いている。08年のリーマン・ショック以降に起こった大学生の就職難の時代に、多くの優秀な受験生が医学部(医学科)を目指したが、今は一般企業を視野に入れる受験生が増えているようだ。

歯学系の指数は、国公立大が97で私立大が103。看護系は、国公立大が87と減っているのに対し、私立大は109と志願者が増えている。これは、私立大で看護系学部(学科)の新設が進んでいるためだ。看護系は来春も私立大で数多く新設されるので、入試のハードルが高くなることはなさそうだ。

薬学系は、山陽小野田市立山口東京理科大が薬学部を新設したことにより、国公立大の志願者は105と増えたが、私立大は93で、全体としては人気がない。リハビリテーションなどの医療技術系は、国公立大が117で私立大は107だった。

来春入試に向けて、情報系など人気が高い学部・学科がある理工系は注意が必要だが、医療系や農学系志望の受験生は、自由度の高い志望校選びが可能になりそうだ。

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