有名企業への就職実績2023　有名企業でも進む大学生の売り手市場！？

有名企業への就職実績2023

DX（デジタルトランスフォーメーション）人材不足で、大企業でも採用充足が難しくなる一方、求められる側の難関大は、情報関連企業の就職者数が増加。近年の就活の特徴について、有名企業の就職状況と併せて検証した。

給与水準や就労環境、仕事のやりがい、自身の成長の機会などが高い次元でバランスが取れていることから、大学生の大企業志向は強い。しかし、その求人倍率は低く、リクルートワークス研究所の調査によると、従業員規模5000人以上の大企業の求人倍率は0.37倍。求人総数は増えているが、それ以上に志望者が多くなっていることから、前年を0.04P下回った。

このように狭き門の大企業であっても採用予定数が充足できないという、大学生の売り手市場が続いているのが今の就活だ。リクルート就職みらい研究所の調べによると、23年卒の就活において「採用予定数を充足できた」と回答した企業は、前年を11.8P下回る40.4％で調査開始以来最も低い数値となった。特に学生の人気が高い従業員規模5000人以上の大企業で減少幅が大きく19.6P減（45.0％）となっている。

その一因と考えられているのが、DX人材の需給ひっ迫により大手企業でも確保できていないこと。コロナが落ち着いてきての経済回復による成長局面にあって、人材を確保したくてもできない企業が多くあるようだ。

DX人材の採用で苦戦する企業がある中、難関大の学生を数多く採用できている企業の一つが、外資系コンサルティングファームのアクセンチュア。同社は、東大や京大、北海道大、大阪大、慶應義塾大といった多くの大学で就職者数が最多の企業だ。難関大からアクセンチュアなど、外資系コンサルの就職者が増える背景には、一般的な経営コンサルだけではなく、DX関連のコンサルが増えているため、優秀な学生の争奪になったためだ。

DX関連ということでは、通信関連企業の就職者数が最多の大学も多く、東北大の就職者数トップは日立製作所で、東京理科大と早稲田大がNTTデータ、中央大がNEC、法政大が富士通、明治大がNECソリューションイノベータ、関西大がパナソニックグループ、立命館大と関西学院大は三菱電機となっている。全てDX人材として就職というわけではないが、難関大の学生が注目していることは間違いなさそうだ。

ランキングトップ2を押し出した豊田工業大

DX人材が求められていることから、製造業の採用者が多いことなどから就職に強い理工系大学が、さらに就職力を伸ばしている。「有名企業400社実就職率ランキング」を見ると、1位の豊田工業大や3位の東京工業大、5位の名古屋工業大など、多くの理工系大学が上位に並ぶ。

これは例年通りの傾向だが、23年卒は順位に異変が起きた。長らくトップを分け合っていた一橋大と東京工業大を追い越して、豊田工業大が1位になったのだ。国公立大並みの安い学費と高い就職力などを背景として人気が高く、難易度は難関私立総合大学の理工系学部に匹敵する。就職者が多い企業は、トヨタ自動車11人、豊田自動織機5人、アイシン、ダイキン工業、豊田合成が各3人など。

1位から3位までの大学は、卒業生の2人に1人が有名企業に就職。一橋大の実就職率は前年と変わらず、就職者が多い企業は、楽天グループと大和証券が各25人、EYストラテジー・アンド・コンサルティング15人、明治安田生命保険13人など。東京工業大の実就職率は前年を6.6P上回っており、就職者が多い企業は、ソニーセミコンダクタソリューションズ31人、日立製作所29人、NTTデータとソニーが各25人など。

4位の慶應義塾大は卒業生が7805人の大規模大学ながら、2891人と多くの学生が有名企業に就職していることから、44.2％と高い実就職率となっている。ちなみに有名企業の就職者が最も多いのは11位の早稲田大（3266人）で次位が慶應義塾大。以下、23位の明治大（1833人）、18位の同志社大（1701人）、24位の東大（1491人）となっている。

実就職率ランキングの5位以下は、名古屋工業大、東京理科大、電気通信大、九州工業大、名古屋大、大阪大ー。全企業を対象とした実就職率ランキングでは、一般的な大学の後塵を拝することも少なくない難関大が、有名企業に限ると数多くランクインしていることが特徴だ。

女子大のランキングにおいても、1位津田塾大、2位日本女子大、3位東京女子大、4位聖心女子大、5位神戸女学院大など、東西のトップ女子大が上位に入っている。

有名企業でも強まる大学生の売り手市場化

コロナ禍の影響が弱まり企業の採用意欲が高まる中、前述の理工系や難関大以外も実就職率は上がっており、有名企業でも大学生の売り手市場化が強まる中、採用活動で苦慮する大企業が少なくない。

こうした状況を背景として、現在の大学生の就活は、ジョブ型採用が増えていると言う。これまでは職種や勤務地を問わずに採用する、メンバーシップ型採用が主流だったが、近年、職務限定型や初任配属確約採用といったジョブ型採用を採り入れる傾向が強まっている。特に従業員規模5000人以上の大企業で増加しているようだ。リクルート就職みらい研究所の調査によると、24年卒では17.2％の大企業が実施予定で、25年卒では28.4％が導入を検討するとしている。この背景にあるのは、勤務地や職種を重視する学生を確保したいという、企業の意識の強まりがある。

就職みらい研究所の調査によると、様々な部署でキャリアを積むより、特定領域で長期間キャリアを積みたい学生の方が多いという。さらに勤務地を重視する学生も多くなる中、大学生の売り手市場を背景として、メンバーシップ型とジョブ型採用を併用する企業が多くなっているのだ。もっとも、ジョブ型採用と言っても、入社時の職種が将来も変わらないとする企業は2割程度なので、現状では初任配属確約型と呼ぶ方が正しそうだ。

このように人材確保のために企業側は学生に歩み寄りを見せるが、就職アナリストは、その対象は難関大生に集中する可能性が高いと言う。

「今後の就活は、早期・長期化の進行により、プロセスが煩雑化し間口が広がる。そうなると、まずは実績校からとなり、ますます難関大からの就職者が増えるかもしれない。少子化の進行で人的資源が限定的になる中、広く学生に目を向け、社会人として育てるという視点を企業にもってほしい」

優秀な人材を輩出する大学は、難関大がすべてというわけではない。多様な大学の学生が選考に進むことが望ましいのはいうまでもない。今後の動向に注目したいところだ。

2023年 有名企業400社　実就職率ランキング

表の見方
◆表は各大学発表による2023年の就職状況。アンケートに回答のあった566大学のデータをもとにランキングを作成（10月末日現在）。
◆400社実就職率（％）は、400社就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数100人未満の大学はランキングから除いた。
◆設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。一部の学部・研究科を含まない大学がある。
◆有名企業400社とは、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定した。

2023年 有名企業400社への実就職率ランキング【女子大】

表の見方
◆表は各大学発表による2023年の就職状況（10月末日現在）。
◆400社実就職率（％）は、400社就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数100人未満の大学はランキングから除いた。
◆設置の◎印は私立、無印は公立。＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。一部の学部・研究科を含まない大学がある。
◆有名企業400社とは、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定した。