偏差値だけじゃない!研究力に着目した大学選びのススメ

シェアする

 たまご

日本全国に750以上ある大学の中から、自分に合った大学を選ぶのは難しい。入学した大学とのミスマッチを避けるためにも、受験校を選ぶ段階で、大学についてよく調べておきたい。その時、研究力という視点で大学を見ると、思わぬ魅力を持った大学が見つかるかもしれない


 大学の難易度を表す指標の一つである偏差値は、今の学力と入試で必要な学力との差を教えてくれるため、多くの受験生が大学選びの参考にしている。ただ、それだけを見て大学を選ばずに、教育・研究内容や学習環境について、別の視点から調べてみることも大切だ。

 一歩踏み込んだ大学選びをしたい受験生、特に理系の受験生には、各大学の研究力を参考にしてみることを勧めたい。ある分野において一流の研究をしているにも関わらず、目立たない大学は意外と多い。自分が興味のある分野で研究の先頭を走っているのが、身近にある大学だったということも十分あり得るのだ。

 客観的な指標として参考にしたいのが、文部科学省がHPで公表している各種資料。例えば「平成年度大学等における産学連携等実施状況について」という資料を見れば、民間企業との共同研究に注力し、研究を実社会に活かしている大学を調べることができる。

【研究力の高い大学が身近にあることも】

 表①は平成26年度の民間企業からの共同研究費受入額が多い研究機関を示したもの。上位に来ているのは、東大をはじめとする規模の大きな国立大だ。私立大は3校しかランクインしておらず、いずれも東京の大学だ。ランキングの大半は難関大だが、中には山形大や広島大など各都道府県のトップ大学も含まれている。

共同研究

表1民間企業との共同研究費受入額(クリックでPDFが開きます)

 また、表②は、研究者数1000名未満の研究機関に絞って同様のランキングを作ったもの。国立大が上位を占めるのは変わらず、公立大は2校、私立大は1校しかランクインしていない。理系学部が多い国立大は、その規模に関わらず、各地域における研究の中核拠点として機能していることが窺える結果だ。

民間企業1000未満

表2民間企業との共同研究費受入額(1000人未満)(クリックでPDFが開きます)

 一方で、地方の大学がランキングに占める割合は、先の表より圧倒的に高い。岐阜大や佐賀大、岩手大など、ランクインしている大学は特定の地域に限らない。小規模だが共同研究で存在感を示す大学は、全国に散らばっていることが分かるだろう。

 受託研究費に着目するなど、視点を変えることで、同じ資料からも新たな情報を得ることができる。科研費の配分状況など、参考になる資料は他にも公開されているし、マスコミ各社が作るランキングを参照するのもいいだろう。大学選びに役立つ情報は数多いが、それを十分に活かしている受験生はまだ少ない。まずは研究力の高い大学という視点から、大学選びをしてみてはどうだろう。

【私立大唯一の国の革新的イノベーション創出中核拠点
金沢工業大学の研究力の秘密】

 金沢工業大学は2013年に「革新的イノベーション創出プログラム(COISTREAM)〈注1〉」に選出され私立大で唯一の中核拠点となっている。基礎研究を実際の社会で役立つ形で実用化することを目指して、産学連携による研究開発が進んでいる。企画部広報課長の志鷹英男さんが説明する。

「金沢工業大学が中心となって取り組むのが、革新材料による次世代インフラシステムの構築です。COIの中核拠点である『やつかほリサーチキャンパス』では、一つ屋根の下に多くの企業や研究機関が集まり革新的な素材を開発し、それを社会実装していくための研究を進めています。トンネルや橋梁、海底パイプや風力発電の羽など、大規模インフラに革新素材が使用されることで、環境性能に優れ、高機能、かつ柔軟な施工が可能なインフラが構築できます。環境負荷や維持費用などの社会コストの低減により、未来の社会に寄与することを目指しています」

【すべての学生が研究者チーム力で課題を解決】

 金沢工業大学が株式会社リコーと開発を進めている生体磁気計測装置も注目の研究だ。脊髄神経の働きを体の外から観察し、手足のマヒやしびれなどが起こる部位を正確に診断できる。この研究は、第15回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議で「nanotech大賞」を受賞している。

 このように、金沢工業大学が実社会に役立つ研究を生み出す源泉となっているのが、教員と学生がチームとして課題に取り組む研究風土だ。企業との共同研究でも、学生が窓口になったり、研究の一部を任されたりするなど、教員の良きパートナーとして活躍する学生が多い。

 カリキュラムの中心にある「プロジェクトデザイン教育〈注2〉」がそうした学生を育てあげる。入学直後からチームで課題解決に取り組むことが習慣化されるため、4年生で研究室へ配属となった時も、すぐにメンバーとして研究活動に加わることができる。前出の志鷹さんはこう語る

「学生に夢や目標を持ってもらうためにも、いい教育にはいい研究が必要ですし、いい研究のためには教育に力を入れる必要があります。金沢工業大学では教育研究、つまり研究を通じて教育を行うことを重視しているのです」

 一人ひとりの学生が、研究者としてイノベーションを起こすべく活動している。それが、金沢工業大学の優れた研究や教育につながっているのだ。

〈注1〉COIとは、年後の社会で必要とされる革新的イノベーションの創出を目指す、文部科学省のプログラム。
〈注2〉問題発見から解決に至るまで、チームとしていかに取り組めばいいかを、実践的に身に付ける教育。日本型ものづくり教育として海外でも評価され、カリキュラムの海外輸出も行われている。