未来に大きく広がる農学の可能性2023

未来に大きく広がる農学の可能性2023

農学系学部の人気が続き、志望者は増加傾向。農学系は、喫緊の課題とされるSDGs(持続可能な開発目標)の課題解決に大きく貢献する上、就職状況も良好。お得な学部系統として、農学系は見直されているのだ。

近年の大学入試において農学系人気は上がらず、志願者は減少傾向にあったが、2022年度以降は増加に転じ、24年度(24年4月入学)においても引き続き増加することが見込まれる。背景にあるのは、環境問題や食糧危機が言われる中、農学に注目する受験生が増えたこと。もともと女子の人気が高い系統だが、近年はさらに女子受験生が増加傾向だ。

未来の地球について考える壮大なテーマである、SDGsで掲げられた17の目標の内、農学の学びが不可欠なものに、②「飢餓をゼロに」⑫「つくる責任つかう責任」⑭「海の豊かさを守ろう」⑮「陸の豊かさも守ろう」などがある。これらの分かりやすい目標以外に、①「貧困をなくそう」③「すべての人に健康と福祉を」⑥「安全な水とトイレを世界中に」⑦「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」なども、農学が役に立つ。SDGsの目標の半数近くで、農学の学びが求められていることになる。

持続可能な社会の構築を目指す様々な場面で農学の学びが求められるのは、研究分野の多様性にある。植物の生産や畜産、水産といった主流といえる分野に加え、森林科学や環境学、醸造学、バイオサイエンス、遺伝子工学、食品安全学、地域資源開発学、国際地域開発学、食料環境政策学、農業経済学、食農ビジネス学など、その研究分野は多岐にわたる。

個別の大学に注目すると、東北大学は、持続可能で心豊かな社会の創造に向け、「社会にインパクトある研究」と題し、複数の研究プロジェクトをスタートさせた。また東京農業大学でも、人類と生物と自然の調和により、豊かな社会をつくることを目標に、「答えをつくる」「社会に尽くす」をテーマにした研究プロジェクトを立ち上げるなど、多くの大学でSDGsの課題解決に向けた研究が進められている。

農学は多様な問題意識をもち、人や社会の役に立ちたいと考える受験生に注目してほしい学部系統だ。

研究分野の広さは就職先の多様性にも結び付いており、農水産業以外に食品、化学、機械、化粧品メーカーなど。さらに、農業の基礎知識を生かして、公務員や金融機関なども就職対象となり、農学系学部の卒業生が活躍できるフィールドは確実に増えている。

多様な就職先が視野に入ることから就職率も高い。就職に有利な資格が取得できる医療系などを除くと、農学系は理工系と並んで、平均就職率が最も高い学部系統だ。「農学系学部実就職率ランキング」を見ると、高崎健康福祉大学・農の97.8%を筆頭に、大半の大学で実就職率が90%を超えている。

現代社会に求められる多様な研究の場、さらに就職状況も良好な農学系。こうした点からも24年度入試でも志願者の増加が予想され、国公立大と私立大ともに難化が見込まれる。

しかし高いハードルを乗り越えた先には、大きな可能性が広がっている。SDGsをはじめ環境・食糧問題などに関心がある受験生には、農学系学部に是非チャレンジしてもらいたい。

表の見方
◆データは、各大学発表による2023年の就職状況(10月末日現在)。
◆実就職率(%)は、就職者数÷(卒業生数-大学院進学者数)×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数が80人未満の小規模な学部、通信教育学部、二部・夜間主コースのデータは掲載していない。
◆設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立を表す。所在地は大学本部の所在地で学部の所在地と異なることがある。
◆各系統は、主に学部名称により分類したため、学科構成や教育の内容が似ていても掲載していないものがある。

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