医学部進学の道がある埼玉の私学2校ー獨協埼玉中学高等学校・春日部共栄中学高等学校

医学部進学の道がある埼玉の私学2校ー獨協埼玉中学高等学校・春日部共栄中学高等学校

進学の目標に漠然と「東大」を掲げるのではなく、明確に医学部進学を志す生徒が増えてきている。それに呼応するように、医学部進学のカリキュラムやコース設定をする学校も目立ってきている。そのようななか、埼玉東部で医学部進学に対し新たな取り組みを見せている獨協埼玉中学高等学校と春日部共栄中学高等学校を紹介する。

獨協医科大学への内部推薦枠が拡大ー獨協埼玉中学高等学校

系列校のみに開かれた、獨協医科大学への内部進学の間口

埼玉県越谷市に約80,000㎡の広大な敷地を誇る獨協埼玉中学校高等学校。獨協大学、獨協医科大学、姫路独協大学、そして獨協中学校・獨協高等学校とともに、明治14年から続く獨協学園の一翼を担う。

獨協埼玉高等学校が開校したのは1980年、その後2001年に獨協埼玉中学校が開校してからは、外国語教育に重きを置いた6カ年一貫教育のカリキュラムを設置している。ここ数年は、成績に応じてではなく、「自分の学びたいことを本当に学べる大学」に出会えるようカリキュラムの見直しを図ってきたことで、国公立大学や有名私立大学への進学実績が伸びてきている(ユニヴプレス「生徒たちがいろいろなことに興味をもつ「きっかけ」を与える学校-獨協埼玉中学高等学校」参照:https://univpressnews.com/2021/07/29/post-7665/)。

医学部への進学希望者も少しずつ増加傾向にあり、2021年度は医学部医学科の合格者を8名輩出している。将来、医学部への入学を視野に入れているご家庭では、小中高の受験時に、系列に医学部を有する大学への進学を検討することもあるだろう。しかし系列大学に医学部のある私学は関東近郊でもそう多くはなく、さらに系列校の学生であっても、容易には医学部への入学が叶わないのが現状だ。実際に、獨協埼玉中学高等学校でも、これまでは獨協医科大学への内部推薦枠は1〜2人と狭き門だった。

この制度が2021年度より一新。系列校の高い学力の学生を確保するため、新たな内部進学枠が設けられたのだ。この制度では、毎年、獨協埼玉中学高等学校と獨協中学校・獨協高等学校から、合わせて10名までが獨協医科大学に進学できる。各校から5名ずつということではなく、要件を満たした、両校からの希望者の成績順となるため、在学中のモチベーションも保ちやすい。この制度を利用して、2022年度春、獨協埼玉中学高等学校から2名が獨協医科大学へ進学した。

医学部を持つ他の大学系列校よりも進学の確率が高まるとあり、すでに学校説明会などでの問い合わせも多く注目度の高い制度となっている。 

教育方針は「幅広い教養と基礎学力の充実」。医学部希望者でも、コース制は敷かない

新しい制度の導入とともに、獨協医科大学との連携も強まっている。たとえば医科大学の教授がオンラインで講義を行い、ロボット診療のしくみなどを解説したこともある。また、毎年7月には、中学3年生以上の希望者が獨協医科大学を訪れ、実習を見学する機会もある。見学希望者のほとんどは高校生だが、中学3年からも10名程度の希望者が出る。併設2校の総計50名以上にもなる、人気の見学会だ。

また内部推薦枠によって獨協医科大学に進学した際には、系列校生を対象にした入学前プログラムがあり、1日大学で講義を受け、医学生として身に付けておきたい基礎知識などを確認することができる。

中高一貫の私学では、中学入学時点から医歯薬コースや選抜クラスを設けているところもあるが、獨協埼玉中学高等学校は、従来の教育方針を変えることなく、医学部進学用のコース制は敷いていない。何かの分野にだけ秀でるのではなく、さまざまなことに興味をもち、幅広く基礎学力を身に付けることで、社会に出てからも自分で考える力を養うことができると考えているからだ。そのような環境のなかで、理科2科目の履修を前提として一定の水準の成績さえクリアすれば獨協医科大学への推薦枠の応募資格が得られる。つまり、高校から入学した全ての学生にも、医学部進学のチャンスが平等に開かれているのだ。

将来の適性は、学業、部活、地域交流など、さまざまな経験を積むうちにこそ見えてくるもの。最初から「医学部進学」だけを目標とせず、全人教育の中で自然と医学部を選択肢に入れることができれば、まさに理想といえそうだ。

中学の「IT医学サイエンスコース」、高校の「メディカル論文講習」で医学部進学を実現ー春日部共栄中学高等学校

医歯薬系にも強い「IT医学サイエンスコース」の魅力

文武両道をモットーに、高等学校(1980年開校)、中学校(2003年開校)と教育体制を築いてきた春日部共栄中学高等学校。中学校開校以来、2年間ずつのステージで中高一貫の6年間を区切る「ステージ制」を取り入れ、人間力の形成と大学受験に対応できる学力の向上を図っている。各ステージは1・2年「人間形成と学習・研究アプローチステージ」、3・4年「研究活動完成ステージ」、5・6年「大学アプローチステージ」となっており、大学入試を見据えた先取り学習が前提だ(*高校入学生は一貫生とは別コースとなる)。

ここ春日部共栄中学高等学校でも、看護をふくめ、医療系分野を希望する学生は少しずつ増えているという。父兄に医師や看護師などの医療関係者がいなくても、医学部を狙うご家庭は一定数ある。同校はこれまで、独自の個別指導を行うことで医学部への進学者をサポートし、確実な成果をあげてきた。医学部医学科に受かった先輩が、同じように医学部をめざす高校1、2年生に話しをしにくる「卒学会」(毎年3月中旬に開催)では、熱心に先輩の話を聞く後輩たちの姿が見られる。

2023年に創立20周年を迎える春日部共栄中学校。こうした背景を踏まえ、この20年間の集大成とも言える「プログレッシブ政経コース」と「IT医学サイエンスコース」という2つのコース新設を行い、より低学年のうちから専門性を身につける体制を整えた。このコースは、通常の授業のほかに新たに加えられた学びの時間で、中学1年次から週3回、授業が終わって部活動が始まるまでの時間帯に行われる。専門分野への知識を深めることはもちろんだが、全ての教科も部活動も、おろそかにはしない(ユニヴプレス「【春日部共栄中学校】生徒の向学心を高める2コースを2022年度に新設 “春共”の学びは新たなステージへ」参照:https://univpressnews.com/2021/06/02/post-7569/)。

「IT医学サイエンスコース」は、すべての理系志望者が対象となる。春日部共栄中学高等学校が育む5つの力(表現力、行動力、思考力、自己肯定力、判断力)と、圧倒的な「数学力」を基軸とし、リーダーシップを備えた研究者や開発者を目指す理系人材を養成することが狙いだ。

中学1年から高校2年までの5年間で「プログラミング教育」「実験研究」を中心に実践的な体験をつむ。「プログラミング教育」では、中1の最初にタイピングスキルやゲームを利用したブロックプログラミングからプログラミング思考にふれる。最終的には情報処理技術者試験などの資格所得、情報オリンピックへの挑戦などを目標にGAS、JavaScript、Pythonといった言語をマスターする。「実験研究」ではカブトムシや植物などを実際に飼育観察する経験から入り、最終的には遺伝子研究、生物オリンピック出場などを目指す。

このほか特筆すべきが、希望制の「メディカル講習」だ。こちらは医学部を志望する生徒のための講習で、医学博士・宮川博文先生(後述)を講師に招き、中1、中2は年5回の「医学基礎講習」を受講し、医師とは何か、医学部で求められる人間性や知識などをゼロから学んでいく。中3からは週に1回の「メディカル論文講習」を受講することができる。詳しく見ていこう。

「メディカル論文講習」で、弱点を鍛える

医学部医学科を初め、医療系、医薬系、看護系への進学志望者を丁寧にサポートし、毎年、医学部医学科合格者を出してきた取り組みの一つが、18年ほど前から続く「メディカル論文講習」だ。

講師として、医学博士の宮川博文先生を迎え、高校1、2年生(土曜日)、3年生(火曜日放課後)それぞれに、週に1回、個別指導を行っている。中学校に「IT医学サイエンスコース」ができてからは、中3生も新たに受講の対象となった。

講習名に「論文」とついてはいるが、小論文のみならず面接や推薦入試対策、弱点対策や補強にも対応した全教科指導となっている。これまで医歯薬系の進路を希望する高校生のほとんどがこの講習を受講しており、医歯薬看護系への合格者75名という実績を支えている名物講習だ。

宮川博士は東京大学理学部数学科を卒業後、筑波大学、さらには京都大学医学部と、複数の学問を修めた異色の経歴をもつ。医師を目指していたが、”医師を志す学生を育てる人も必要なのではないか”という気持ちが強くなり現在の職に就いたという。これまでも大学や塾などで数多くの学生たちを指導してきた。

医歯薬系を目指す学生は並行して専門塾に通うことが多いが、その場合は年間100万円以上の費用がかかるケースもある。「メディカル論文講習」は2万円ほどで受講できるうえに、ともに同じような道に挑む学校の友人たちと切磋琢磨することができる。

なお「メディカル論文講習」は元々高校1年生からを対象として設定されており、ここに中高一貫生が加わり、一部は中学3年生から参加できる形となった。高校から春日部共栄に入学し、メディカル論文講習で学習して医学部進学を果たした生徒も多数輩出しており、現在の受講者にも高校からの入学者は多く存在する。医学部進学の道は中高一貫生だけではないことも大きな特徴だ。

新体制のもと、学生たちがどのように未来を切り開いていくのか、今後ますます期待がかかる。

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