わが子にちょうどいい学校は? 学校の先生が教える学校の選び方 パート2

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1年前、我が子の学校選びを悩む保護者向けに城南4校の先生からお話をうかがいました。今回は続編として再びお話をうかがうとともに、声の教育社・声教チャンネルで受験生向けの情報提供で活躍されている三谷潤一様司会のもと、より有益な学校情報を提供いたします。偏差値・難易度や試験科目といった入試対策の情報ではなく、保護者や受験生がどのような視点を持って学校選びをするべきかを、本音で語っていただきました。先生によって意見が違うこともありますが、それぞれ個性ある私学教育の一例としてお読みください。なお先生方は在職歴15年から25年、4人の面識も15年以上に及び、絶えず情報交換や悩みと愚痴を長いこと言い合う間柄ですので、中高募集担当者の本音トークとなっています。

<お話を伺った先生>
伊東充先生:青稜中学校・高等学校 募集広報部部長
井上卓三先生:多摩大学目黒中学校・高等学校 校長補佐・入試広報部長
神戸航先生:文教大学付属中学校・高等学校 副校長、入試広報部長
今田正利先生:立正大学付属立正中学校・高等学校 校長補佐
<司会・コメント>
三谷潤一様:声の教育社 営業部次長

左から神戸先生、今田先生、三谷様、井上先生、伊東先生

卒業生に関するエピソード

三谷:私立学校の大きな特徴の一つに、先生の異動がないため卒業生がいつ母校を訪れても懐かしい先生に会うことができる点があります。このため先生と卒業生の結びつきが強いことも魅力となっていますが、卒業生に関する先生方の実体験やトピックスなどお聞かせいただけませんでしょうか。

今田:30年以上前、私が立正の新任教員となった時、高1だった生徒が開いている店に今でもよく通っていますよ。また師親会(PTA)の副会長2人が私の教え子でうち1人は3年間担任でした。彼らの人生相談には事あるごとに乗っていましたが、今は学校と保護者との間に積極的に関与してもらい、私が助けてもらっています。卒業生同士の交流も盛んですね。行列のできるつけ麺屋の創業者と最近ではデパ地下にも進出している天丼チェーンの創業者が立正の卒業生です。共に海外進出したため、後輩の卒業生が事業で海外進出する際はよく相談に乗っているようです。このつけ麵屋のロスアンゼルス支店長も立正生で、先日帰国子女の受験生の保護者がアメリカ在住時大変お世話になりましたと話していました。こうしたエピソードから卒業生は立正に対する愛校心を持ち、卒業後も先輩・後輩の絆が強いことを感じます。本当にありがたいことです。また親子三代で通われる立正生も多くいますが、これも立正の教育に賛同してくれたからと感謝しています。

今田正利先生:立正大学付属立正中学校・高等学校 校長補佐

井上:多摩大目黒のことを受験日までよく理解していない人が結構いますので、入試日の保護者控室にOB・OGが待機して学校の説明や相談相手として活動しています。その中に東工大卒業、現在大手電機会社で関西在住の方がいますが、入試の時期になると毎年LINEで彼から連絡がきて、当日有給休暇を取って協力していただいています。もう一人、入学時は成績も上位ではなくどちらかというと物静かな生徒がいたのですが、「先生みたいに格闘技で鍛えれば僕も強くなれますか?」と言い私の指導する護身道部へ入部、そこでメキメキと文武とも大きく上達して自信をつけ、慶應義塾大学から三井物産へ進んだ方もいます。二人とも自分自身が多摩大目黒で成長したという実感があるから、今でもこうして学校の力になってくれているのだと思っています。

井上卓三先生:多摩大学目黒中学校・高等学校 校長補佐・入試広報部長

神戸:文教では校舎のことをポート(港)と呼んでいます。社会という大海原に出る準備をする場所であるとともに、人々が交流する場所であることからそのように名づけています。また、いつでも戻ってこられる場所、立ち返れる場所であるという思いも込められています。そのため、旗の台駅に貼っているポスターにも「母校であり、母港でありたい」というコピーを掲げています。母校愛は人との関わり、特に「担任」と「部活動」が大きな要素と、サッカー部顧問でもある私は思っています。現在、文教大学の体育会サッカー部の監督を務めている卒業生がいますが、高校卒業時に便箋12枚に渡りサッカーと学校に対する思いを綴り、最後に「僕は教師になり、サッカー部監督として先生と対戦し勝利することが目標です」と結んでありました。先日、文教大学vs文教大学付属高校の練習試合が実現し、見事彼は目標を実現しました。また、高校生へのキャリア教育でも協力していただくなど、今でも交流が続いています。偶然ですが、彼の同級生でもあった部のマネージャーは、美術大学に進学、現在は独立したイラストレーターとして活躍中で、本校のパンフレットやポスター、トートバッグなどのイラスト業務を依頼するという関係が続いています。他にも文教には現在教師になっている卒業生が多いので、教諭としての相談もよくありますね。

神戸航先生:文教大学付属中学校・高等学校 副校長、入試広報部長

伊東:中学受験で科目を4科から2科に絞る生徒は、大学受験時も科目を絞りがちになります。ある生徒も大学受験の科目を絞りましたが、その後成績急上昇で数学も学年最上位になりました。ここでこの生徒が国立大学進学を希望しましたが、時間がないので私立大学進学です。この事例を紹介して入試相談ではなるべく4科受験を勧めています。実はこの生徒、大学卒業後に進路変更して現在漫画家で大成しています。人が何かに気づいて伸びるタイミングは人それぞれで、どう成長するかも見当がつかず、思わぬ方向に進むこともあります。入学時の成績が下から数えた方が早い生徒が特待生やトップになった例は幾つもありますし、卒業後に大きく伸びた生徒もたくさんいます。こうした話も生徒が卒業後に戻ってくるからわかることです。学校選びは大学合格実績や入試の基準だけではないよと強く言いたいですね。

伊東充先生:青稜中学校・高等学校 募集広報部部長

何を重視して学校を選べばいいですか?

三谷:伊東先生から「学校選びは大学合格実績や入試データだけではない」とのお言葉がありましたが、それではどのような視点で学校をみたらよいのでしょう。

伊東:学校が持つ空気が大事ですね。どこの学校でも言えることですが青稜の校風に合わない人も必ず存在するので、説明会で「青稜にぜひ入学してください」という言葉は使わないようにしています。SNSの書き込みも気にしません。私たちが必ず言うことは「お子さんに学校を選ばせてください。また入学後の紆余曲折は必ずありますが、その際も背を向けずに学校を向いていられるところを選んでください」と言っています。

今田:立正に合う人も合わない人もいるのは当然ですが、立正で楽しく過ごせた人が社会人になって活躍していると感じています。その合うか合わないという視点ですが、「在校生と自分を比べてどうかなあ、雰囲気が合っているかなあ」ではないでしょうか。また立正の場合は運動施設が充実しており、水泳・柔道が必修で野球部は東日本大会優勝など、運動が得意でないと苦労すると思われてしまいますが、運動が不得手な生徒も学校で元気に活躍しています。こうしたことは事前の情報ではわからないので、学校見学で発見してもらいたいですね。立正に限った話ではありませんが、既にある先入観を一度取り去って学校見学をすると見る目が変わると思います。

神戸:やはり学校に来ていただくことが一番です。文教は建学の精神にある『人間愛』の中で生徒がどう育っているのかを見ていただきたいと考えていますので、施設設備や所在地などから学校を見るよりも、生徒と先生のふれあい、生徒同士の関わり、授業風景など人が関わる普段の姿をみていただければ、文教に対する理解度が深まると思っています。

井上:例えば「先生と生徒の距離が近い」と言ってもどのように近いのか言葉ではわかりませんし、目上の人に対する礼儀がない近さでは意味がありません。また「我が校の生徒は元気です」と言っても単にやんちゃな生徒ばかりという意味と思われることもあります。言葉の表現だけでは伝わらないことは数多くありますから、学校を直接みていただくことは本当に大事です。

「この学校に向いている・向いていない」って何ですか?

三谷:それでは「我が校に向いている・向いていない」というテーマに関連して各校のお話を聞かせていただけますか。

伊東:「お宅の学校はうちの子に何を与えてくれるのですか」という質問をよく受けます。他の学校では「あれもやらせます。これもやらせます。何でも習得させます」というメニューが多く、このような学校と比較しての質問なのだと思いますが、青稜では無理にあれこれやらせません。無理強いしてたくさんのことを詰め込むのではなく、自分が興味関心を持ったことに打ち込める環境を用意しています。わが子にあまりに多くのことを詰め込まないといけないと思い込み、「こんなにたくさんのことをさせなければならないのですか」とパニックになり半泣きで相談してくる母親もいます。「お母さん、そんなことないですよ」と説明して結局青稜に入学したケースもありますから、その時々の保護者との関わり方も重要ですね。

青稜中学校・高等学校「Sラボ」

神戸:文教はなごやか・おだやかな生徒が多いですね。これは建学の精神にもとづく学校の雰囲気を判断してそのような空気を好む人たちが集まる結果だと思っています。先ほどの話につながりますが我々が気をつけていることは「建学の精神・理念を育むために教師は何をしているか」で、それぞれの教育コンテンツにストーリー性を持たせています。生徒や保護者に対し「こういう考えを持って欲しいからこのコンテンツがある」ことが明確であるよう心がけています。一方で昨年もお話ししましたが、高校受験で言えば内申の数字だけを見ていて学校見学はまったくしていないような受験は避けて欲しいですね。

文教大学付属中学校・高等学校

今田:立正は仏教主義の学校ですから躾などの形から入る教育が伝統的に強く、頭髪や服装、職員室への入室方法などの箸の上げ下ろしから指導するスタイルです。提出物が遅れた場合の先生への対応なども細かく指導しています。単に自由な環境を求めている方には向かないかもしれませんね。とはいえ卒業後この教育が役に立っているという声は卒業生、卒業生保護者からよく聞きますので、この点も素通りせずにしっかりと話を聞いていただきたいと思っています。

立正大学付属立正中学校・高等学校

井上:お子さんは勉強したいと思って学習塾に通っていますか?「親に怒られるから」という理由で通っていませんか?と問いかけたいですね。勉強が嫌いなまま入学してくる生徒はたくさんいますが、その意識のまま運よく上位大学に進学しても何も身につきません。難関大学でなくてもいいですから、大学で何かを学ぶことを意識してもらいたいと思っています。私は生徒に「40歳で生き残る人になってほしい」と言い続けていますが、40歳になって学歴をひけらかしていては社会で何の役にも立ちませんよね。その意味では「自分で勉強が必要」と思うためのサポートが私たちの役割だと思っています。この話をすると続いて出る質問が「いつ子供にスイッチが入るのでしょうか」です。正直なところいつというのはわかりませんが、スイッチが入ることで生徒が化けることは確かです。

多摩大学目黒中学校・高等学校

我が子がやる気になるのはいつ?

今田:スイッチの話がありましたが、立正の生徒にはスイッチが入るタイミングがあります。中学3年時に職場体験がありますが、厳しい職場での指導を経て自分に対し危機感を感じ「こんなに毎日のほほんと過ごしていては駄目だ」と勉強し始める生徒が結構います。このような話は子どもたちと距離が近すぎる我々教員や親では効果が薄く、距離の離れた大人から社会の厳しさを教わると効果絶大です。なおこの職場体験でも卒業生の力を大いに借りていますので、本当に卒業生には感謝することばかりです。

立正大学付属立正中学校・高等学校

井上:多摩大目黒でもさまざまな体験をして気づかせることを重視しています。中学3年生の修学旅行は全員がオーストラリアで、渡航に気が進まないで臨む生徒もたくさんいますが、実際に行けば多くのことに感動します。ただし複雑な表現を英語で上手く伝えられず、ここで英会話の必要性を痛感して勉強を始める、そのような体験ができる取り組みが多いことが特徴だと思います。

多摩大学目黒中学校・高等学校

神戸:文教ではスイッチという一つのきっかけで学習に目覚めるというより、単なる学習だけではなく、社会に出てから必要になるマインド醸成を重視し、そのマインドを持って日々の学習に取り組むようにしています。生活面では生徒の考え・主体性を尊重する姿勢が増えており、学校行事や校則などについて多くの時間をかけて生徒同士、時には教員が入って話し合いをしています。今はコートの自由化にむけて話し合いをしている最中です。我々教員も生徒の話し合いを見ていて、新しい視点に気づくことが多いですね。

文教大学付属中学校・高等学校

伊東:

私はスイッチなんてないのではないかと思っています。あるいは「挑戦」がスイッチなのかもしれません。青稜はコロナ前後で日本一変化した学校だと思いますが、コロナ当時も今も子供たちに「挑戦させる」ことに重きを置いています。「挑戦させること」は「失敗させること」でもありますが、逆に3年後・6年後に子どもがまったく想像もつかない成長を遂げていることもあります。僕ら教師はそれを見守ることがある意味「挑戦」なのだと思っています。

青稜中学校・高等学校

~座談会を終えて~ 

三谷:中学受験生の保護者からよくある質問のひとつに「学校の選び方」があります。
私がオススメする「良い学校」は「生徒自慢の止まらない先生」「先生自慢の止まらない生徒」がいらっしゃる学校です。「自慢話」って嫌われるんですよ。思春期って批判的な意見のほうがカッコよく見えますし、大人からすると「面倒臭い年頃」ですから、大抵はお互いに陰で貶し合っていてもおかしくない。だから、自慢するのって簡単じゃないと思うんです。今回、先生方のお話をうかがいながら、4校とも「良い学校」だなあ、と再認識しました。皆さん、在校生や卒業生のエピソードをたくさんお持ちで、時間がいくらあっても足りない感じでした。先生方が四者四様に、学校の良さを体現されていました。

もうひとつ、先生方は何年も広報を担当されて気心の知れた間柄でいらっしゃいますが、広報ご担当なら誰とでも仲良くなれるとは限りません。ある学校が生徒を集めれば、近隣の学校は生徒が減ることもあります。競合しているという意識が強ければ、「他を蹴落としてでも集めよう」となってもおかしくありません。そう考えたら、仲良くなるなんてとんでもないことです。でも、今田先生、井上先生、伊東先生、神戸先生はそういうふうに考えていらっしゃらない。もちろん、生徒募集ですから応募者を集めなければいけません。でも、「営業」であるより、「教員」としての矜持を大事にされている。だから、「入学したら思っていたのと違った」「騙された」といったミスマッチを防ぐことに心を砕かれています。もっと言えば、教え子に胸を張れる仕事の仕方を心掛けていらっしゃると思います。その上で、「学校を『お互いに幸せな出会いと成長の場』にしたい」という願いを共有されている、と強く感じました。

今回、お仲間に加えて頂き、楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました。

声の教育社 三谷様

こちらは昨年度版です。
「うちの子にちょうどいい学校があった」これが私立校の魅力。わが子に合う学校の見つけ方を城南地区4校の先生に聞きました。 | ユニヴプレス (univpressnews.com)

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