都心へのキャンパス移転で伝統の法学教育が深化-中央大学 法学部

都心へのキャンパス移転で伝統の法学教育が深化-中央大学 法学部

中央大学・法学部は、2015年に策定した中長期事業計画「Chuo Vision 2025」に基づき、23年4月に1年生から4年生まで、およそ5,700人の学生が多摩キャンパス(東京都八王子市)から茗荷谷キャンパス(東京都文京区)に移転し、新たな法学教育を展開する。キャンパス移転の背景と狙いについて、法学部長の猪股孝史教授に話をうかがった。

法学部を茗荷谷キャンパスに移転

法学部長 猪股孝史教授

―茗荷谷キャンパスに移転する経緯から教えてください。

法学部を都心の茗荷谷キャンパスに移転する第一の目的は、“LAW&LAW”つまり、法曹一貫教育を強化するためです。法学部と法科大学院が相互に密接に連携しながら法曹を養成する法曹教育の一貫性を考えた時、同じキャンパスにあった方が目的を達成しやすい。そのため、法学部の移転と同時に、法科大学院を市ケ谷キャンパス(東京都新宿区)から、茗荷谷キャンパスと地下鉄一本でつながる駿河台キャンパス(東京都千代田区)に移転します。

茗荷谷キャンパス 外観イメージ
大学施設のほか、文京区の地域活動センターや保育所などが併設される予定で、地域との共生、地域への貢献を目指します。

―学部と大学院が近接するメリットは。

19年から、学部を3年で早期卒業した後、法科大学院で2年間学んで司法試験合格を目指す、いわゆる“3プラス2”と呼ばれる一貫教育プログラムが始まりました。プログラムの一期生となる現3年生は、この夏に最初の大学院入試が終わりました。この学生が、大学院で学んで2年後にどのような成果がでるのか、法曹養成力の試金石として楽しみにしています。

一貫教育プログラムには、法科大学院の授業を学部で先取りするプログラムがあります。目指すロールモデルである先生による法科大学院の授業を先取りすることは、大きなモチベーションにつながります。学部と大学院が地理的に近くなる23年以降、このプログラムがさらに充実することになります。

都心へのキャンパス移転で文理融合教育を強化

―文理融合教育に力を入れているそうですが、その理由を教えてください。

中央大学の建学の精神である「實地應用ノ素ヲ養フ」は、現実に起こる問題を自らの力で解決するための素養を身に付けるという意味です。現代社会に生起する問題は複雑化しており、いわゆる文系、理系という単純な思考による解決が難しく、文系と理系双方の視点を持った文理融合型の思考力を持つ必要があるのです。

例えば、中央大学では20年に「AI・データサイエンスセンター」、21年に「ELSI(Ethical, Legal, and Social Implications)センター」が発足されました。AI・データサイエンスセンターでAI機能を使いデータ分析をしていく過程において、倫理上あるいは社会上、法学上の懸念が無いわけではありません。そこでELSIセンターがAIデータサイエンスセンターの方向性をコントロールする役割を果たします。AI・データサイエンスセンターがアクセル、ELSIセンターがブレーキあるいはハンドリングの役割を担うことで、文系と理系の視点を融合したバランスの良い研究を行っていきます。

―移転の目的に文理融合教育の強化があるそうですね。

これまで理工学部が都心の後楽園キャンパス(東京都文京区)、文系学部が多摩キャンパスという大まかな棲み分けがありましたが、法学部が都心に移転することにより、文理融合教育を展開します。都心の市ヶ谷田町キャンパス(東京都新宿区)には、文理融合の先駆けといえる国際情報学部があるので、法学部と理工学部、国際情報学部の3学部が共同で文理融合教育を実践します。

その一つが3学部共同開講科目です。例えば、自動車の自動運転について考える際、技術面やデータ分析などを担う理工系の領域と、事故を起こした時の責任問題などに関する法学的な領域があります。そのときに求められる、理工系と社会科学系の多方面から分析する視点を身に付けることが狙いです。大学教育で重要なことは、基礎知識や前提知識をベースとして、問題を解決するための思考の在り方を身に付けることであり、3学部共同開講科目は、「實地應用ノ素ヲ養フ」の精神に通じるものです。

―共同開講科目以外の教育の変化はありますか。

法学部の卒業生の中には、弁護士や公務員、企業で活躍している人材が豊富にいます。これまでも、そうした実務家を招いた実践的な授業を展開してきましたが、都心に移転することで実務家の方の利便性が増すので、こうした授業をより充実させたいと考えています。

初年次教育の充実により確かな専門教育につなげる

―初年次教育の現状と今後について教えてください。

大学での学びの助走期間として、文献の探し方や情報収集方法、文章の書き方に加え、専門科目を勉強するために必要な力を養う初年次教育に力を入れています。学科の特性に合わせて14、15人ぐらいの少人数クラスのゼミナール形式で展開し、ほぼ全員が履修しています。

23年以降は、法律学科の初年次教育が変わります。2年次以降の専門教育に対応するため、条文の読み方や適用の仕方など、専門教育に近い法の解釈に関する授業について、少人数クラスでディスカッションをしながら進めていきます。併せて、一般の論文とは異なる、法律を使ったレポートや論文を書く練習も取り入れます。

日本でも最大規模の法学部であるからこそ、教員は学生との距離をとても大事にしています。2年次以降も学年ごとに学生の志向や関心に応じた少人数クラスの演習やゼミを用意しており、法律学科の場合、7割強の学生が履修しています。

―インターンシップに力を入れていると聞きます。

国内と国外でインターシップを実施しています。23年以降、国内インターンシップを整理して、法務インターンシップと行政インターンシップにまとめて提供します。法務インターンシップは法律学科の学生がメインとなり、法律事務所などで行います。実際の仕事を目の当たりにすることは、法曹となるモチベーションアップにつながると思います。各省庁や自治体で行う行政インターンシップは政治学科の学生と共に、公務員志望の学生もターゲットとして展開するプログラムになります。国外インターンシップはスイスなど海外の国際機関でおこなっています。

―学生の移動において都心のキャンパスはプラスですね。

東京は機能が都心部に集中しているので、キャンパス移転で学生の動き方が変わると思います。インターンシップ以外にも、授業の合間に博物館や美術館に行ったり、ボランティアに参加したりと学びのフィールドが広がるので、充実した学生生活が送れます。特に4年生は、就職活動と授業の両立がしやすくなるメリットがあります。

新キャンパスでも継続する伝統の司法試験支援体制

―司法試験の支援体制に変化はありますか。

伝統と実績から“法科の中央”といわれる期待にたがわぬよう、これからも努力していきます。多摩キャンパスには、法曹を目指すための勉強に専念できる学修環境が用意された「炎の塔(多摩学生研究棟)」があり、開門から閉門時間まで学生が勉強に励んでいます。この環境を新キャンパスでも維持します。法曹養成においては、正規の授業と法職講座も大きな役割を担っています。正規の授業を大事にしながら法職講座で弁護士の先輩により少人数ゼミで答案練習などを行い、炎の塔で自学自習をするという、中央大学の強みである三位一体の法曹養成は新キャンパスでも継続します。

―法律学科以外の学生にとっての移転のメリットは。

政治学科の学生については、公務員となった卒業生がこれまで以上に来やすくなるので、実務家教員による実践的な授業の拡充を検討しています。グローバルな人材を養成する国際企業関係法学科については、グローバル企業との連携など、フィールドが広がることが大きな意味を持ちます。語学学校などの教育機関とのつながりが持ちやすくなるメリットもあります。

―新キャンパスの魅力について教えてください。

建物は、中央大学が創立時に参考にしたイギリスのミドル・テンプルの内装を取り入れ、法学部の原点を見つめながら新しい時代の法学教育を展開していくシンボルになります。

文京区の社会福祉協議会と協議して地域の公民館的なスペースを提供するなど、地域と連携することも特徴です。活発に活動を続けるボランティアセンターの拠点となり、社会福祉協議会や企業、近隣の大学との連携を通じて、ボランティア活動の幅が広がることが期待されます。

また、東京大学や筑波大学など、数多くの大学がある文京区にあって、中央大学がどのように存在感を発揮していくのか、連携の仕方を検討したいと考えています。新キャンパスには10万冊以上の蔵書を移設するので、法学関係の図書館としての貢献が考えられるでしょう。それ以外にも教員レベルの交流など、様々な連携が考えられます。

―最後にメッセージをお願いします。

中央大学の法学部は、法曹養成のイメージが強いと思いますが、大多数は一般企業に就職し公務員も相当数います。多様な進路を実現するために、法曹養成の授業以外にも実務家を招いた授業など、様々な学生のニーズに応えられる充実したプログラムを用意しており、都心へのキャンパス移転で学びのフィールドがさらに広がります。

この多様な学び方を実感するために、ぜひホームページにある“学生の声”を見てください。登場する様々なキャリアを積んだ学生の中に、自身のロールモデルを見つけられるはずです。充実したプログラムをどう活用するのかは学ぶ皆さん次第。ぜひ、23年に新しい時代の幕開けを迎える法学部で、やりたいことを見つけてほしいと思います。

ユニヴプレスMAGカテゴリの最新記事