小・中学校の教員就職者数から読み解く教員養成力の高い大学は

小・中学校の教員就職者数から読み解く教員養成力の高い大学は

文 雫 純平(大学通信)

教員は、高校生にとって保護者と並ぶ最も身近な大人であることが多い。多忙な職業であることを背景に教員採用試験の倍率は低下傾向にあるものの、児童・生徒の人間形成に携わることのできる仕事に魅力を感じる受験生は、今でも決して少なくないのではないか。では、教員養成力の高い大学とはどこなのだろうか。小・中学校の教員就職者数ランキングと併せて、検証してみよう。

教員を目指す上でのメリットが多い教員養成系学部

教員を目指す場合、学部・学科の選び方は大きく分けて2つある。教育学部などの教員養成系学部で学ぶ道と、それ以外の学部で教科に対する専門性を深める道だ。

小学校の教諭を目指す場合、中学・高校と比べて学ぶ範囲が広いため、教職課程が置かれている学部が限られる。そのため、教員養成系学部を選ぶことが一般的だ。

中学・高校の場合は、人文系や社会科学系、理工系など、様々な学部で教職課程が置かれている。専門学部では教員養成系学部よりも担当教科について深く学べるので、生徒の興味・関心を引き付けるような授業が展開しやすいという強みがある。一方で、学部・学科の必修科目に加えて教職単位も必要になるので負担が増えたり、取得できる教員免許状の種類が限られたりするので注意が必要だ。

専門学部の場合、同級生たちの進路は一般企業への就職や大学院進学など様々だ。その点、教員養成系学部であれば全員が同じ目標をもって頑張ることができる。教員になるためには、教職に関する多数の科目の履修や実習、教員採用試験など、厳しいハードルをいくつも乗り越える必要がある。学生同士で切磋琢磨し、互いに学び合える環境に励まされることも多いのではないだろうか。

複数の学校種の教員免許を取得できることも、教員養成系学部のメリットと言える。公立校でも、小中一貫教育や中高一貫教育など、複数の学校種をまたぐ学校の設置が進んでいるから、複数の教員免許を持つ教員は重宝されやすい。

複数免許の取得を希望する場合、カリキュラムを事前にしっかりと検証しておきたい。ただでさえ教員になるためのカリキュラムは負担が大きいのだから、複数の免許を取得できるかだけではなく、無理なく取得できるのかも確認しておこう。

そうした視点から注目されるのは、岐阜聖徳学園大・教育学部。独自の教育システムにより、小学校教員免許に加え、中学校、高校、幼稚園教諭の免許が無理なく取得できる。また、文教大・教育学部の学校教育課程では、専門教科の学習指導の基礎となる知識・技能の習得と、小学校から高等学校までの学習体系の理解の上で、小・中・高の「学びをつなぐ」教員の養成をしている。

教員に一般企業のような研修制度はなく、社会に出ると同時にひとり立ちして、生徒と向かい合わなければならない。そのため、即戦力としての資質を伸ばしてくれることも重要なポイントとなる。そういった点においても、教員養成系学部に進学する意義は大きいといえよう。

着任と同時にクラスを任されることもある教員になる上で、学生時代に実際の教育現場において実習を行うことは不可欠。教育実習以外に十分な教育現場体験を行える教育学部・学科を持つ大学は、愛媛大や信州大、島根大、文教大、聖徳大、玉川大、明星大、早稲田大、岐阜聖徳学園大、桃山学院教育大(※)など数多くある。

※桃山学院教育大は、2025年4月より桃山学院大と統合予定。

教員就職者数ランキング

表の見方
◆表は各大学発表による2024年春の就職状況(8月21日現在)。
◆医科・歯科の単科大などを除く全国757大学に調査し、回答のあった559大学のデータをもとにランキングを作成した。
◆設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
◆大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。

中学校

順位 設置 大学名 所在地 人数
1 北海道教育大 北海道 174
2 愛知教育大 愛知 146
3 文教大 * 東京 134
4 日本大 * 東京 111
5 岡山理科大 岡山 108
6 東京学芸大 東京 102
7 秀明大 千葉 91
8 福岡教育大 福岡 89
9 宮城教育大 * 宮城 85
10 日本体育大 東京 82
11 大阪教育大 大阪 79
12 広島大 * 広島 76
13 岐阜聖徳学園大 岐阜 75
14 玉川大 東京 73
15 千葉大 * 千葉 69
16 信州大 * 長野 67
17 茨城大 * 茨城 65
明星大 * 東京 65
19 東海大 東京 64
20 岡山大 * 岡山 62
佛教大 京都 62
大阪体育大 大阪 62

小学校

順位 設置 大学名 所在地 人数
1 愛知教育大 愛知 320
2 福岡教育大 福岡 296
3 北海道教育大 北海道 275
4 東京学芸大 東京 243
5 岐阜聖徳学園大 岐阜 208
6 大阪教育大 大阪 197
7 文教大 * 東京 180
8 玉川大 東京 164
9 明星大 * 東京 160
10 白鷗大 栃木 149
11 宮城教育大 * 宮城 129
12 中村学園大 福岡 126
13 千葉大 * 千葉 125
14 都留文科大 山梨 114
15 武庫川女子大 兵庫 113
16 大和大 大阪 109
17 淑徳大 千葉 105
18 上越教育大 新潟 104
東北福祉大 宮城 104
20 環太平洋大 岡山 102

大学の教員養成力の実力を示す教員就職実績

各大学の教員養成力の成果である大学別の教員就職実績について、小学校と中学校の「教員就職者数ランキング(2024年3月卒)」から見ていこう。

まず、小学校教員就職者数ランキングを見ると、大規模な教育学部を持つ国立大が強く、1位から4位までを占めた。1位は昨年に引き続き愛知教育大で、就職者数は320人。2位は就職者数296人で、昨年の3位から上がった福岡教育大。3位は北海道教育大で275人、4位は東京学芸大で243人の順だ。

5位は岐阜聖徳学園大で、私立大ではトップとなる208人。6位の大阪教育大を挟み、文教大(7位)、玉川大(8位)、明星大(9位)、白鷗大(10位)と私立大が並んでいる。中村学園大(12位)、武庫川女子大(15位)、大和大(16位)、淑徳大(17位)、東北福祉大(18位)、環太平洋大(20位)と、表中の半数を超える11校が私立大だ。

次に、中学校教員就職者数ランキングを見ていこう。上位は国立大と私立大が入り混じっている。1位は174人が就職した北海道教育大、2位は146人の愛知教育大だ。3位は文教大で、私立大では最多となる134人。4位は111人の日本大、5位は108人の岡山理科大の順だ。6位は東京学芸大、7位は秀明大、8位は福岡教育大、9位は宮城教育大の順。10位には体育教員が多い日本体育大が入る。

教員就職者数ランキングは、やはり教育学部など教員養成系学部を持つ大学が強い。地元の国立大というイメージが根強い教員養成系学部だが、近年は私立大でも新設が進み、選択肢が広がっている。免許の取得状況や実習環境、就職者数など、様々な指標を総合しながら受験校を選びたい。

特集カテゴリの最新記事

ユニヴプレス