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2024年版 わが子にちょうどいい学校は? 学校の先生が教える学校の選び方 パート2
私立学校選びを考える際、「どこから始めたらいいのかわからない」「どこに注目して何を調べればいいかわからない」と悩む保護者の方はたくさんいます。今回は、城南地区私立中学高等学校4校の広報担当の先生方にお集まりいただき、上手な学校選びや、私学の魅力などについて、本音でトークをしていただきました。どの先生も自分の学校だけでなく私学全体が元気になってくれることを望んでのご意見ですので、幅広く私学を見る目を養っていただけることと思います。なお内容は中学入試、高校入試または中高共通の話です。
<お話を伺った先生>
今田正利先生:立正大学付属立正中学校・高等学校 校長補佐
神戸航先生:文教大学付属中学校・高等学校 副校長、入試広報部長
井上卓三先生:多摩大学目黒中学校・高等学校 校長補佐・入試広報部長
伊東充先生:青稜中学校・高等学校 募集広報部部長
私立学校選びを正しく行うには各校のカラーを知ることが大切
―まず、私立校受験をするかしないか、というところから悩まれる方も多いですが、公立と私立の違いはどのようなところでしょうか。
伊東:我が家には3人の子どもがおりまして、全員公立に通っています。公立と私立で最も違いを感じるのは、先生方の異動の多さです。1年や2年で先生が変わりますし、校長先生が変わると学校のスタンスも変わるという点が圧倒的に違います。また、生徒のレベルが様々で、色々な分野において秀でている子といない子との差がとても大きい。うちの子ども達の通信簿を見て、「何を基準に評価したのだろう?」と疑問に思うこともあります。一人一人に対してどこまで手厚く面倒が見られるか、というと、それは残念ながら私立は公立の比ではないと思います。
また多くの私学には経営の問題がついて回ります。教員は学校を存続させるために結果を出さなければいけない。この点は公立と絶対的に違いますね。私学ではよりいっそうの危機感をもって教育の質を考えている先生が多いように感じます。
お子さんの適性を見極めながら、こっちの環境の方が合っているな、と感じられる場合は公立への進学でもよいと思います。
―それでは、私立の良さはどのようなところでしょうか。
井上:私立は、建学の理念からはじまって、各校の教育方針が異なります。「より進学意識が高い学校」「より生活指導に力を入れている学校」など、明らかにカラーがあります。「私立学校」とひとくくりにするのではなく、この学校はこういう考え方、教育方針で、こんな傾向の生徒さんが集まりやすいなど、1校1校の個性を見ていくと、「あ、この学校ならうちの子に会う」という学校が見つかりやすくなります。
伊東:私も長くこの学校にいて説明会でもお話をさせていただくのですが、毎年必ず「この学校はちょうどいい」とおっしゃる保護者の方がいらっしゃいます。「ここじゃなきゃ!」と気負って受験勉強をするわけでもなく、ふわっと、ちょうどいいと感じていただけるようです。
井上:実は、私も同じことを言われます(笑)。
各校のカラーでいえば、文教大学付属中学校(以下:文教大)の生徒さんたちとご一緒する機会があったときに、生徒たちの性格の違いに驚いたことがあります。うちの学校は運動部的な元気な生徒が多く、文武両道を重んじているので、特進クラスの子でもサッカーのレギュラーを高校3年生まで続けているような環境です。挨拶も「こんちはっす!」というような感じなのに対して、文教大の生徒さんは「こんにちは」と丁寧なのです。「いつもこんなに丁寧なのですか」と神戸先生に伺ったら、「そうなんですよ」と。ですから、うちの説明会にいらしたお子さんの個性を見て、「文教さんもおすすめですよ」と、お名前をあげさせていただくこともあります。
神戸:この4校が含まれる地域は学校が多いのですが、お互いよく知っているので、他校という感じがしないですよね。プールの話が出たら「うちは5コースだけど、立正大学付属立正中学(以下:立正大)さんには8コースありますよ」など、自然と他校さんも紹介しています。
今田:うちも、サッカーの話では多摩大学目黒中学校(以下:多摩大目黒)さんの話題を出しています。我々の地域でいえば、進学校から実業学校的な学校まで幅広くありますから、各私立を見て回っていただければ、必ず1校はお子さまに会う学校が見つかるだろうな、と思っています。
―「うちの子にちょうどいい学校」を選ぶためのポイントはありますか。
神戸:高校受験の場合は入試が近づいてくると、個別相談や説明会で、一言目に内申の話をされる方がいらっしゃいます。でも、それは純粋な学校選びではないと思っています。学校選びは内申ありきではなく、その学校の教育内容を見た上で、この学校で成長したいとか、この学校で学びたいという気持ちが生じるかどうかです。成績について考えるのは、その後です。
井上:高校受験ではよりそれが顕著で、ほとんど内申で選ばれてしまいますよね。そういう意味では、中学受験の方がまだ純粋に学校選びができている印象です。
今田:うちの学校では、保護者の方の意見が多様化してきています。もちろん、内申重視で「大学の進学実績がマーチ(注:明治・青山・立教・中央・法政の頭文字)以上の学校を」という方もいらっしゃいます。ですが、「難関校に無理やり入れるようなカリキュラムもないし、そういう教育方針ではないですよ」と説明すると、「進学実績は自己責任です。私はこの子にあった環境を6年間与えたいので、立正を選びます」ということをおっしゃる保護者の方も多いのです。
偏差値や進学実績といった数字だけで比べると、どうしても魅力が埋もれてしまう学校がたくさんあります。かくいう我が校もその1つだったのですが、最近やっと保護者の方の考え方が変わってきているようで、募集も増えてきています。
学校説明会や学校見学会に足を運び、特徴や良さを聞き出すのがポイント
―学校説明会で、何を聞いたらいいかわからない、質問するのが怖い、という保護者もいらっしゃいます。説明会はどのように利用するとよいですか。
伊東:裏側をお話ししますと、実は学校説明会に出ている広報担当者は、本業は教員です。皆様の前でお話をしてはいますが「広報のプロ」というわけではないのです。でも、みんな一生懸命自分の学校の良さを伝えたいという気持ちでやっていますので、保護者の方には聞き上手であってほしいです。こちらの説明を途中で遮られてしまうと良さが伝えきれず、結果的に保護者の方も情報を引き出しきれずで、お互い不完全燃焼な状態になってしまうのです。まずはじっくり説明を聞いていただけると、私たちも喋るつもりがなかったことまでお話しして、お互いwin-winになれます。
今田:「こんな初歩的なことを聞いてもいいのか」とか「学校選びは、何から始めたらいいのかわからない」「塾の先生に勧められてとりあえず来た」というようなご相談もよく受けます。何を聞いていただいても大丈夫ですので、安心してください。また「自分の子が私立でやっていけるのか」と、私立の敷居を高く感じている方もいらっしゃいます。そんなときは「机の中がぐちゃぐちゃな生徒さんだっていますよ」とお話したり、学校見学では、あえて体育で生徒たちがいない教室にご案内して、その散らかりようを見ていただいたりもしています。それで保護者の方もだいぶ安心されるようです(笑)。
―各学校の特徴や良さについては、具体的にどう引き出して比較したらよいのでしょうか。質問のコツはありますか。
今田:共通の質問を設定して、各校に聞いてみることをお勧めします。例えば価値観の判断材料の1つとして「コロナ禍でどんな対応をとっていたか」に注目してみてください。うちの学校は緊急事態宣言下でも生徒を午前中だけ学校に通わせました。全リモートにすれば感染のリスクは大幅に下がります。でも、中学生の子が家に一人でいることのメンタル面へのダメージを考えてこのような決断に至りました。この価値観に共感できるかできないかだけでも、学校選びの材料になりますよね。
大学進学についての考え方も学校によって大きく異なります。うちの学校はのんびり過ごして学校の勉強をきちんとやってさえいれば、極端な受験勉強はしなくても立正大学に進学することができます。そのかわり規則は厳しいので、お子さんにどう育ってほしいですか、と、ご意見を伺います。こうした違いから1つ1つお話していくと、最初はとまどっていた保護者の方の方からも徐々に質問が出てくるようになります。
伊東:他校さんと比較したり、序列をつけたりしていただくのは大いに良いのですが、困ることもあります。それが「あの学校はこんな点が強みでした。こちらの学校では、その点について、どのくらいのことをしてくださいますか」といったような、“ある学校の長所を、他の学校に期待する”という行為です。各校がそれぞれ個性を磨いていますので、各学校の長所や魅力に着目する方が撰択肢は増えると思います。
―1つ1つの着目点について各学校の特徴を探るというアクションを起こして、それから比較検討することが大事なのですね。
時流に流されるだけではない、本質を見極めた教育、指導を考える
―ここからは、各校の具体的な教育方針についてお伺いします。まず、大学進学について、どのような方針のもと指導をされていますか。
井上:我々は、「入りやすくて、成績も伸ばせる」という学校を目指して学習指導をしています。でも決して「勉強、勉強」と上から言うのではなく、クラブ活動を通じて先輩や後輩、他校の生徒の様子を実際に見ることで、自ら「勉強も大事だな」と気づくように配慮しています。我々や保護者が「このくらいの大学を出ていないとだめだよ」といくら諭しても理解しきれない生徒が多いので、最終的には自分の意思で勉強するように導きます。進路指導でも「この大学を目指そう」ということは強要しません。
今田:多摩大目黒さんでは、「SSL(Super Students Learning Center)」という施設で、生徒は21時まで(中学生は20時まで)勉強できますよね。
井上:そうですね。文武両道を実践していくためには、クラブ活動が終わって「はい、帰りなさい」と投げ出すわけにはいきません。クラブ活動の後でも使える学習環境を用意することで、塾任せにせず、学内で勉強面も支えています。
神戸:うちも、最も大切にしているのは、子どもたちに、学習する意義や意味を理解してもらうことです。学習指導をするのは当然ですが、なぜその学習が必要なのか、というところを丁寧にやっています。たとえば、キャリアノートという仕組みです。中学なら各学年で1冊、卒業までに6冊を使って、働く意味や大学の学部学科の選び方などを伝えています。
また、大学卒業後を見据えた取り組みも増やしています。その1つが中2から高2までの生徒に向けた「グローバルコンピテンスプログラム」です。世界で通じる価値観やコミュニケーション能力を養うことを目的にしたオールイングリッシュの授業です。
そのほか、我が校ならではの特徴というと、やはり「教育」です。文教大学の教育学部は、小学校の教員採用数が私立大学のなかでトップ、中学校も二位となっています。中高生のうちから教員を目指している生徒が一定数以上いますので、彼らに対しては、自分たちが先輩教育者として背中を見せることで指導をしています。
今田:うちも、教員や保護者が「勉強しろ」って言っても勉強しませんね。そこで、卒業生の会社の協力を得て、中学3年生でインターンシップに行かせています。インターンシップ先で社会人として扱われて初めて「このままじゃまずいかも」と気づく生徒が多いです。インターンシップから帰ってきた後が一番勉強しだしますね。
伊東:うちは4年制大学に入ることを前提とした進路指導を行なっています。でも、一貫して生徒に選択をゆだねるという姿勢で、どんな大学を何校受けましょう、というような管理型の指導はしません。
青稜中学校に進学してくる生徒は、小学校時代にそれなりの受験勉強をしてきています。そこで、小学校時代に培った学びの習慣をそのまま継続させるように、「Sラボ」という放課後の自習システムを設けました。専任の講師と一緒に学習計画を立てながら進めるので、完全自由ではないけれども拘束型でもありません。生徒たちはここで、自らの選択で自己肯定感を育て、能動的に勉強するようになります。また、中学生はゼミナール授業というものがあり、複数設置されたゼミの中から、自分の興味に応じてゼミを選び、学びを深めることができます。オンライン学習も全て選択制にしました。その中にあえて「難関大講習」というものをつくって、学校としての進学実績に結びつけるように工夫しています。
青稜は敷地が狭いのですが、それを逆手にとると、先輩たちの動きが手に取るようにわかります。3年後4年後の自分たちの姿を嫌でも目の当たりにする。「勉強しないとどうなるのか」という現実が見えますので、自ら自分の進路を考えるようになっていきます。
―生活指導についてはどうでしょうか。昔に比べて校則はゆるくなる傾向にあるようですが、どのように風紀を保っていますか。
神戸:本校は今、できるだけ生徒の主体的な活動を増やしています。学校行事の運営など、これまでは教員が全て行っていたものを生徒に任せるようにしました。そうすると、「この行事では、特例としてスマホを使わせてもらいたい」など、きちんとパワポで資料を作成して、その必要性を教員にプレゼンしにきます。生活指導に対して、ああしたい、こうはしたくない、といった希望は多いですが、なし崩し的にルールをゆるめてよいとは思っていません。「うちの学校が目指す生徒の理想像」を明確にした上で対話を重ねていくことが大事だと思います。
井上:生活指導についての考え方は20年前とはがらりと変わってきていますよね。今の子達は「ルールだからダメだ」といってもなかなか納得してくれません。この子はどう感じているのかな、という部分を聞き出さないといけないと感じています。
ただ運動部を見ていると、他校さんを含め、強いチームに所属している生徒ほどしっかりルールを守っています。着替えも早く、控え室にゴミも残さない、そういったチームがやっぱり強くてかっこいい。こうした実態を目の当たりにしているからか、我々の学校でもルールを重んじる子が増えてきています。
伊東:うちの校長は、究極的にいうと、「犯罪をしない、勉強をする、後は自由、これが理想だ」と言っています。厳しかった進路指導も徐々に変わってきました。まず変わったのが制服の自由度です。汎用性の高い制服を複数デザイン用意して、その中で生徒が自由に組み合わせられるようにしました。ただし式典の時はバリッと決めようね、と。すると、指定外のものを着てくる生徒がほぼいなくなりました。髪型は男女ともに清潔感を重視して、パーマや染色は禁止しています。長さには制限をかけていないので、長髪の男子も短髪の女子もいます。こうしたルール改定をしたら、子ども達の精神状態がすごく安定しました。
しかし、日常生活のけじめという意味では、時間を守るなど、集団行動で求められる約束事への意識が薄いと痛感しています。校則というと、学校対生徒という縮図になりがちですが、そもそもはルールを守って円滑に行動するための指標ですよね。ですからやはり必要に応じてひきしめるべきだと思っています。生徒達はルールを守ったり破ったりすることで、周りの人に怒られたりいろんなことを言われたりしながら成長していきます。エラーも経験させたいからこその校則だ、と思っています。
今田:うちの卒業生は「校則がとても厳しくて嫌だったけど、これを守ったことが、今、社会に出て一番役に立っている」と口を揃えます。学校説明会でも「部下に立正の卒業生がいて、とてもきっちりしていて優秀だから、どんな学校か見にきた」と言う方が多いですね。特に運動部の子たちはよりしっかりしているのですが、それはルールを守ることがチームの強さに直結すると身にしみているからでしょう。
だから、時世に合わせて校則をゆるめてしまったら、学校のアイデンティティにかかわるな、と危惧しています。
学校は「こういうことをしたら、他の人はどう思うかな」といった他者との関係を含め、基礎教育を身につける場でもあります。そう考えると、多様性や寛容性だけ認めることは、教育としては正解ではないのかもしれません。
―ありがとうございました。
お話を伺った4校だけでも、これだけの特色の差が見られます。また各学校の先生方は、自分の学校に入学させることだけを考えているのでは決してなく、その子が入学してから楽しく充実した学校生活を送れるのか、場合によっては他校を紹介することもあるほど真剣に考えています。これから学校選びをする方々は、各校に実際に足を運び、担当の先生の話を聞く機会をたくさん作り、また生徒の様子を実際に見たり聞いたりすることで「我が子にとってぴったりな学校」を見つけてください。