グローバルとは何かを深堀しフィールドワークを通して国際開発と地域創生を担う―拓殖大学国際学部

グローバルとは何かを深堀しフィールドワークを通して国際開発と地域創生を担う―拓殖大学国際学部

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「国際社会に貢献しうる人材の育成」という拓殖大学の理念を色濃く受け継いでいるのが国際学部だ。多様な視点から世界が直面する課題にアプローチ。世界各地からの留学生が多数在籍し、国際学部独自の海外研修を実践。世界を知る教員たちによる多彩なゼミを開講し、グローバル社会で活躍するためのさまざまなスキルや知識を身につけた人材を育成している。国際学部長の徳永達己教授に「拓大の国際学部」について伺った。

取材・文 浜名 純      
構成 石塚祐次(大学通信)

文理融合の学際的な6つのコースで幅広い分野をカバー

国際学部 学部長 徳永達己教授

―国際学部のカリキュラムの特徴をお教えください。

国際学部はどちらかというと社会科学系を重点に置いたカリキュラム体制になっていますが、人文科学や理数系まで幅広く網羅しています。

例えば2年生からは6つのコースに分かれますが、グローバル化というのは我々の身の回りのものすべてに関連することです。必然的にグローバル化を理解するためには、どうしても幅広い分野が関連してくるわけで、学生のニーズも考慮し6つのコースを設定しました。当初は、①国際協力、②国際経済、③国際政治、④国際文化の4コースでしたが、社会の動向や学生のニーズに合わせて⑤国際観光コースと⑥農業総合コースを加えました。現代社会では貧困、医療、教育、環境などさまざまな分野で解決すべき課題が山積しており、国際協力コースでは、こうした問題に向き合い国際協力のあるべき姿を探ります。国際経済コースではグローバル企業の国際戦略などを取り上げながら、経済学の理論と分析手法を学びます。国際政治コースでは、平和や安全保障をキーワードに国際社会が直面する課題について学び、国際文化コースは、世界各地の文化や風俗・習慣、宗教などを理解し、日本を世界に発信できるよう日本文化も勉強します。国際競争力を高める基幹産業として注目される観光について実践的に学び、観光業界で活躍できる人材を育成するのが国際観光コースです。

一方、農業という技能を武器に世界で活躍する人材を養成するのが農業総合コースです。農業は世界共通のグローバルビジネスであり、このコースでは農学部に匹敵する豊富な実習をこなします。例えば、栽培技術習得のために北海道への国内農業留学を行っています。文系の農業コースというのは唯一本学だけといえるでしょう。今、食の安全・安心が叫ばれていますが、文系学部で食物と農業に関して真剣に学ぶ場を提供しているのが本コースです。

フィールドワークを通した現地での体験を重視

―座学ではなく現地で体験して学ぶということを重要視していますが、その意義などについてお聞かせください。

国際学部は、2000年に創設された時には国際開発学部と称していました。現地での学びや体験を重要視するという伝統はしっかりと継承されています。今でこそインターネットでいろいろな現地の情報が入ってきますが、当時まだ十分には普及しておらず、現地に行くことは情報収集にとって有意義でした。

さらに、容易に情報やデータが入手できる現在においても、現地に行くことの重要性はますます大きくなっています。目の前のデータや情報が本当に正しいのか、どうしてこのようなデータになるのかといったことは、実際に現場に行って自分の目でよく見ないと分からない。現場で体験し調べることが必要です。ITで得られたものはあくまで二次加工の情報です。意図的に取捨選択された情報をつかまされる可能性もあります。一次資料を大切にする。すなわち、フィールドワークをして得られたものは大きいということです。

―現地での学ぶということに関連して、JICA(独立行政法人国際協力機構)と連携したボランティア活動を実践していますが、どのようなものかお聞かせください。

ネパールからの要請に応えて農業支援を行う農村地域活性化プロジェクトです。拓殖大学が農業人材をJICAに推薦し、JICAが適任と判断した時、その人材を青年海外協力隊員としてネパールに派遣します。拓殖大学が推薦する農業人材とは農業総合コースで、2〜4年生の3年間にわたり豊富な農業研究を行って卒業した人を指し、派遣期間は2年間です。

このほか、2011年の東日本大震災を機にTVTというボランティアチームが発足しました。国際学部の多くの学生が参加し、東日本大震災の被災地支援はもちろん、海外で起きた震災の募金活動なども行っています。また、活動の一つ「ミッタパープ」では、ラオスで買い付けた布を南三陸町で加工し、その商品をフェアトレードで販売しました。

―フィールドワークでは、現地の人々とのコミュニケーションが必要です。語学力やコミュニケーション力、異文化理解力を涵養する取り組みについてお教えください。

国際学部では、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどさまざまなバックグラウンドを持つ経験豊富な教員から「生きた英語」を学びます。また、11の地域言語を選べるようにし、留学生には習熟度別の日本語レッスンを提供しています。それに加えて専門の6つのコースでバランスよく異文化理解力を身につけます。さらに最近はデータサイエンスを用いて、政治経済情勢を含めた多様な情報からその国を分析し、文化を把握する試みにも取り組んでいます。すなわち、情報処理能力と語学力を両輪として、異文化理解をより充実させようというわけです。こうした「文理の科目」を融合したカリキュラムを展開することで、多角的な視点から異文化理解の能力を高めていこうと考えています。

国際学部には世界各地から約190名の留学生が在籍しています。6人に1人が留学生ということで、日常的な国際交流を通じて異文化コミュニケーション能力を磨くことができます。

グローバル化が結ぶ国際開発と地方創生

―国際学と聞くと海外に視点を置いたイメージがありますが、徳永教授のゼミをはじめ日本に視点を置いたテーマも多くあります。その意義についてお聞かせください。

グローバル化とは何かについて改めて考えた時、国内自体のグローバル化という問題に行きつきます。例えば、たくさんの外国人が実習生として日本の地方に来ていますが、グローバル人材がいないのでコミュニケーションが取れないということが起きています。かつては、国内の問題と海外の問題を明確に分けていましたが、そういう時代ではなくなりました。国際開発学部創設の頃は、日本が遅れている途上国を助けましょうという形でしたが、現在のグローバル社会というのは、お互いが助け合いながら新しい社会を作っていくというふうに変わってきています。先ほど述べたTVTの活動もその好例です。日本では、人や食料を海外に依存しているわけで、皆が依存し合う中で国内と海外の境目がなくなってきました。だからこそ、国内のことも視野に入れてやっていかなければいけないのです。

私は現職の前は、アフリカなどで開発コンサルタントとしてインフラ整備に携わっていましたが、日本という場でもそれを実践することが重要だというのが私の体験から得た結論です。国内でできないことは海外でもできるわけがない。海外で活躍する人はどういう人材かとよく聞かれますが、それは国内でもバリバリ働いている人なのです。そういう意味で日本を視野に置いた学びが重要になるのです。一昔前は海外に出て行くグローバル人材を育てればよかったのですが、これからは地方のグローバル人材を育てることもしないとだめなのです。

国際開発と地方創生は、方向がまったく異なるようですが、実は軸は同じです。例えば、社会インフラの再構築が求められている現在は、まちづくり計画の視点から見た基幹インフラの整備に加えてコミュニティ参加による身近なインフラ整備が喫緊の課題となっています。換言すれば世界を俯瞰するグローバルな視点とコミュニティに根ざした地方創生の視点を兼ね備えることが必須であるといえましょう。

学際的な学びの上に高度な専門性を身につける

―国際学部での学びを通してどのような力を身につけてほしいとお考えでしょうか。

学際的であるからこそ専門性を高めてほしいと思います。「何でもできるが、すべてが中途半端です」というのが一番いけません。私はインフラが専門ですが、インフラは極めて具体的です。そして具体的な手法を用いて世の中で起きていることを可視化させることが必要です。ポリシーや抽象的なものもありますが、専門性がしっかりとしていて、「私はこの分野のこれができます」と胸を張って言えるものを身につけてほしいと思います。そういう意味で、これからは大学院へ行って専門性を磨くということも大事になっていきます。

―キャリアサポートに関して国際学部の特徴的なものはありますか。

国際学部の普段の学びを通して、進むべき道への指導やキャリアサポートを行っています。また、高度な専門知識と現場で求められる実践的なスキルを身につける機会として資格取得を奨励し、教員免許の取得に向けた取り組みも積極的に行うとともに、企業人講座という国際学部だけの講座を実施しています。アントレプレナーシップなどについて実業界、産業界のいろいろな方に来てもらい話をしてもらうという試みです。

専門性と自主性を育む少人数教育

―他の大学でも国際関係の学部がありますが、拓殖大学の国際学部の魅力は、ズバリどういう点でしょうか。

拓大の国際学部は真正面から国際課題に取り組んでいる正統派だと思っています。それが第一点ですね。そして第二点目は、先ほども触れましたが、専門性を大事にしていること。しっかりとした専門性を目指している学部です。学際的なので確かに守備範囲は広いのですが、そこで専門性を培い、深堀りさせています。第三点目は、コミュニケーション、異文化理解、データサイエンスを横串として文理融合を色濃く打ち出していることです。国際関係の学部でデータサイエンスを一生懸命やっているところは他に例を見ないと思います。グローバルという定義も時代とともに変わってきますが、他に先駆けて新しいことを取り入れる柔軟性をもっています。

具体的な面では、1年次はクラスゼミナールに所属し、アカデミック・スキルズを習得し、2年次から少人数のゼミナールに入り、各分野の専門家の教員からフェイス・トゥ・フェイスの指導を受けます。ゼミは32あり、10名前後の少人数教育を実践し、学生の自主性を重んじているのも特徴です。

―最後に国際学部の今後の展望と受験生へのメッセージをお願いします。

改めて強調しますが、今、我々はグローバルにどう対応するかを問われています。コロナの前後で世界における社会の仕組みや考え方が変化してきましたし、温暖化、気候変動、SDGs、人口動態など我々を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。つまり、グローバルを深く考察することは、我々の価値観や生活のすべてを考えることにつながります。そういったことを理解した上で、専門性を体系的に学んで、芯の通った人間を育てることをより一層目指していきます。国際学部は、グローバルについて真正面に取り組んでいますので、本気で社会の課題解決に取り組みたいという人にぜひ来てもらいたいと思います。

最後に付け加えたいのは、グローバルを考える上で極めて大事なことは脱炭素化です。世界中の人がこのことについて考えていかないとカーボンニュートラルは生み出せません。それを解決できるのはグローバルな社会を学んだ人なのです。拓殖大学の国際学部に来て、脱炭素化社会に貢献できる人間になってほしいと期待しています。

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