「就職率」から「就職満足度」の向上へ
学生と社会とをつなぐ、ナラティブアプローチという新しい就職支援のあり方ー白百合女子大学

「就職率」から「就職満足度」の向上へ<br>学生と社会とをつなぐ、ナラティブアプローチという新しい就職支援のあり方ー白百合女子大学

大学選びに際して高校生、保護者から高校教員まで皆が意識するのが各大学の就職結果。各大学のキャリアセンターはその声に応えるためセミナーや企業説明会の開催に余念がない。そんなプッシュ型のサポートだけにとどまらない試みが、白百合女子大学のナラティブアプローチによる双方向の就職支援だ。就職実績だけでなく学生自身の満足度や納得感にフォーカスする取り組みについて伺った。

取材 井沢 秀(大学通信)

決定率だけではわからない就職先への「納得感」

白百合女子大学 学長特別補佐 落合英樹さん

多くの大学が就職率の高さをアピールし、就職実績には多くの人気企業名が並ぶ。就職支援の充実度は、教育内容と同じくらい重要な大学の評価軸となっている。その中で白百合女子大学では、いわゆる就職決定の割合だけでなくその質である「就職満足度」の向上にも注力し、教職員が一丸となって面談やサポートに当たっている。

「本学の就職支援は、キャリアセンターの職員だけが担うものではなく学内全体で多層的に展開しています。たとえば、コロナ禍でキャンパスに来られない時期にはキャリアセンターの職員より学科の担当教員の方が学生との接点を多くもっていることも考えられます。固定されたスタッフに限らずその時距離が近くて話しやすい相手に相談してもらえれば、あとは大学側で情報共有して連携が取れるのが強みです。特にこのコロナ禍で学生の就職活動は孤立しがちになり、他人と比べて焦り落ち込んでしまう学生が少なくありませんでした。一人ひとりに寄り添い、適切なタイミングでフォローしたり情報を提供したりと、きめ細かなサポートを心がけてきました」そう語るのは学長特別補佐の落合英樹さん。実は落合さん自身もかつて大学のキャリア支援の実務に携っていた経験があり、就職率を強く意識していた時期もあったという。しかし実際に就職が決まった学生にヒアリングすると、学生は無意識のうちに周囲の期待や会社の規模あるいは知名度に囚われ、本人の心の底にある想いに迫れていないケースが少なくなかった。そこで白百合女子大学では、自分がこれまでどのように生きてきて、これから仕事を通じてどう社会に貢献したいのか、学生一人ひとりと丁寧な対話を重ねていく「ナラティブアプローチ」という手法で就職満足度の向上をめざす方向に舵を切ることにした。

自分の人生を語り、他者の人生に耳を傾ける学生同士のワークを取り入れた授業もある。

「相手の話をとことん傾聴していると、学生は自分自身を物語る過程で気づきを得て、めざすところを見出すものです。コロナ禍で社会を取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。だからこそ就職する業界や企業を単純化して捉え目標とするのではなく、むしろ自分の中の価値観や生き甲斐といったブレない軸の存在に気づいてアプローチしてもらいたいですね。本学が個別面談に力を入れる理由もそこにあります。手間も時間もかかりますが、得られるものは大きい」

白百合女子大学は従来、学生の英語力や対人共感力の高い人柄が評価されており、航空会社やホテル業界への高い就職実績で知られている。しかしコロナ禍の影響で、一時は多くの関連企業が新卒採用を縮小。気落ちする声も聞かれたが、丁寧な面談を重ねる中でその仕事の本質・自分のめざす貢献のあり方を語り合った結果、多くの学生が新たに納得のいく職種・就職先を自ら見つけることができたという。学生の満足度は非常に高い。また対話を通じて学生のナラティブスキル(物事をストーリー化する力)が向上するため、卒業後は営業戦略やマーケティング分野など多岐にわたって活躍することも期待できる。

個々の視野を広げながら、強みを育む機会の提供を

また就職先への納得感だけでなく、その前段階としてキャリア獲得をサポートする教育プログラムも強化している。実践的な英語教育やビジネス知識を学び、3年次に海外インターンシップを実施する「グローバルビジネスプログラム」のほか、今年4月からは全学部・全学科を対象に「白百合 数理・データサイエンス・AI教育プログラム」をスタート。また客室乗務員(CA)やホテル業界への就職希望者が多い英語英文学科を対象としていた「ホスピタリティ・マネジメントプログラム」を、来年度より全学部・全学科に対象を拡大。内容も接客や語学研修に加えて、広報や企画業務も扱うなど、学びの幅を広げている。

「多様な業界や職種の仕事に触れさせて、学生の視野を広げるよう心がけています。かつては学生はエアラインやメガバンク、食品メーカーなど日常生活に馴染み深いBtoC企業に目を向けがちでした。しかし自分が知らないだけで高い世界シェアを誇る技術力を持った企業もあれば、文系だからと敬遠しがちだが実はナラティブなスキルが活かせるIT・情報関連企業もある。普段目にしないが非常に優良なBtoBの業界まで知れば、もっと自分の求めるやり甲斐や社会貢献とのマッチングの幅が広がります。ナラティブアプローチと並行して私たちがどれくらい広範囲に会社や社会の仕組みを見せられるか、そして学生が学びたいことを学べる機会を作り、キャリアの可能性を広げられるか。本学の就職支援ではそこを最も重視しています。小規模な大学だからこそ、こうした取り組みで学生一人ひとりに納得いく就職をさせてあげたいと思っているのです」

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