近年人気が低迷していた農学系の人気が戻ってきた。農学系は、喫緊の課題とされるSDGs(持続可能な開発目標)の課題解決に大きく貢献する上、就職状況も良好。お得な学部系統として、農学系は見直されているのだ。
近年の大学入試において農学系人気は上がらず、志願者は減少傾向にあったが、2022年度(22年4月入学)では増加に転じた。背景にあるのは、環境問題や食料危機が言われる中、農学に注目する受験生が増えたこと。
未来の地球について考える壮大なテーマである、SDGsで掲げられた17の目標の内、農学の学びが不可欠なものに、②「飢餓をゼロ」⑫「つくる責任つかう責任」⑭「海の豊かさを守ろう」⑮「陸の豊かさもまもろう」などがある。これらの分かりやすい目標以外に、①「貧困をなくそう」③「すべての人に健康と福祉を」⑥「安全な水とトイレを世界中に」⑦「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」なども、農学が役に立つ。SDGsの17の目標の半数近くで、農学の学びが求められていることになる。
持続可能な社会の構築を目指す様々な場面で農学の学びが求められるのは、研究分野の多様性にある。植物の生産や畜産、水産といった主流といえる分野に加え、森林科学や環境学、醸造学、バイオサイエンス、遺伝子工学、食品安全学、地域資源開発学、国際地域開発学、食料環境政策学、農業経済学、食農ビジネス学など、その研究分野は多岐に渡る。農学は、多様な問題意識を持ち、人や社会の役に立ちたいと考える受験生に注目してほしい学部系統だ。
研究分野の広さは就職先の多様性にも結び付いており、農水産業以外に食品、化学、機械、化粧品メーカーなど。さらに、農業の基礎知識を生かして、公務員や金融機関なども就職対象となる。
多様な就職先が視野に入ることから就職率も高い。就職に有利な資格が取得できる医療系などを除くと、農学系は理工系と並んで、平均就職率が最も高い学部系統だ。「農学系学部実就職率ランキング」を見ると、大半の大学で実就職率が90%を超えている。
持続可能な社会構築に貢献でき、就職状況も良好な農学系。こうした点が受験生から注目されることにより、前述の通り22年度の志願者が増え、23年度入試に向けた志望者も増えている。
国公立大と私立大ともに難化が見込まれる農学系だが、高いハードルを乗り越えた先には、大きな可能性が広がっている。学力と学びたい分野のバランスをしっかりとった上で、生徒にとってベストの選択となる大学・学部選びを進めたい。
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