【2021年度新設情報】情報系の新設や理工系の再編で、社会から求められる新たな人材を養成

【2021年度新設情報】情報系の新設や理工系の再編で、社会から求められる新たな人材を養成

社会が変化して新たに求められる人材があれば、大学は学部の新設や改組により対応する。
21年度に新設される大学も、現在のニーズに則したものが多くある。
そのキーワードは情報化社会と言えそうだ。

21年度の新設学部・学科は情報系が多い

社会から求められる人材養成が大学の使命であり、社会構造の変化に見合った改革が求められている。その中でも目に見えやすい改革が、新しい人材養成を目指して進む学部・学科の新設。そうした点を踏まえて21年度の新設学部・学科に注目すると、情報系が多く、AIやIoT、ビッグデータなどを活用して新たな産業を創出する、第四次産業革命の真っただ中にいることがよく分かる。

8学部15学科が1拠点に集う京都橘大学

特に圧倒的な人材不足といわれる、データサイエンティストを養成する学部・学科が数多くある。国立では、群馬大・情報。私立では、中央大・理工のビジネスデータサイエンス学科、立正大・データサイエンス、南山大・理工のデータサイエンス学科、京都橘大・工の情報工学科、大阪工業大・情報科が設置予定だ。代々木ゼミナール教育総合研究所の主幹研究員、坂口幸世さんは言う。

「データサイエンスやプログラミング、などを学ぶ情報系人気が続いています。今後もAI、IoTの発展が期待され、人気は継続するでしょう。新型コロナウイルス禍における自身の自宅学習や社会人のテレワークなどを通して、情報技術の可能性の広がりを理解できたことも影響しそうです」

情報技術の発展により一般的な事務職が削減され、サラリーマン養成学部ともいわれる経済・経営・商学系の人気が下がっている。一方、第四次産業革命の波に乗り遅れたといわれる日本は、今後の情報産業の発展の余地が大きいことから、学部選びの重要な要素である就職を意識した受験生から情報系が注目されている。データサイエンスやプログラミングの分野は、文系の受験生も出願できるため、社会科学系からの志望変更が可能な点も、この系統の志望者が増え続けている要因だ。

産業構造の変化に対応するため理系学部の再編が進む

東京理科大学の神楽坂キャンパス

産業構造の変化に対応するための理工系の再編も、21年度の大学改革の特徴といえよう。

「製造業が日本の産業の中心だった頃、大量のエンジニア養成のために、大規模な機械系や電気系などの学科が理工系に設置されていました。それが産業構造の変化とともに、現在のニーズに見合った学科への再編や、情報や建築などを学部として分離する動きが見られます」(代ゼミの坂口さん)

九州大・工は、既存の電気情報工や機械航空工、建築など6学科を12学科に細分化する改組を行う。その他の国立では、群馬大・理工と岡山大・工などが改組を予定している。私立では、青山学院大・理工、東京都市大・理工、南山大・理工、関西学院大・理工と、多くの大学で理工系学部の再編もしくは、学科新設が予定されている。東京理科大は、これまでの学びを継承したうえで、新たな学問・教育分野に対応するため、既存の基礎工を先進工に学部名変更。同大は、経営も改組し国際デザイン経営学科を新設する。

これらの大学の中で、大規模な改革を行うのは関西学院大。理工1学部から、理、工、建築、生命環境の4学部体制とするのだ。4学部は既存の総合政策とともに神戸三田キャンパス(兵庫県三田市)に開設され、理系4学部と文系1学部が融合することによる、教育・研究体制の充実を図る。

「名称から教育・研究内容が分かりにくい学部は受験生が集まりにくいが、分かりやすい名称の学部が揃うことで、優秀な受験生が集まりそうです。神戸三田キャンパスは郊外に立地します。一般的な受験生は利便性を求めますが、理系は立地より設備の充実を重視するので、マイナスにはならないでしょう」(代ゼミの坂口さん)

理系4学部が新設される関西学院大学の神戸三田キャンパス

コロナ後を見越して観光系学部という選択肢も

情報や理工系以外で見ておきたいのは観光系。新型コロナウイルス禍で需要が大幅下減となっても、インバウンドをベースとした観光業はこれからの日本を支える産業の一つであることは間違いない。21年度は、国際観光芸術専門職大が開校予定。学部では、地域と密着したまちづくりを目標と掲げる國學院大・観光が新設される。

現在は、世界中の人や物の動きが停滞しているが、将来的に見て、グローバル化の流れが止まることは考えにくい。そうした中、グローバル人材を育成する学部として、神田外語大のグローバル・リベラルアーツや大谷大・国際などが設置される。

観光系と国際系は、20年度入試で志願者が減少傾向であり、この流れは、新型コロナウイルス禍での観光業の冷え込みや国際系志望者が重視する留学が困難な状況になる中さらに強まり、21年度入試でも人気は上がらないと見られている。大学関係者は言う。

「観光はこれからの日本の産業の柱になることは自明で、国際系におけるグローバルな学びも不可欠。薬やワクチンが開発され、新型コロナウイルス禍が終息して元の生活に戻れば、観光系や国際系は再度注目されるでしょう」

21年度の入学者が卒業する25年には、再びグローバリゼーションが加速する可能性もある。そうなると、観光系や国際系は社会からのニーズが高い学部系統になることも考えられる。志望者減が見込まれる上に学部新設が進む、お得な学部系統になるかもしれない。志望校選びにおいて、新型コロナウイルス禍の先を見据えた視点も求められる。

2021年 新設大学・学部・学科

表の見方
21年度新設予定の主な大学・学部・学科を掲載(認可申請中のものを含む。通信教育課程を除く)。文部科学省からの2020年8月までの発表と、大学へのアンケートを基に作成。

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