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創立53年を迎えた県下有数の私立共学進学校の山手学院中学・高等学校で、今年4月より校長に着任したのが時乗洋昭先生だ。神奈川県下で屈指の進学実績を誇る湘南高校で校長職を務めた経験から、そのノウハウをどのように私立中高一貫校の教育活動に活かしていくかが注目されている。今後の同校での取り組みや、次世代を見据えた教育観についてお話をうかがった。
取材:井沢 秀(大学通信・ユニヴプレス編集部)
大学通信情報調査・編集部長。中高~大学への接続。入試全般の情報分析を担当。新聞社系週刊誌や経済誌などでの執筆多数。
5教科7科目学び、広い視野と教養を
── 時乗先生は山手学院中高にいらっしゃる以前、公立高校でのキャリアが長かったと伺っています。初めて私立中高の校長職を務めるにあたっての意気込みや、山手学院中高の印象をお聞かせいただけますか?
そうですね、秦野高校で2年、湘南高校で2年ずつ学校長を務め、退職後は神奈川県教育委員会で3年に渡り進学重点校の教育政策の立案・推進に関わってきました。しかし県教育委員会の組織体制ではとてもよいアイデアや政策を実施しようにも組織系統が大きすぎて動きが重くなり、思うようなスピード感や規模感でやりたいことを実行できなく忸怩たる思いを抱えることもありました。
そんなこともあり山手学院中高では、これまで県立の進学校に携わり、さらに進学校を創り上げるためのノウハウを知り尽くした自分の経験を集大成として活かしたい、神奈川の若い人材育成に貢献したいという想いで着任しました。
私学の持つフレキシビリティと中高一貫での6年間というまとまったスパンがあれば、いろんな面白い教育活動を実現できることを確信しており今はその準備に取り組んでいるところです。こちらの教職員は公立に比べて比較的若手の方が多く「一緒に山手学院を変えていこう」という当事者意識とエネルギーに満ち溢れています。今日はごく一部にはなりますが私が考えていることをお示しできたらと思っています。
── 近年の山手学院は進学実績が目覚ましい伸びを見せています。以前はMARCHクラスの学校が主体でしたが、ここ2年は続けて東大・京大の合格者が出ているほか、東工大も毎年合格者が続いています。学校として目標を国立大学にシフトしつつあるのでしょうか?
国立にシフトしたというよりは、5教科7科目をきちんと勉強しようというここ数年の学校としての取り組みの結果だと思います。ベースとなる教養は広い方が社会に出てからいろんな判断をする際に役立つので、あまり早い時期から文系・理系に絞ってしまう勉強はかえって子どもの可能性を狭めてしまうと思います。
国立大学への進学を重視するというよりは最後までしっかり5教科7科目を勉強することによって、必然的に国公立を受験する子が増えてきています。
2019年度大学合格者数_参照
https://www.yamate-gakuin.ac.jp/career/almu.html
── 御校出身の生徒さんは海外の大学を視野に入れたり、進学後に留学するケースも多いと聞きました。
「世界を舞台に活躍でき、世界に信頼される人間」という建学の精神が示すように、山手学院はもともとグローバル人材育成のために創設された学校で、昨今の国際的とかグローバルと言ったことが提唱されるはるか昔、もう50年以上前から海外研修などの取り組みに力を注いできています。
現在は中3でオーストラリアに1週間のホームステイ、高2で2週間の北米研修に全員参加で行きますから、中高一貫で入った子はトータルで3週間の海外経験を積むことになります。早い時期からそういう体験をすることで留学に対するハードルは下がるようで、学内調査でも本校の生徒は約8割が海外留学に関心を持っていますね。
イノベーター育成に向けた6カ年計画、始動!
── グローバル人材育成に加えて、時乗校長がこれから山手学院で取り組みたい、あるいは変えていきたいことなど将来的な展望について教えてください。
これは学校説明会などいろんな機会でもお話していますが、イノベーターを育てたいと思ってます。AI化によるデジタル革命が進むいっぽうで、少子高齢化とグローバル化が早いスピードで進行しています。
そんな複雑化する社会において今後求められる人材について話をすると、当然のように世界的に大きなイノベーションを起こす人、と言われるんですね。でも、それよりもっと身近な部分でイノベーションを繰り返し起こせる人材が必要なんですよ。
世の中に新しい価値をどんどん作っていって、人と社会をハッピーに変えていく。そういう人材を作っていきたいというのが、湘南高校時代から変わらず抱いてきた思いです。
── なるほど。政府も将来の人材育成に向けて自己探求やアクティブラーニングの導入などを推奨していますが、具体的にどんな取り組みを行うのでしょうか?
私を含めて現在の教員は、探求学習に関する教育を受けてきていないので、指導の経験値やノウハウが足りないところがあります。そこは教員にリカレント教育を行って補強しつつ、同時進行でその方面に強いスタートアップ企業など、外部の力をどんどん入れていこうと思っています。
足りないリソースはどんどん外部に頼るという、いわば“脱自前主義”ですね。その流れで大学との連携も進めています。明治大学には模擬講座を行ってもらってますし、プログラミングなどの専門教育では電気通信大学や筑波大学とも話を進めています。連携先は今後もっと増えていくと思いますよ。
── 外部リソースを積極的に活用しながら、必要な教育をなるべく早期に実施するわけですね。
さらに2020年度の中学募集から新たなコース制を導入します。具体的にはイノベーションを起こす人材の育成に向けて、6年間を2年・2年・2年と3つの段階に分けて必要な学びを提供していく、というものです。
最初の2年間でしっかり基礎固めを行い、中3・高1に相当する3〜4年目ではプログラミングやアントレプレナーシップにまつわる研修など、STEM系教育に集中的に取り組みます。5〜6年目は大学入試に向けた勉強が中心になりますね。
基本的には2021年度入学生からのスタートですが、移行期間として来年度の中3・高1にもどこまでSTEM教育を実施していくか、目下検討しているところです。
── なるほど、もう具体的なカリキュラム策定も進んでいるのでしょうか?
STEM系の教育活動は主に土曜日を充てる見込みです。今年度は7月下旬に6人の生徒がスタートアップ企業と連携してMITに行って、そこでアントレプレナーシップ研修に参加してきます。
9月からは同様にスタートアップ企業と連携してSTEM系講座を開く予定で、そのあたりの様子やフィードバックを見極めてから来年度の動きを決めていくつもりです。
海外進学も視野に入れ、神奈川の進学校に新たな流れを
── 既にたくさんの新たな試みに取り組んでいらっしゃいますが、湘南高校にいたころの経験やノウハウはどんな点で活かされているのでしょうか?
そうですね、基本的な考え方や教育観は役に立っているのでしょうが、湘南高校でやった手法をそのままここに持ち込めるとは思っていません。進学面では湘南高校と翠嵐高校、それぞれのいいやり方をうまく融合させていきたいですね。
── 自由でのびのびした校風の湘南と、しっかり管理型の翠嵐。究極の良いとこ取りですね! 両者を融合させると、具体的にどのような教育になるんでしょうか?
湘南高校で重視されているのは、生徒のモチベーションをいかに上げていくかという点です。いっぽう翠嵐の方は本当に学習時間の管理をきっちり行っているのですね。
先ほどお話したSTEM系の教育は探求活動がメインになので、いわば“学び方”を学ぶわけです。どうやって勉強すればいいかを生徒たちがきっちり理解すれば、あとはどんどん自分のペースで勉強していけると思います。管理という点では、来年度からすべての生徒にタブレットを渡す方向で検討しています。
それを活用すれば個別最適化された学習が可能になりますし、学校側も生徒の学習状況を把握しやすくなります。一人一人のモチベーションと学習管理、うまくバランスをとって結果につなげていきたいですね。
── そんな積極的な取り組みについてうかがうと、やはり保護者の方々もその先の進路に期待が高まるのではないでしょうか。
学校説明会でもよくお話ししているのですが、将来的には湘南、翠嵐、相模原中等や平塚中等などの公立高校を凌ぐ実績を出していきたいと思っています。また東大・京大に何人という実績も重要かもしれませんが、私はそれより海外の大学に進学する生徒をもっと増やしていきたいですね。
── 近年、進学の選択肢として注目されつつありますね。
海外の大学に生徒を入れていくためには、誰にどのように推薦状を書いてもらうのか、どんなエッセイを書くといいのかなど、学校側にもそれなりのノウハウが必要です。そういうノウハウに強いNPOと連携して実践的なアドバイスを行うなど、学校側もバックアップ体制を整えていくつもりです。
都内の高校では海外の大学進学に強い高校がいくつか出てきていますが、神奈川県内の私学ではまだそういう取り組みは多くありません。山手学院中高が目指すのは世界で活躍しイノベーションを起こすことができる人材ですから、海外進学を選択肢として考えている生徒をいち早くサポートすることで、県内でも特別な立ち位置の進学校として存在感を発揮していきます。
◎取材後記
記者も神奈川育ちのため「県立トップの湘南高校の校長を務めてこられた」ということで取材前は多少身構えてしまうところもあったが、時乗校長先生はごく自然体で出迎えてくださりあたりもやわらかく訥々と現在のビジョンについて語ってくださいました。
ただ年中全国各地の大学や中高を取材している記者も印象に残ったことがあります。それは時乗校長の話はまったく無駄がなくとても密度が濃いということ。同じ時間取材すると他の学校の先生の3倍くらいの内容量を話している。ああ、このスピード感が圧倒的な仕事量を算出するのだな、と合点がいきました。
また他の私学に負けない、打ち勝つというより「神奈川県にあたらしいジャンルをつくっていく」という考え方も非常に共鳴できるものがありました。
きっと山手学院は数年でいまとはまた違う注目を集めるはずです。新しく柔軟な考え方をする受験生・保護者にはぜひ検討に入れて欲しい学校です。
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2019年度中学説明会 (10/12 11/9)
https://www.yamate-gakuin.ac.jp/examinee/j_setsumeikai.html
2019年度高等学校説明会(10/12 11/9 11/30)
https://www.yamate-gakuin.ac.jp/examinee/j_setsumeikai.html