【連載】いい学校ってなんだろう?~女子聖学院中学校・高等学校編~

【連載】いい学校ってなんだろう?~女子聖学院中学校・高等学校編~

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女子聖学院中学校・高等学校は創立112年の伝統校だ。今年東大合格者を輩出し、難関私立大学の合格実績も着実に伸ばしている。さらに国語教育では、時代を先取りした取り組みを20年以上にわたり実施している。今回はその実態を探るべく、教頭・進路指導部長の塚原隆行教諭、国語科の筑田周一教諭、入試広報室長の佐々木恵教諭に話を聞いた。

取材・文責 松本陽


今回のポイント!

①ラーニングセンターや課外講座など生徒の声をもとに学校の中に場を作る。
②ディベートも小論文も、上達にはスモールステップで段階を踏むことが大切。
③授業に限らず普段から生徒に問いかけ、言葉を大切にする。

―東大文Ⅰに合格した生徒のエピソードを教えてください。

塚原 中1の授業で歴史が好きになり、中2の時、大河ドラマの歴史考証に携わった東大史料編纂研究所の先生の番組を見て、東大で勉強したいと思ったそうです。最初は夢だったわけですが、高1の初めの模試で非常にいい結果が出て、夢が確信に変わりました。

佐々木 彼女が今年8月にOGとして学校に戻って話していたのは「女子聖学院の授業は知識だけでなく、興味が沸く話題が豊富だった」ということです。歴史に限らず他の教科もそうだったと話していました。

塚原 さらに高2の9月に放課後学習支援の仕組みであるJSGラーニングセンター(※1)が開設されました。彼女は非常に賢い使い方をして、決めた曜日はここで勉強をしていました。数学も個別指導が得意な教師がいて、過去問を継続的に見てもらっていました。

―東大合格者が出たことで変わったことはありますか。

塚原 下級生の中にもはっきりと「東大に行きたい」という生徒が増えました。「私にもできるんじゃないか」という雰囲気が出てきたように思います。ラーニングセンターで彼女が勉強する姿を見ていたことも大きいと思います。

塚原隆行教諭

―GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の合格率も、昨年比で約10%上がっています。

塚原 今年卒業した学年は中1から継続して英検に取り組んだ学年です。英語は受験の柱です。英語が伸びたことで、GMARCH合格につながったことはあると思います。もう一つは2012 年から始まったJSG講座(※2)です。教師が担当する課外講座なのですが、放課後、夏期、冬期、直前と私立の大学入試が始まるまで行われます。これがスタートしたのは彼女たちが中2の時です。継続して授業の上積みを図ることができたのがもう一つの理由だと思います。

あとは「最後まであきらめない」ということです。彼女たちは高3になってからも3教科の成績が伸び続けました。よく女子は先行逃げ切り型と言われます。高2の冬がピークで男子に追いつかれてしまう。しかし彼女たちは英語を中心に高3になっても伸び続けました。現役生は受験しながらでも伸びます。最後まであきらめなかった人には最後にいいことがあります。そのことを教師たちが語り続けました。

―JSG講座を立ち上げるきっかけは?

塚原 実はJSG講座を立ち上げる前から、教師と生徒が集まって課外をやっていました。生徒からの要望があると「じゃあ放課後に勉強会をしよう」と。それを組織化したということです。

JSG講座:女子聖学院の教員による課外講座。全学年対象の「前期」「夏期」「後期」に加え、「高Ⅲ冬期」「高Ⅱ春期」と通年にわたり放課後と長期休暇に実施されている。内容・対象レベル・担当教員のメッセ-ジを掲載した冊子を発行して募集する。対象レベルは「早慶上理」「国立」「医学部」向けの発展レベルと、「GMARCH」向けの標準レベルがある。

―JSGラーニングセンターを設置した理由はなんですか?

塚原 生徒の方から学校で勉強させて欲しいという声があったのです。2012年だったと思いますが、部活生が夏休みの部活前に学校を開けてくれないかと言ってきました。当時の校長が「じゃあ開けてやるよ」と勝手に始めてしまった(笑)。さかのぼるとそこですね。

JSGラーニングセンター2015年9月に開設した女子聖学院独自の放課後学習支援センター。自習エリアのほか、個別相談ブースや質問コーナーがあり、常駐の大学生チューターにいつでも質問ができる。高校生は20時まで利用可能で、部活後も利用が可能。

―そういう声が生徒から出始めたのはなぜでしょうか。

塚原 やはり学校が好きなのだと思います。仲間といた方が勉強のモチベーションも上がりますし。

佐々木 学校に来ることで、安心できますし、平常心も保てます。勉強に集中できるというのもあります。高3の1月以降も最後まで自分の席で勉強していた生徒がいましたが、彼女は上智大学に合格しました。

筑田周一教諭

―JSGラーニングセンター導入後、変化はありましたか?

塚原 自習の仕方がうまくなりました。

筑田 普段からラーニングセンターで勉強しているから、テスト前の自習時間などはスッと静かになっていく。無駄話をする生徒が減りました。

塚原 導入後の成績の伸びはデータでも確認することができます。卒業までにさらにワンランク上に持っていくことが目標です。

―次に国語教育についてうかがいます。2021年実施の新テストでは国語で記述問題が出題されますが、見解をお聞かせください。

筑田 新テストにおける国語の記述問題はOECDのPISAのように、情報を取り出して組み合わせ、自分の考えを提示するところまでいくと思っていました。しかし、モデル問題を見る限り、それよりは簡単です。やはり大人数を採点しようとすると、このあたりにならざるを得ないのかなという印象があります。ただ、いずれにしても書く力が重視されることには間違いありません。女子聖学院では書く力を伸ばす取り組みを以前から行っています。

―書く力を伸ばす具体的な取り組みを教えてください。

筑田 「作家の時間」と言う授業があります。はじめに5分間のミニレッスンで、小説を書くときの技法を一つ教えます。例えば視点を意識して書く。一人称視点、三人称視点と、実際の文章は視点によって世界観が変わります。このように作家が普段使っている技法を伝授します。

次は実際に生徒が書く時間です。教わった技法を取捨選択しながら文章を書いてみます。できた文章は、カンファレンスといって、さらに良くするにはどうすれば良いか、先生と一緒に考えます。他の生徒からもフィードバックをもらいます。そうすると、知識の丸暗記だけでなく、技法を使ってみて「うまくいった、うまくいかない、振り返る、次回も狙いを持って授業に取り組む」というように、自分で自分の学習をコントロールすることができます。メタ認知を高めることができるんです。作文の時間は書いた作品そのものの価値より、書いていくプロセスに価値があります。そこで何を学んだかが大切です。

実は、これは他の授業にも使えます。ある公立高校の物理の先生は、「作家体験」を「科学者体験」に置き換えて授業をやっていました。知識を注入する時間、それを試す時間。振り返る時間。この授業サイクルを回すことは、あらゆる教科に展開が可能です。こういう授業を10年以上やっていますが、やっと世の中が追いついてきた感じがします。

佐々木恵教諭

―生徒と一緒に授業を作っていくことが大切ですね。

筑田 国語教育は杓子定規ではないと思うんです。音楽で言えば課題曲ではなく、JAZZをやるイメージです。そのためには教員が技術や知識の引き出しをたくさん持っていなければいけません。授業中にどれだけ生徒の良さに感動できるか。授業の醍醐味はそこにあると思います。女子聖学院は教師の自由裁量が利く授業が多いので、好きなようにやらせていただいています(笑)。

佐々木 授業に自由な雰囲気を醸し出せる教師の共通点は、何のためにその授業をするのかという目的がはっきりしていることだと思います。目的が見つからないと「(こう教え)ねばならない」という呪縛から逃れられないと思うんです。女子聖学院では何のためにという問いに答えを持って、生徒の意欲を引き出せる教師が多いと思います。

―ディベートも国語の授業に取り入れています。

筑田 20年以上前からディベートを授業の中で取り入れています。最初は高1の国語の授業で年に2回やっていました。そのうち高校生では遅いということになり、今は中3の1月から3月にやっています。

実際にディベートをやると、第三者を説得することがいかに大変なことかわかります。特に大変なのは審判です。相反する立場の意見を聞き取った上で、どういう根拠によってどちらが勝ちかを判定しなければなりません。これは、今回の新テストのモデル問題(問題例1の問4)にあった、「妹がお姉さんの立場に立って意見をする問題」と通ずるところがあります。ディベートは肯定側、否定側、審判とすべての立場を経験します。一つのテーマについて、より深く学ぶ。一段深まったところで、賛成側と反対側、それぞれの立場に立って問題を認識することができます。他者が作った文章を読んだだけでは、深い納得も説得もできません。

―ディベートは国語の4技能を鍛えることに有効ですね。

筑田 とても有効です。まず聞くことと書くことが連動しています。メモとらないと何も議論できません。さらに読むことと話すことも連動している。4技能は一つひとつがバラバラではなく、それぞれがつながって本当の意味での力がつくと思います。ディベート甲子園の参加校も増えていますし、こういう取り組みは早い方がいいです。小学校からやっている学校もあります。

―その他の取り組みについても教えてください。

筑田 高3で国語表現を取った生徒は、小論文を年間20本書きます。これも最初と最後で文章がダイナミックに変わってきます。独りよがりな文章を書いていた生徒が、読み手のことを意識した文章を書くようになります。いずれの取り組みも付け焼刃では絶対にできません。しかし、自動車の運転免許と同じで段階を踏めば誰でもできるようになります。女子聖学院では中学段階からスモールステップでやっています。一足飛びでできるようになることは有り得ません。

佐々木 スモールステップで一歩ずつ成長する。それは生きる力にもつながるわけです。学校を卒業した後も、生徒が自分の力で自分の人生を幸せに歩んでくれることを教育の根幹に置いています。

―女子聖学院では伝統的に生徒に「問う」文化を大切にしてきました。

佐々木 授業だけでなく学校生活の中でも、決めつけるのではなく「どうしてそういう風にしたの?」「どう考えるの?」と、問うことを大事にしてきました。女子聖学院では「なぜ?」という理由の部分がとても大事だと考えています。悪いことは悪い、良いことは良いですが、そこに考えがあったかなかったか、その考えは本当に相手の立場に立っていたのか考えられるようになってほしいし、同時に相手のことを思いやることのできる人になってほしいと願っています。

塚原 ミッションスクールだからでしょうね。こういう教育の根底にはキリスト教があります。

筑田 聖書の中に「初めに言葉があった」という言葉がありますが、言葉を大事にする考え方が伝統的にあるんです。それが、国語では作文やディベートなどを通して、生徒の主体性を育むことにつながっています。

 

聞き手 松本陽一(まつもとよういち) 1982年滋賀県彦根市生まれ。2005年大学通信入社。情報企画部所属。 入社以来、首都圏を中心に多くの私立の中学校・高等学校を訪問。 学校の成長に関心を寄せる。

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