【奨学金特集】課外活動で責任感やリーダーシップを身につける

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給付型奨学金のメリットは大きいが、条件は厳しく、その資格取得がゴールとなりがちだ。
一方で、金銭的余裕を生かし、入学後の大学生活をいかに充実させるかを考えることも大切だ。金沢工業大学工学部ロボティクス学科4年の坂下文彦さんは、大学の特別奨学生制度を活用して学生ロボコンに打ち込んだ経験を持つ。その活動の様子をお伝えする。


金沢工業大学(KIT)は、「国立大学標準額との差額を給付する」特別奨学生制度を設け、自ら考え行動する技術者として、リーダーとなりうる人材の育成を行っている。スカラーシップフェローの坂下さんは、国立大や関西の難関私大にも合格していたが、全ての大学に足を運び比較した結果、KITを選んで入学した。選択の決め手として3つのポイントを挙げる。

「KITが他と大きく異なるのは、夢考房など、学生が自由にものづくりをできる場が整っている点です。ロボティクスの分野に進むのだから、ロボットの製作ができる大学に進学したいとの思いがありました。KITの施設・設備の充実度は他大学に比べ圧倒的で、一番の魅力でした。大学を案内してくれた先輩の影響も大きいです。丁寧に分かりやすく説明する姿を見て、この大学で学ぶことで自分も先輩のように成長したいと思いましたし、一緒に見学に来ていた親にも好印象だったようです。最後に決断を後押ししたのが特別奨学生制度です。スカラーシップフェローになると、国立大と同じ授業料でKITの充実した設備を使うことができます。見学を終える頃には、ここしかないという気持ちで入学を決めていました」

見逃されがちだが、KITはかなり大規模な大学だ。理工系学部だけの比較では、数百人程度が多い国立大に対し、各学年の在籍者数は1600人を超えており、スケールメリットを生かした設備投資が可能となっている。

【参加必須の課外活動。ロボコンで世界に挑戦】

特別奨学生となった学生は、人力飛行機、医工連携、人工知能、建築デザインなど、さまざまなテーマを揃える「KITオナーズプログラム」など、いずれかの課外活動への参加が求められる。高い学業成績のほか、課外活動で中心的役割を担うことが期待されているためだ。坂下さんは先輩が作るロボットに衝撃を受け、夢考房ロボットプロジェクトに参加。NHK学生ロボコンに向けてオリジナルロボットを作る「Team_Robocon」で4年間活動した。
NHK学生ロボコンは日本全国の大学などが参加するロボットコンテスト。書類審査と2回のビデオ審査を経て選ばれた約20チームが、アイデアとチームワークを駆使して競い合うのだ。優勝チームは日本代表として、ABUアジア・太平洋ロボットコンテストへの出場権を獲得できる。KITは2013年に優勝し、日本代表として出場した世界大会でも優勝するなど、これまで国内で3度の優勝を数える強豪校だ。

坂下さんは制御班として主にプログラムの作成を行う。ロボットの行動を決める脳を作る重要な役割だ。3年生の2015年には、大会リーダーとしてベスト8の成績を残した。3年の大会が終わると卒業していく学生が多い中、坂下さんはプロジェクトに残り、今年はチームリーダーとして全体のまとめ役を担った。チームはベスト4に進出し、技術賞と特別賞を受賞し
た。坂下さんはこう振り返る。

「昨年のリベンジをしたい気持ちと、自分が後輩を引っ張っていいチームを作りたいという責任感の両方があり、今年も参加を決めました。ロボコンは競技内容やルールが毎年変わるので、大会ごとに新しいロボットを作らなければなりません。今年のロボットは、初めて全自動化を果たしたことが大きな特徴です。ルールを見た瞬間に可能性を感じ、アイデア出しの段階から全自動化を念頭に置いて取り組みました。今年は過去最高のロボットが作れたという自負がありましたし、大会では優勝候補に挙げられました。会場のコースに合わせた調整が難しく、結果はベスト4に終わりましたが、予選では優勝した東京大学と同じ16秒というタイムをマークしました。あとで細かく比較したところ、コンマ数秒の差でKITが上回っていたので、より一層悔しかったですね」


【各自の専門知識を合わせ実践的に課題解決を学ぶ】

ロボットの製作は、まずアイデア出しを行い、仕様を決定した後、細かな班に分かれて作業
に当たる。「機構」「制御」「回路」という3つの要素技術を統合しなければならず、それぞれに高い専門的知識が求められる。全てに精通することは難しいため、各自の知識を組み合わせることが必要になる。技術的な難しさだけでなく、人をまとめ、コミュニケーションを取りながら、チームで作る難しさもあるのだ。KITは問題発見から課題解決に至るまで、チームとしていかに取り組めばいいかを身につける、プロジェクトデザイン教育に力を入れており、こうした課外活動は、授業での学びを実践的な場で試す絶好の機会となっている。
チームリーダーとしての坂下さんは、技術的なこと以上に、各メンバーが作りたいと考えるロボット像をすり合わせ、チームの方向性を決めることや、良い雰囲気作りに注力したとし、
「プロジェクトを通じて、自分の仕事に最後まで取り組む姿勢やリーダーシップが身についた」と語る。今後は大学院に進学し、人と共存しながら在宅での生活支援をするロボットの研
究を進めるそうだ。

【奨学金が充実した大学生活を後押し】

KITの特別奨学生制度は、充実した大学生活の中で学生を成長させる仕組みとして機能していることがうかがえるが、現役のスカラーシップフェローはどう感じているのか。

「奨学金のおかげでアルバイトなどに時間を割くことなく、ロボコンに打ち込むことができました。スカラーシップフェローには、一つのことに継続して取り組み、大学の4年間を充実させることが要求されます。奨学金は取った後が大切なのです。
特別奨学生制度は、国立大と同じ学費で充実した設備を自由に使えるすばらしい制度です。成長できる場は整っているので、あとは自分がどう関わるかだと思います。意欲ある受験生には特別奨学生を目指すことを勧めたいですし、そうした学生が後を継いで、ロボコンで優勝を狙うようになってくれたら嬉しいです」