【有名企業400社実就職率ランキング2024】学生の売り手市場が続くも大手企業は狭き門

多くの企業が人手不足に苦しむ中、大学生の売り手市場が続いているが、大手企業に限ると採用は狭き門。それにもかかわらず、大手企業が大学生に人気が高いのはなぜなのか。大手企業人気の要因について検証するとともに、各大学からの有名企業への就職状況について見ていこう。

有名企業400社実就職率ランキング2024

情報化、グローバル化、超高齢化―。社会構造が大きく変化する中、不確実性が高く、変化も激しい社会を生き抜いていける能力を身に着けるために、自身が成長できる機会や環境が充実しているかどうかが企業選びの重要な指針となっている。さらに、企業の規模感や業績、待遇面、福利厚生などの安定感とともに、労働時間や休暇など働きやすさを求める学生も増えているという。こうした学生の思いを叶えられる場は大企業に多いことから、学生の大手志向が強まっている。

人気が高い大手企業だが、求人倍率は低くリクルートワークス研究所調べによると、今春（2024年卒）の従業員規模5000人以上の企業の求人倍率は0.41倍で、大学生1人当たり0.5社に満たなかった。

求人倍率が低いところに志望する学生が多いことから、大手企業に限っては買い手市場と言えるが、それでも、採用予定数を充足できる企業は少ない。その理由について、就職アナリストに聞いてみた。

「大手企業が学生に求める、“当たり前に仕事ができるレベル感”が上がっている。今の学生は消費者としてSNSなどを使いこなすことは得意だが、提供者としてのITリテラシーが高い学生は少ない。多様性のあるメンバーと協働できるコミュニケーション力が不足している学生も少なくない。採用したくてもふさわしい学生が足りないという状況が見られます」

豊田工業大が難関国立大を抑えてランキングトップをキープ

少ない求人数をさらに下回る採用人数となる中、高い壁を越えて大手企業に就職した学生の割合が高い大学についてまとめたのが「有名企業400社実就職率ランキング」。

1位は、このランキングのトップ2の常連だった東京工業大（2位）と一橋大（3位）を昨年抜き、今年も同順位をキープしている豊田工業大。トヨタ自動車の社会貢献の一環として設立した大学だ。同社の援助により学費が国立大並みということから優秀な学生が集まっている。卒業生が137人と少ないこともあるが、トヨタ自動車（11人）、豊田自動織機（5人）、三菱電機とデンソー（各3人）などの有名企業に就職している。

東京工業大の主な就職先は、日立製作所（36人）、野村総合研究所（29人）、アクセンチュア（24人）、日産自動車とソニーセミコンダクタソリューションズ（各22人）など。ちなみに、東京工業大は今秋、東京医科歯科大と統合して東京科学大になった。旧東京医科歯科大から一般企業への就職者が少ない分、当ランキングの順位が下がると見られている。一橋大の就職者最多企業は、三井住友銀行（19人）で、アクセンチュア（15人）、三井住友信託銀行（13人）、三菱UFJ銀行とEYストラテジー・アンド・コンサルティング（各11人）などが続く。

4位の名古屋工業大は同地区の難関大である名古屋大（12位）の実就職率を11.5ポイント上回る。就職が多い企業はデンソー（61人）、トヨタ自動車（24人）、アイシン（22人）などで、入試難易度を勘案すると名古屋大よりお得な大学とも言える。同様の傾向は、九州大（22位）の実就職率を7.4ポイント上回る8位の九州工業大にも当てはまる。有名企業の就職に強い理工系大学は多く、既出の4大学に東京理科大（5位）と電気通信大（7位）を加えると、ベスト10の内6大学を占める。

早稲田大の有名企業就職率には学生の気質が色濃く表れる

大学の規模に注目すると、6位の慶應義塾大は卒業生7730人の大規模大学ながら、4割以上が有名企業に就職。一方、慶應と並ぶ私立最難関の早稲田大は、卒業生が11671人と多いこともあるが、実就職率は慶應を下回る9位。ただ、そこには大手企業にこだわらず、自律的・主体的に活躍できる場なら、地域や規模に関係なく進む、進取の精神を持つ早稲田大生らしさがあるようだ。同大の卒業生の約7割が企業・団体に就職するが、ベンチャー企業や地方企業、さらに留学生を中心とした海外の就職先などを合わせた企業・団体数は2300機関に上るという。その内、約1500機関は就職者が1人なのだ。

実際、早慶の就職者が多い企業は大きく変わらず、慶應がベイカレント・コンサルティング（124人）、アクセンチュア（100人）、デロイトトーマツコンサルティング（83人）、三井住友銀行（67人）、EYストラテジー・アンド・コンサルティングと東京海上日動火災保険（各66人）。早稲田は、アクセンチュア（100人）、NTTデータグループ（98人）、ベイカレント・コンサルティング（85人）、みずほフィナンシャルグループ（79人）、デロイトトーマツコンサルティング（66人）。早慶は情報関連企業や金融と共に、コンサルティング会社が多いという共通項がある。

高い給与水準と自身が成長できる場であるコンサルティング会社の人気は高い。東大や京大、上智大といった国立と私立の最難関大でも、就職者数最多企業が、外資コンサルティング会社大手のアクセンチュアとなっている。デロイトトーマツコンサルティングやPwCコンサルティング、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパンなどの外資大手を中心に、最難関大でコンサルティング会社の就職者が増えている。

他の業種の状況を見ると、旧帝大や東京工業大は理系学部生が多いことから、日立製作所やNEC、三菱重工業、トヨタ自動車、日産自動車など大手製造業に多くの就職者がいる。地元企業に強さを見せる傾向も見られ、京大の就職者が2番目に多いのは関西電力（26人）、北海道大と名古屋大の就職者数上位2社は、前者がニトリ（22人）と北海道電力（19人）、後者がデンソー（53人）とトヨタ自動車（52人）、九州大は九州電力（41人）が最多となっている。

国立難関大の中で文系学部が主体の一橋大は、前述の通り金融が多い。同様の傾向は、MARCH（明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大）や関関同立（関西大、関西学院大、同志社大、立命館大）でも見られる。メガバンクの就職状況が好調な大学が多く、みずほフィナンシャルグループは明治大（66人）、中央大（56人）、法政大（53人）、立命館大（39人）で、りそなグループは立教大（29人）、関西学院大（43人）で就職数最多企業となっている。同志社大のトップタイに京都銀行（38人）が入るなど、ランキング上位に銀行が入る大学が多くなっている。

就職者数が増えている企業として航空もあり、青山学院大の就職者数トップは日本航空（28人）で全日本空輸（19人）も7番目に多い企業になっている。日本航空は、立教大（21人）と上智大（20人）でも就職者数ベスト10に入っている。

2024年 有名企業400社への実就職率ランキング

表の見方
◆表は各大学発表による2024年の就職状況。アンケートに回答のあった560大学のデータをもとにランキングを作成した（10月25日現在）。東京大は「東京大学新聞」、京都大は「京都大学新聞」より判明分を集計。大阪公立大は、統合前の大阪市立大と大阪府立大、大阪公立大の大学院修了者の合計を掲載した。
◆400社実就職率（％）は、400社就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数100人未満の大学はランキングから除いた。
◆設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。一部の学部・研究科を含まない大学がある。
◆有名企業400社とは、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定した。

2024年 有名企業400社への実就職率ランキング　女子大

表の見方
◆表は各大学発表による2024年の就職状況（10月25日現在）。
◆400社実就職率（％）は、400社就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数100人未満の大学はランキングから除いた。
◆設置の◎印は私立。＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。一部の学部・研究科を含まない大学がある。
◆有名企業400社とは、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定した。