“デジタル・グリーン”わが国の成長分野をけん引する高度な理系人材の育成が急務

デジタル化社会、環境問題、少子高齢化など、我々が生きる日本社会は、多種多様と言える課題を抱えている。これらの諸課題の解決に寄与できると期待されているのが、デジタルやグリーンなどの成長分野を学んだ理系人材だ。

文　雫 純平（大学通信）

今、多くの企業が求めているのがＤＸ（デジタルトランスフォーメーション）人材と、GX（グリーントランスフォーメーション）人材だ。情報化社会が急速に進展した今、デジタル技術を不要とする企業はほとんどないし、企業や社会の発展のために脱炭素社会への取り組みは不可欠だからだ。ただ、肝心のDX人材やGX人材は常に不足しており、大学生の採用活動では争奪戦になっている。

その背景にあるのは、理系人材が根本的に不足していることだ。2022年5月に教育未来創造会議が取りまとめた資料によると、学部段階での理工系の入学者の割合は、OECD諸国平均の27％に対して日本は17％と大きく後れを取っている。さらに女性についてみると、OECD諸国の平均が15％であるのに対し、日本は7％だ。

急務となっている理系人材の養成に向け、文部科学省が始めたのが「大学・高専機能強化支援事業」。デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成に向け、大学・高専に対して支援を行うものだ。

その支援内容の一つが学部再編等による特定成長分野（グリーン・デジタル等）への転換だ。24年6月に公表された第2回公募の選定大学の中から主なものを抜粋して次ページに掲載している。

表の特徴は、女子大の名前が複数見られることだ。公立では福岡女子大、私立では和洋女子大、跡見学園女子大、昭和女子大、津田塾大、清泉女学院大（※）、岐阜女子大、金城学院大、同志社女子大、筑紫女学園大だ。かつて、女子大の理系学部と言えば日本女子大・理学部など一部を除き、家政・生活・栄養系学部や看護系学部などがほとんどだったが、今後は選択肢が大きく広がっていくことになる。

※清泉女学院大は25年より清泉大として共学化を予定

共学について見ていくと、25年開設で注目したいのは3学部同時開設の金沢工業大。ほか、有名大では、26年開設予定の成蹊大、創価大や27年開設予定の龍谷大などが名を連ねる。

国の支援を受けて、理系の学部新設や改組が進んでいる。ここで育成された理系人材が、日本が抱える諸課題の解決に資することに期待してみよう。

大学・高専機能強化支援事業 支援1
（学部再編等による特定成長分野への転換等に係る支援）
第2回公募の選定大学

表の見方
◆表は文部科学省公表の資料から、大学通信が主な大学を抜粋し作成したもの。
◆改組後の学部・学科名は申請書ベースの記載であり、今後、名称の変更がありうる。
◆※は既存組織の定員増を含む取組であることを示す。
◆所在地は大学本部のもの。

＊25年より清泉大として共学化予定