【2024就職】コロナ禍が明け大学生の就職は完全回復　それでも上がらない難関大の実就職率？

学時から大学に行けず自宅でリモート授業を受けるなど、コロナ禍の影響を大きく受けた2024年卒の学生はどのような就活を行ったのか。就活の傾向とともに、大学の規模・地域別の実就職率について見ていこう。

文　井沢 秀（大学通信）

多様な学生が在籍する難関大は実就職率が上がりにくい

2024年卒の大学生の就職状況は好調だった。平均実就職率は、コロナ禍の影響で近年最も低かった21年の85.3％を上回る88.9％で、コロナ以前の水準に戻った。

それでも、コロナの影響が完全になくなったわけではない。24年卒の学生は、入学時からコロナ禍での学生生活が続き、4年次に5類感染症に移行してやっと解放された、フルコロナでの就活を余儀なくされた世代と言える。地域を跨いだ活動がしにくく、地方から首都圏などの大都市圏に出て就活するイメージが湧きにくかったため、地元企業の就職を考えた学生が多かったようなのだ。大都市圏の大学に入学しても、授業は地元でオンラインの学生が多く、自分の生活圏を変えずにキャリア選択する意欲が強かった世代といえる。

こうした状況下で就活を行った大学生の就職状況について、大学別にまとめたのが「大学別実就職率ランキング」。この表から規模別に実就職率が高い大学を見ていこう。

卒業生「500人以上、1000人未満」の1位は福岡工業大。経営スローガンに「For all the students」を掲げるように、面倒見の良さが就職力を支える。2位は幼稚園教員や保育士などの就職実績が高い聖徳大。教員養成に定評のある大学や医療系では、3位の東京薬科大、5位の愛知教育大、7位の岐阜聖徳学園大、8位の畿央大がベスト10に入っている。

卒業生「1000人以上、3000人未満」のベスト5を占める、愛知工業大、福井大、大阪工業大、金沢工業大、名古屋工業大は、昨年と同じ順位で並んでいる。理工系大学が多いのは、研究や論文執筆などを通して、論理的思考力を身に付けた学生が多いことが一因であり、近年は企業のIT化が進み、あらゆる業種で理系人材が求められていることも要因として考えられる。

6位には昭和女子大が入った。卒業生1000人以上の女子大の中で、12年連続で続いてきた1位の座は23年に途絶えたが、再びトップになっている。女子大は全体的に就職力が高い大学が多く、このカテゴリーの実就職率ランキングでは、椙山女学園大（12位）、東京家政大（15位）、武庫川女子大（21位）、実践女子大（25位）、安田女子大（26位）がランクインしている。

最後に、卒業生「3000人以上」を見ると、1位は4年連続でこのカテゴリートップの名城大。名城大は就職に強い学部系統である、理工と農の学生数が多いという強みがある。2位は東京理科大。順位は入れ替わっても、この2大学がトップ2を分け合うのは10年連続。就職支援が行き届きにくい大規模大学の中で、就職力が抜けている大学といえよう。

3位は7885人の卒業生がありながら、実就職率91.7％の近畿大。大規模大学の中でも、特に卒業生が多い大学では、関西学院大（5位）や法政大（7位）、明治大（10位）などの実就職率が高い。

このカテゴリーに入る、難関大の状況も確認しておこう。旧帝大では11位の名古屋大と28位の東北大以外はベスト30圏外で、九州大（85.1％）が31位、北海道大（84.8％）が33位、大阪大（84.2％）が34位、京大（80.3％）が39位となっている（東大はデータ未公表）。

難関私大では、MARCH（明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大）と関関同立（関西大、関西学院大、同志社大、立命館大）は全てランクインしているが、最難関の早慶上智の内、早稲田大（83.5％、35位）と上智大（81.0％、38位）はランク外。ベスト30に入っていても、大学全体の平均実就職率88.9％を下回っている大学もある。

もちろん、難関大の学生が就職できないわけではなく、資格試験準備や新たな学問分野を学ぶために大学に入り直すなど、就職や大学院進学以外の多様な進路選択をする学生が多いことが要因。

すべての企業を対象とした実就職率は、一般的な大学の後塵を拝する難関大も、有名企業に限定して実就職率を算出すると、一般的な大学の追随を許さない。難関大の就職力を見る際は卒業後の進路にも注目したい。

実就職率ランキング2024

表の見方
表は各大学発表による2024年春の就職状況（8月21日現在）。
医科・歯科の単科大などを除く全国757大学に調査し、回答のあった559大学のデータをもとにランキングを作成した。
実就職率（％）は、就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。
同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。大学名横の＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
エリア別の実就職率ランキングは、卒業生数300人未満の大学を除いた。
大阪公立大は統合前の大阪市立大と大阪府立大の実績を掲載した。

大学別　卒業生数 500人以上＞1000人未満

大学別　卒業生数 1000人以上＞3000人未満

大学別　卒業生数 3000人以上＞

エリア別　北海道・東北

エリア別　関東

エリア別　東海・北陸・甲信越

エリア別　近畿

エリア別　中四国・九州・沖縄