卒業論文、課題図書… 先進的な高大連携の取り組み―獨協埼玉中学高等学校

卒業論文、課題図書… 先進的な高大連携の取り組み―獨協埼玉中学高等学校

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取材・文:雫 純平(大学通信)

近年、高大連携という言葉を盛んに耳にするようになってきました。高大連携とはその名の通り、高校と大学が連携して教育を行うこと。これには色々な目的がありますが、生徒の立場から見ると大学レベルの教育の一部分を受けられることで優秀な高校生がどんどん力をつけられたり、大学入学後に直面するイメージと現実とのギャップが小さくなったりと、様々なメリットがあるものです。

高大連携は高校と大学がそれぞれ取り組みを行っています。今回は特に先進的な取り組みである獨協埼玉中学高等学校の「獨協コース」の特徴について、大学進学状況全般と併せて酒井直樹先生にお話を伺いました。

今回お話を頂いたのは、獨協埼玉中学高等学校 入試対策部主任の酒井直樹先生です。

卒業論文、課題図書など大学の学びを先取りできる獨協コース

――獨協埼玉中学高等学校では、同じ獨協学園の獨協大学との間に、先進的な高大接続の取り組みを行っているとお聞きしました。そのことについて教えてください。

教育効果を高めるために様々な取り組みを行っていますが、特に本校ならではのものとしてご紹介したいのは獨協コースです。高校3年次に希望する進路に応じてコースを決定するのですが、国公立・難関私立をめざす文系Ⅰ、理系Ⅰ、上位私立大学をめざす文系Ⅱ、理系Ⅱの4つのコースとは別に、獨協大学への推薦を前提に、通常の大学入試の枠組みから離れた学習方法を取り入れた獨協コースを設けています。

大きな特徴は、現代文や世界史といった通常の教科科目の他に研究という科目を設けていることです。ディスカッションやプレゼンテーションなどを取り入れることで、発信力や受信力、論理的思考力などを養い、知識を身に着けるだけに留まらないより深い学びを行います。

――大学では当たり前に行われているディスカッションやプレゼンテーションですが、高校の科目として実施しているのは確かに珍しいですね。

大学で学ぶ内容を先取りできることがこのコースの強みです。特に象徴的なのは読書課題卒業論文の2つでしょうか。読書課題は進学を希望する学科ごとに年間30冊を用意しています。1冊ごとに概略と感想を小レポートして提出するもので、文学作品から社会評論まで、幅広い本に触れることになります。課題図書の他にも本校の2人の司書にサポートを受けながら獨協大学図書館の蔵書も利用可能となるなど、多くの読書機会を与えています。

卒業論文は、高校生の論文ということで、もしかしたら「ある程度まとまった内容を書けば良い」というレベルを想像されてしまうかもしれません。そんなことは決してなく、約16,000字の本格的な論文を要求します。まず、獨協コースの30人程度の生徒一人ひとりに対し、専任の指導教員がつきます。日々の論文指導・論文作成は総合学習の時間や放課後を使って毎日行われますが、2カ月に1回程度、獨協大学の教授を交えて進捗を報告する機会があります。教授は高校生だからと手加減することなく、本気で指導をしてくださいますので、ほぼダメ出しの時間になってしまうこともあります。我々教員陣も論文指導のプロではありませんから、生徒と一緒に教授の指摘を受け、一緒に学びながら論文を仕上げていきます。

獨協コースでは出席日数などある程度の要件を満たせば獨協大学への推薦を確保できますので、受験勉強のことを気にせずに時間をかけて課題図書や卒業論文に取り組むことが可能です。ここまで申し上げた通りそれなりに厳しいものですので、大学に行くことだけが目的ならば他のコースから受験勉強をした方が楽なのかもしれません。ただ、このコースを卒業した生徒は大学入学後の学習がスムーズで成長も早く、リーダーシップなども育みやすい傾向があります。

2019年度卒業生の優秀論文集を見せていただいた。テーマは魔女狩りといじめの類似点や、過疎地域における教育を受ける権利など。十分に大学生の一般教養レベルと言えそう。

獨協大学への推薦を確保したまま、他大学入試へチャレンジ

――獨協コース以外の4つのコースでは、獨協大学はどのように関連していますか。

獨協コース以外のコースでも単願推薦併願推薦により獨協大学への進学が可能で、推薦の方法によって進学可能な学科が異なるという特徴があります。例えば、先ほどご説明した獨協コースには外国語学部の英語学科と交流文化学科への推薦枠はありません。特に獨協大学の英語学科は有名ですから、そこをめざす場合は獨協コースではなくその他のコースを選択することになります。

単願推薦は、獨協コースとは逆に外国語学部英語学科と交流文化学科への進学が可能で、獨協大学を第一志望とする生徒が対象です。獨協コースと違い卒業論文がありませんから、校内成績や出席状況等を推薦の要件に設定しており、合格した場合は原則そのまま獨協大学に進学します。

併願推薦は、単願推薦の2学科に加え、外国語学部ドイツ語学科、国際教養学部、経済学部の計3学部7学科への進学が可能で、獨協大学への推薦を確保しながら他大学の一般入試にチャレンジすることが可能であることが単願推薦との大きな違いです。単願推薦よりもやや推薦の要件が高くなりますが、それでも毎年40~50人程度の生徒が併願推薦を得ています。近年は有名私大を中心に入学試験が難化していますから、なるべく併願推薦を確保して安心して志望校に挑むようにという指導をしています。併願推薦のパターンとしては、早稲田大学や慶應義塾大学、GMARCH*などを受ける生徒が多いです。国公立大学では東京外国語大学や、筑波大学、埼玉大学、千葉大学など、近郊の大学が多いですね。

*編注:GMARCH=学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学

「勉強以外に頑張ったこと」を、胸を張って言えるような高校生活

――獨協大学以外の大学への進学者の特徴を教えてください。

2020年春の卒業生359人の進路状況を見ると、獨協大学への進学が21%その他の四年制大学への進学が64%、次年度受験予定者が15%で、実は圧倒的に他大学への進学が多いんですね。現役進学率が高いのは、本校の生徒、保護者共に現役志向が強いことを反映しています。

また、「語学の獨協」のイメージが強いので意外に思われるのかもしれませんが、理工系学部への進学者が多いことも特徴です。これは中学校の授業で帰納的手法、つまり体験型の学習を重視している影響だと思われます。例えば理科の授業では実験と観察を重視しますし、理科以外の科目でもレポート作成と新聞学習を取り入れています。稲作体験、キャリア教育、福祉体験といった教科書外の学習もこれに含まれますね。原理と方法を最初に教える演繹的手法に比べると時間がかかりますが、様々な体験を通じて自分の目で確認することで探求心や好奇心を育む効果があり、理系の素養も身につけているのではないでしょうか。

中学1年生の稲作体験。体験してこそ身につく素養を大切にする、獨協埼玉らしいプログラム。

――中高一貫で高校入試がないからこそ、中学校では色々なことにチャレンジできるんですね。

生徒たちには勉強だけでなく、色々なことを体験してもらいたいという気持ちがあり、それはもちろん高校も同じです。高校の部活動の加入率は約9割ととても高いですし、体育祭や中高合同で行われる文化祭である蛙鳴祭(あめいさい)はどちらも生徒主体で行われ、毎年とても盛り上がります。

校舎とグラウンド全景、広い敷地で思いっきり部活動ができます

大学進学の話に戻りますが、本校は国公立大に推薦入試で合格する生徒が多いことも特徴です。20年春は筑波大学の推薦入試に5人が合格しました。国公立大の推薦入試は学力だけでなく高校時代の取り組みが評価されますから、「勉強以外に何を頑張ったか」を聞かれたときに胸を張って応えられる生徒が多いことが獨協埼玉の特徴なのだと思います。

――獨協埼玉の教育の特徴についてよく分かりました。最後に、受験生の方へメッセージをお願いします。

本校では高校3年生まではコース制を敷いておらず、入学後はみんな横一線です。それは何故かというと、入学後に色々な体験をする機会を多く用意しており、体験をしながら進路を決めてほしいからです。獨協埼玉での学校生活を楽しみながら将来の夢を決めて、そこに向かって頑張れるような3年間、6年間を過ごしてみませんか。

学内の自習室。明るく静かな空間で学習がはかどります

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