社会構造が大きく変化する中待ったなしの理系人材養成

デジタル化社会、環境問題、少子高齢化—課題が山積する日本社会において、これらの課題解決に不可欠とされるのが理系人材。しかし、現状では大学からの供給量が心もとないことから、文部科学省や大学は、理系人材拡充に向けて動き出している。

文　井沢 秀（大学通信）

企業はDX（デジタルトランスフォーメーション）やGX（グリーントランスフォーメーション）人材の採用に躍起になっている。デジタル技術が不要な企業は皆無とはいえ、企業の発展のために脱炭素社会への取り組みが不可欠だからだ。しかし、肝心のDXやGX人材は払底しており、大学生の採用活動において、こうした人材は争奪戦になっている。その背景にあるのは、根本的に理系人材が不足していること。文部科学省によると、女子の理系学部の学位取得者の割合は35％で、英45％、独42％、韓42％などを下回っている。

急務となっている理系人材養成に向け、文部科学省が始めたのが「大学・高専機能強化支援事業」。デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成に向け、大学・高専に対して支援を行うものだ。

その支援内容の一つが学部再編等による特定成長分野（デジタル・グリーン等）への転換であり、その主なものを掲載した。表中には、富山県立大・情報工や下関市立大・データサイエンス、千葉工業大・情報変革科、麗澤大・工、日本女子大・建築デザイン、明治学院大・情報数理など、24年に新設されるものもある。

25年以降は有名大の学部新設が目白押しで、青山学院大の統計・データサイエンス、中央大の健康スポーツ科と農業情報、東洋大・環境イノベーション、立教大・環境、桃山学院大・工、関西大・ビジネスデータサイエンス（いずれも仮称）などがある。

理系人材を増やすには、世界的にみて少ない理系の女子学生を増やす必要があることから、22年度に奈良女子大・工が設置され、24年度はお茶の水女子大が共創工を新設予定だ。機能強化支援事業においても、前出の日本女子大以外に、大妻女子大・データサイエンス、椙山女学園大・情報社会、京都女子大・食農科、ノートルダム清心女子大・情報デザインなどが選定されている。共学大学では、工科系や総合大学の理系学部で、女子限定の選抜を行う大学が増えている。

学部新設や女子に門戸を開くことによる理系人材の拡充が進み、日本が抱える諸課題を解決できる人材養成が期待されている。

大学・高専機能強化支援事業 支援1
（学部再編等による特定成長分野への転換等に係る支援）
初回公募の主な選定大学

注）改組後の学部・学科名は申請書ベースの記載であり、今後、名称の変更がありうる。