高倍率が確実視される私立大の共通テスト利用入試

高倍率が確実視される私立大の共通テスト利用入試

2021年度入試(21年4月入学)は大学入学共通テスト元年。その特徴は、浪人の出願者が大幅に減ったことと、私立大の共通テスト方式の志望者が増えていること。これらの動向に深く影響を与えているのはコロナ禍のようだ。

浪人志願者が大幅に減少、現役志願率はアップ

大学入学共通テストの初回の出願が締め切られた。10月14日現在の出願者数は、53万5244人で、20年度のセンター試験確定値との比較で2万2455人減。現役生と浪人生を比べると、現役生は44万9789人で、2446人(0.5%)の減少に留まったのに対し、浪人生は8万5455人で、前年比2万9人(19%)の大幅減となった。代々木ゼミナール教育総合研究所の主幹研究員、坂口幸世氏は言う。

「共通テストを避けるため、20年度入試で駆け込んだ受験生が多かったということ。不本意入学も少なくなかったと思いますが、そもそも共通テストを避けたかったのですから、再受験を考える受験生は多くないのでしょう」

志望度が低い大学に入学し、ミスマッチに気づく学生の中には、在籍しながら捲土重来を期す〝仮面浪人〟が一定数いる。その人数が大幅に減っているようだ。その背景には、コロナ禍もある。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏は、こう話す。

「例年なら春先の模試で腕試しをして受験準備に入るものです。今年はコロナ禍で通常通り模試が行われなかったため自分の立ち位置が分からず、再チャレンジを諦めた学生が多かったのでしょう」

コロナ禍での共通テストは、複数の日程が用意されている。従来の第1日程(1月16日、17日)とコロナ禍で授業が遅れた受験生を救済するための第2日程(1月30日、31日)だ。初回で過去問がない共通テストは、第1日程で傾向が分かることから第2日程が有利という見方もあった。しかし、実際の出願者は、第1日程の53万1118人に対し、第2日程は789人と圧倒的に少なかった。

「予想通りの結果と言えます。第2日程のデメリットは多い。国公立大志望者は出願まで間がないこと。私立大志望者にとってもすでに有名大の入試が始まっており、出願者が極端に少ないのです」(駿台の石原氏)

既存のセンター方式から置き換わる私立大の大学入学共通テスト利用方式(共通テスト方式)の注目度は高い。共通テストを受けていれば、多くは居ながらにして合否が分かるこの方式は、コロナ禍に大学受験のために移動をしたくない受験生にとって利便性が高い。また、コロナで一般方式を受けられない事態の救済措置として、共通テストの成績で合否判定する大学が多いことも要因だ。

試験場に行かずに併願できる共通テスト方式は、国公立大志望者にとっても2次試験対策に集中できるメリットがある。多くの科目を課す共通テスト方式は、倍率が低いことが多いことも有利な点だ。

共通テスト方式は、学習院大と上智大が新規で実施することもあり、センター試験参加大学数を上回る。受験生の選択肢が広がることも、共通テスト方式の志望者の多さにつながっている。

成績上位層の共通テストの平均点は下がらない

ところで、初めて共通テストで気になるのは、問題の難易度。一般的に平均点は下がると言われているが、共通テスト方式にどのような影響を与えるのか。駿台の石原氏に聞いた。

「全体の平均点は下がると思いますが、上位層はしっかり得点できると見ています。問われ方が変わり高い問題文の理解力が求められますが、学力上位の受験生は、問題自体はそれほど難しくないと言います。平均点が下がっても、難関大の共通テスト方式のボーダーラインが、センター方式当時より下がることはないと思います」

では、共通テスト方式の志望状況はどうなっているのか。安全志向や地方から都市部の大学を目指す受験生が減少し、早慶や上智大、東京理科大、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)といった首都圏の難関大では、中央大や明治大など一部の大学を除き、一般方式の志望者が減少。その一方で共通テスト方式は、堅調に志望者が集まっている。

中でも、注目されるのは、一般方式で共通テストと大学独自試験を組み合わせて選抜する大学。早稲田大や上智大、青山学院大で共通テスト方式の志望者が大幅に増えているのだ。

「学部ごとに変わる難関大の独自試験に対応するには大変なので、それらの大学の共通テストのみで合否判定する方式が人気になっているのです」(代ゼミの坂口氏)

一般方式で大半の学部の英語を、共通テストもしくは英語民間試験に置き換える立教大も共通テスト方式の志望者が大幅増。一般方式で共通テストを利用するなら、共通テスト方式も出願しておこうという受験生心理が働いているようだ。準難関グループの日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)も一般方式が減り共通テストが増える傾向にある。

関西の関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は、関西学院大を除き、一般方式と共通テスト方式ともに志望者が減っている。産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)は、首都圏と同様の傾向が見られ、一般方式は減っているが共通テスト方式の志望者が増えている。

中堅大も共通テスト方式の志望者は多い。ただ、難関大や準難関大に比べると、予想される平均点ダウンと連動してボーダーラインも下がると見られている。

共通テスト利用入試 主要私立大71校詳細情報

表の見方
◆一般選抜で共通テストを利用する主な私立大学を掲載した(原則として、2部・夜間主コースなどを除いた)。
◆表中の記号は、以下の内容を表す。☆:他方式の募集人員を含む。*:他方式の結果を含む。○:個別学力試験や面接などを課す。◎:個別学力試験や面接がない場合もある。-:非公表、未発表、次年度入試から新たに実施。または、第2志望合格者を含んでいるため、算出できないものなど。「2次」欄が空白の大学は個別学力試験や面接等を課さない。
◆倍率は志願者数÷合格者数で算出した。
◆表中のデータは結果を除き2021年のもの。
◆新設学部(学科)の情報が反映されていない場合や、名称および募集人員などが変更されることがある。各大学の要項で確認を。

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