緊急事態宣言下の入試にどう向かうか

緊急事態宣言下の入試にどう向かうか

受験シーズンを直撃した緊急事態宣言の再発令。首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大する中で行われる、異例の入試にどう備えるべきなのか検証した。

緊急事態宣言下の入試

新型コロナウイルスの感染拡大は、今年の入試に大きな影響を与えている。今年度は大学入試改革初年度なのだが、それよりもコロナ禍の影響の方がはるかに大きい。そんな中で、大学入学共通テストが実施され入試シーズンが幕を明け、私立大入試も始まっている。

1月7日に1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)、同14日に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡に緊急事態宣言が再発令され、2月7日まで実施される。学校の授業はそのまま、大学入試は行われる。

2月1日から本格的に私立大入試が始まり、緊急事態宣言下での入試実施になる大学も出てくる。人気大学ともなると、何千人もの受験生が1キャンパスに集まる。広大なキャンパスに校舎が点在していれば何の問題もないが、今や学生に人気のビル型キャンパスの大学も少なくない。入口ではかなりな密になることは確実で、感染リスクが高まる。そのため、徹底した予防が必要だ。今年の入試はマスク着用、昼食は自席でとって、友人とも話さないことなどが求められている。試験場の出入りごとにアルコール製剤での消毒、休憩時間には窓を開放して10分以上の換気が行われる。例年よりも寒い中での受験になる。

コロナ禍で強まる地元志向

今年の入試で顕著になっているのが、地元大学への進学志向の高まりだ。感染者の多い東京や大阪などの大学への進学を避け、地元大学を目指す傾向が強くなっている。感染リスクが高まることだけではない。地方から大都市の大学に進学して一人暮らしを始めても、授業はオンライン、アルバイトやクラブ・サークル活動ができず、友達もできないのであれば、大都市の大学で学ぶ意味があまりないと考える受験生も少なくない。特に親は感染リスクがある上に、感染が拡大した時に子どもの下宿に行きにくいこともあって、一人暮らしをさせたくないと考えているようだ。

さらに、追い打ちをかけるのは、1都3県に対する緊急事態宣言で、志望校選びにも影響が出そうだ。代々木ゼミナール教育総合研究所の坂口幸世主幹研究員は「地方の受験生が首都圏の大学を受験する場合には、受験生本人は平気でも、親が止めるケースがあるでしょう。私立大ですと、受験に行かなくてもいい共通テスト利用入試の人気がさらに上がりそうで、地方に限らず首都圏の受験生も、感染拡大に備えて万が一入試が実施されなかった場合を考え、とりあえず共通テスト利用入試に出願しておく受験生が増えたのではないでしょうか」と言う。共通テスト利用入試は首都圏では慶應義塾大、国際基督教大を除き、ほとんどの大学で実施されている。共通テストと出願書類で合否が決まるため、大学に受験に行かなくてよい方式だ。今年から新しく上智大、学習院大でも実施することになった。千葉工業大は、共通テスト利用入試の受験料を、コロナ禍での不況を考慮し今年は無料にした。昨年のセンター試験利用入試は10%ほど志願者が減った方式だが、今年は感染リスクの軽減という観点からも人気がアップしている。志願者は増えそうだ。

さらに、大手の私立大で実施されている全学統一方式の人気も上がりそうだ。これは文系、理系学部がまとまって同じ問題で入試を行う方式で、他の学部・学科を併願できる。一度の受験で、いくつもの学部・学科の合否判定を受けられる。試験場に行く機会が減るため感染リスクが軽減され、注目の方式だ。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)などで実施されている。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は「東京で長期間ホテルに滞在して、大学受験するというのを敬遠する動きが出そうです。共通テスト利用入試や全学統一入試を利用して、滞在期間を短縮する可能性もあります。今年は大学のキャンパスで受ける入試の併願が減るのではないでしょうか」と見る。 

国公立大の入試変更に注意

一方、2月25日から国公立大の一般選抜前期試験が始まる。昨年は北海道大などで、学内に感染者が出たため3月12日実施の後期試験を中止し、センター試験の成績だけで合否を決定した。今年もそうなる可能性は否定できない。東大のように「何が何でも大学独自試験を行う」という大学は少数派だろう。横浜国立大のように、教育学部の一部を除いて、最初から共通テストの成績と出願書類で合否を決める大学もあるほどだ。河合塾教育情報部の富沢弘和部長は「私立大は予定通り入試を実施しますが、国公立大では2月になってからの判断で、横浜国立大のように共通テストの成績だけで合否を判定するなど、入試を変更する可能性があり、面接を中止するところも出てきますから、入試情報には今後も注意が必要です」と言う。横国方式が他大学に広がる可能性も否定できない。となると、共通テストの重みが増しそうだ。コロナ感染症に罹患した受験生への追試は、大手私立大のほとんどで共通テストの成績で合否判定するとしている。

今年の入試は浪人生が減っている上に、少子化で現役受験生も減っている。そうなると、難化するところは少なくなりそうだ。話を聞いた3人の専門家は、「緊急事態宣言が出ても、あたふた、じたばた、右往左往しないのが得策」と口を揃える。代ゼミの坂口さんは「共通テストの出来が芳しくないため、国公立大の志望校を変更してもうまくいかない場合が多い」と言う。対策をとってきた志望校を優先したほうがいいということだ。今まで通り平常心で、健康にだけは注意して、入試に向かっていくことが大切と言えそうだ。

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