【2023年卒実就職率】大学生の実就職率は ほぼコロナ禍前の状況に

コロナ禍でやや湿りがちだった大学生の就職状況だが、2023年卒の大学生の実就職率は回復傾向にあり、コロナ禍前の状況に戻りつつある。そうした状況下における個別大学の実就職率について、規模やエリア別に見ていこう。

文　井沢 秀（大学通信）

実就職率アップとともに就職先に対する満足度も高くなる

コロナ禍でやや停滞した大学生の就職状況が戻りつつある。20年卒から下降気味だった平均実就職率は22年卒で底を打ち、23年卒は前年を1.8P上回る87.8％となった。大学全体の実就職率とともに、大学生の就職先に対する満足度も上がっている。23年卒の大学生の就職状況について、リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は、こう振り返る。

「求人倍率は1.58倍で前年を0.08Ｐ上回り、学生に追い風が吹いていました。ただ、従業員規模300人未満の企業が5.31倍なのに対し5000人以上は0.37倍と、ミクロの視点で見ると追い風とばかりは言えません。それでも、全体として企業の求人意欲が高まっていることから、第一志望群の企業から内定を得る学生が増えたことが23年卒の特徴です」

就職みらい研究所の調査によると、当初からの第一志望群に入社予定の学生は61.5％と過去最高になったという。

個別大学の状況を実就職率ランキングで見ていこう。「卒業生数500人以上、1000人未満」の1位は、昨年の2位から上がった福岡工業大。学生に対する面倒見の良さが高い就職力の一因となっている。2位以下は聖徳大、大和大、岐阜聖徳学園大と、教員養成力に定評がある大学が並ぶ。

「卒業生数1000人以上、3000人未満」のトップ5は、愛知工業大▽福井大▽大阪工業大▽金沢工業大▽名古屋工業大と、工科系大学が数多く並んだ。製造業を中心とした求人の多さに加え、研究や論文執筆などを通して論理的思考力やコミュニケーション能力が身に付いた学生が多いことから、工科系大学はもともと就職力が高かった。近年は、情報化社会の進展とともに、就職対象企業があらゆる業種に広がっていることからさらに強みを増している。

女子大は大学全体の平均実就職率を上回り続けている

今春、相次いで閉学が明らかになった女子大だが、就職という文脈からみる魅力は相変わらず高い。女子大だけで集計した23年卒の平均実就職率は、大学全体を上回る89.6％。女子大が大学全体を上回るというのは、長年続いている構図だ。

このカテゴリーの女子大の最上位は8位の東京家政大。栄養士や教員免許などの資格が取得できる実学系学部が充実している強みがある。東京家政大に続くのは10位の実践女子大。入学前から卒業後までの長いスパンで行う、学生の個性を大切にした個別支援体制「J-TAS（Jissen Total Advanced Support）」を導入し、就職力に磨きをかける。30位以内には、昭和女子大（11位）▽椙山女学園大（12位）▽武庫川女子大（25位）がランクインしている。

「卒業生数3000人以上」の大規模大学では、名城大が3年連続でトップ。理工と農といった就職に強い学部系統の卒業生が多いことが、高い実就職率の一因となっている。2位は就職に強い工科系大学の中でも最難関の東京理科大で、この2大学は9年連続でこのカテゴリーの実就職率ランキングで1位と2位を分け合っている。3位以下は、新潟大、近畿大、青山学院大、関西学院大の順で並んだ。

「卒業生3000人以上」の実就職率ランキングの上位30大学には、京都大（77.6％）、早稲田大（82.5％）、慶應義塾大（84.9％）といった最難関大は入っていない（東大は就職者数未発表）。これらの大学に限らず、難関大は実就職率が高くなりにくい環境にある。というのも、起業や留学、資格試験準備など、多様な卒業後の進路を選択する学生が少なくないからだ。実就職率から大学の就職力をみる際、難関大に関しては大学全体の就職力を示す指標になりにくいという視点も持っていたい。

大学別　実就職率ランキング

●表の見方
表は各大学発表による2023年春の就職状況。
医科・歯科の単科大などを除く全国749大学に調査し、回答のあった564大学のデータをもとにランキングを作成した。
実就職率（％）は、就職者数÷〔卒業生（修了者）数－大学院進学者数〕×100で算出。
同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。大学名横の＊印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
エリア別の実就職率ランキングは、卒業生数300人未満の大学を除いた。
大阪公立大は統合前の大阪市立大と大阪府立大の実績を掲載した。

卒業生数500人以上1000人未満

卒業生数1000人以上3000人未満

卒業生数3000人以上

エリア別　実就職率ランキング

北海道・東北

関東

東海・北陸・甲信越

近畿

中四国・九州・沖縄