大学に進学するにあたり、学費に不安を感じる受験生もいるだろう。そういう時は、JASSO(日本学生支援機構)の奨学金とともに、大学独自の返済不要の奨学金にも注目したい。中には、事前予約をしておけば、合格と同時に給付が決まるものも用意されている。
文 井沢 秀(大学通信)
経済的な理由で大学進学を諦めない
大学で学ぶには、多額の学納金が必要になる。大学通信がまとめた、私立大の初年度納入金の平均は、法・政治系が127万円、理工系が166万円、医学部が744万円などとなっている。国立大は全学部が約82万円だが、文系間の比較では、私立大とそれほど大きな差はない。
このように一般的な家庭にとって、大学進学は経済的な負担が大きい。そこで活用したいのがJASSOの奨学金。貸与型と給付型の2種類の奨学金の内、大学による授業料減免と給付型奨学金を2本柱とする高等教育の修学支援新制度の対象となるのは、住民税非課税及び準ずる世帯収入380万円以下の家庭だが、今、貸与型に比べて給付基準のハードルが高い給付型の利用者が増えている。それだけコロナ禍で困窮する家庭が増えているということだ。ある奨学金アドバイザーは、こう話す。
「世帯収入のハードルが高すぎるという意見もありますが、家計が厳しい家庭にとって有意義な制度。県民所得が低い沖縄の進学校では、島外の私立大進学者数が島内の進学者数を逆転したと聞きます。これは修学支援新制度ができたからです」
修学支援新制度は、大学入学後でも申請できるが、予約採用はすでに締め切られている。これから活用できるものには、入試と連動して成績優秀者に奨学金給付や授業料の減免などを行う、大学独自の奨学金制度となる。もっとも、こうした奨学金の多くは入試の成績優秀者を対象としているため、第一志望大学で給付の対象となるのは難しい。駿台予備学校進学情報事業部長の石原賢一氏は言う。
「経済状況が厳しいのなら、第一志望校の奨学金にチャレンジするといいでしょう。特待生には学費の減免以外にも様々なプログラムが用意され、充実した学生生活が送れます。そうした環境下で学び、有名企業に就職する学生もいるので、第二志望以下の大学でも、活用していいと思います」
大学院まで視野に入れているなら、大学のランクを下げて特待生になり、上位大学の大学院に進学する道もあるだろう。
「全国有名293大学 返済不要!奨学金一覧」には、入試と連動した奨学金制度を持つ大学を掲載した。国立大では、北見工業大やお茶の水女子大、東大、東京工業大、新潟大、広島大、九州大などがある。
全国の主要私大も多くが実施している。北海道から関東では、北海学園大や東北学院大、国際基督教大、芝浦工業大、上智大、中央大、津田塾大、東京女子大、日本大、明治大など。中部から近畿では、金沢工業大や愛知大、愛知学院大、京都産業大、大阪学院大、大阪工業大、関西大、近畿大など。中四国・九州では広島工業大や松山大、九州産業大、福岡工業大、立命館アジア太平洋大などがある。
学費の大幅減免の対象となる多数の奨学生を募集する大学も
特待生選抜のための入試を行う大学も多い。そうした大学の草分けは、1933年から給費生試験を行っている神奈川大。入学金と4年間の授業料の合計額を上回る奨学金を給付。自宅外の学生に対する年間70万円の生活援助金を合わせると、最高で880万円が給付される。
白鷗大は対象者が多く、定員の約3分の1を学費が国立大より安くなる学業特待入試で選抜する。専修大はスカラシップ入試に合格者の4年間の授業料と施設費を免除。東京工科大は定員103人の奨学生入試を実施。合格者に対し130万円の奨学金を最長4年間給付する。東洋英和女学院大もスカラシップ特別入試を実施。スカラシップ生は、2年間の授業料など214万円(22年度実績)を免除され、学業成績が一定基準に達していれば、最長4年間継続される。
入試の成績とは関係なく、合格と同時に給付が決まる方式もある。入学者の地元占有率が年々高くなっている首都圏の有名大では、1都3県以外の学校出身者を対象として、家計などの給付条件を満たしていれば合格と同時に給付される、事前予約型の奨学金を用意する大学が数多くある。
早稲田大の「めざせ!都の西北奨学金」は、家計などの採用条件を満たせば、評定平均値は問わず、学部により45万円から70万円を給付。慶應義塾大の「学問のすゝめ奨学金」も評定平均値は問わず、学部により60万円から90万円が給付される。
MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は全て実施。明治大の「おゝ明治奨学金」は、世帯給与水準の上限を下げた上で、1都3県の学校出身者も対象。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)では、立命館大が2府4県外の学校出身者を対象に、近畿圏外からの入学者を支援する奨学金制度を設けている。関西大の「学の実化入学前予約採用型給付奨学金」は全国の学校が対象で、2府4県からも給与収入の基準を低く設定して募集。関西学院大の「ランバス支給奨学金」は地域制限を設けない。
家計の事情で大学進学を諦めるのは不幸なこと。「全国有名293大学 返済不要!奨学金一覧」を見て志望校が実施しているのなら、ホームページなどで詳細を確認してほしい。
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全国有名293大学 返済不要! 奨学金一覧
表の見方
◆各大学へのアンケートをもとに、一般入試と連動した、大学独自の給付・免除による返還不要の奨学金制度(留学関連を除く)と予約型奨学金制度の内容を掲載。学部名横の〈 〉内は学科名など。2部・夜間部は除く。表中の1都3県は東京、埼玉、千葉、神奈川、東海4県は愛知、岐阜、三重、静岡、2府4県は京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山。
◆入試の成績だけでなく、高校在学時の成績や面接が必要な場合もある。特定の資格取得や競技成績が必要なもの、卒業後の勤務指定があるものは除いた。地域要件は出身者・住所要件など大学により異なり、家庭・収入要件のある場合もあるが、家計急変や被災、疾病を要件とするものは除いた。
◆支給額は原則として給付額で、減免・免除の場合はその旨を記載。金額は初年度の年額で、継続審査等により2年次以降も継続されるものもある。大学によっては参考として2022年度の内容を掲載。詳細は各大学の要項で確認を。
国公立大学

私立大学







※詳細は必ず各大学のホームページなどで確認してください。