近年、国公立大の一般入試の志願者は減少傾向にあるが、2021年度(21年4月入学)もその出願動向は継続。21年度の国公立大入試状況を振り返るとともに、22年度の国公立大入試の動向を展望した。
21年度の国公立大の一般選抜の志願者数は、前年を1万4197人下回る42万5418人と2年連続で減少し、志願倍率(志願者数÷募集定員)は4.4倍から4.3倍になった。もっとも、志願者は減っても国公立大人気が下がったわけではなく、18歳人口の自然減や、翌年の入試改革を嫌い20年度の受験生の安全志向が強まったことから、浪人生が減った影響が大きかったようだ。国公立大人気に加え、大学入学共通テスト(共通テスト)の平均点が20年度の大学入試センター試験(センター試験)の平均点を上回ったこともあり、志願者は大きく減らなかった。
難関大の状況を見ると、旧七帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の志願者は、前年を1197人下回る6万7613人と比較的堅調だった。共通テストの平均点が予想より高かったため、初志貫徹した受験生が多かったと見られる。大学別の志願状況を見ると、東北大、一橋大、名古屋大、神戸大、九州大といった、地元の学校からの志願者が多い大学で増えている。一方、志願者が減少した大学に注目すると、比較的全国から志願者が集まる大学が多く、北海道大、東京大、東京工業大、京都大、大阪大で前年を下回った。難関大全体の出願状況は堅調だが、コロナ禍の影響が垣間見られた。
難関な国公立大医学部(医学科)は、コロナ禍で厳しい医療現場を目の当たりにした受験生の出願動向が注目されていたが、その影響はなく志願者は対前年指数99と前年並み。医学部の志願者は減少が続いてきたが、前期のみの集計では7年ぶりの増加となり、医学部人気が戻ってきた。この背景には、景気動向の不透明さから、トップ層の医学部志向が強まったこともある。
筑波大や千葉大、新潟大、金沢大、広島大、熊本大、大阪市立大などの準難関大は、難関国立10大学より志願者の減少幅が大きかった。中でも横浜国立大は、3392人の大幅減で志願者数は4189人。コロナの影響で大半の学部が共通テストの成績のみの選抜となり2次試験で逆転できないため、共通テストの点数が少しでも足りないと出願できなかったことが要因だ。地方の一般的な国公立大は、コロナ禍の影響を色濃く受け、地元に残りたいと考える受験生が多くなったことから、志願者が増える大学が多く見られた。
次に、学部系統別の志願動向を見ると、理系学部の人気が高く文系学部の人気が低い「理高文低」が鮮明になった。理系学部では前述の医学系とともに薬学系の志願者が増えた。他の理系学部では、看護を含む保健衛生系、管理栄養士養成を含む生活科学系といった、資格が取得できる学部の志願者は前年並み。工学系と農水産系もほぼ前年並みで、歯学系と理学系は減少した。情報工学や総合情報学などの情報系は志願者が増えた。
文系学部では、法学系が大幅減、経済・経営・商学系も減少する中、社会学系は前年並みだった。志願者減が顕著なのは外国語系や国際系で、教員養成系も職場環境の厳しさから減少している。
根強い人気が続くと見られる22年度の国公立大入試
22年度入試では18歳人口が約2万人減少し、浪人生も減少していることから、国公立大人気が続きながらも志願者はやや減少という、21年度と同様の傾向が予想される。ただ、共通テストの平均点次第では、国公立大志願者が大きく減る可能性もある。2年目の共通テストは、センター試験の時と同じように問題が難しくなると見られている。特に数学は大幅難化が確実視されており、平均点が下がると出願動向に大きな影響を与えそうだ。
大学の難易度別の状況を見ると、入試改革など不安要素がありながら、受験生の志望度の高さから21年度の志願者が微減に留まった難関国立10大学は、22年度も前年並みの志願者を維持し、厳しい入試になりそうだ。
一方、難関国立10大学ほど志望度が高い受験生が多くない準難関大は、安全志向から難易度が低い国公立大に流れるケースも考えられ、21年度と同様に、それほど志願者が増えない可能性がある。そうした中、21年度入試で大幅な志願者減となった横浜国立大は、反動による志願者増が確実視されている。
一般的な国公立大は、都市部への移動を嫌う受験生の影響で、地方の国公立大の中で志願者が増える大学がありそうだ。首都圏でも、茨城大や宇都宮大、群馬大など、東京から離れた大学の志願者が増える可能性がある。
学部志望動向は、コロナ禍で経済状況の悪化が見込まれる中、就職に強い理系学部の人気が続きそう。理学・工学系は前年並みから増加、医療系では薬学系の志願者が大きく増えそうだ。特に、コロナ禍でワクチンや治療薬の開発が注目される中、難関大薬学部の人気が高まっている。医学系と歯学系も志願者増が見込まれているので、志望者は注意が必要。保健衛生系の志望者は前年並みとなっている。理系学部では農・水産系の人気がなく、志願者が減少しそうだ。
情報工学と総合情報学といった情報系学部は相変わらず人気が高く、倍率が上がる学部・学科が多くなりそうだ。
文系では、21年度入試で減少した法学系の志願者が増えそうだ。景気動向を気にする受験生の中で公務員志向が強まっている影響と見られている。経済・経営・商学系と社会学系は微減。外国語系と国際系は、21年度と同様に大きく志願者が減りそうだ。教員養成系も相変わらず人気がない。
22年度の国公立大入試の志望状況は、概ね21年度の傾向を引き継ぐことになりそうだ。コロナ禍の不確定要素はあるが、21年度の経験則を生かした進路指導を進めたい。
2021年 著名国公立大学高校別合格者数ランキング
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