“予防”がクローズアップされる時代。歯科医師が地域の健康を支えるー日本私立歯科大学協会

“予防”がクローズアップされる時代。歯科医師が地域の健康を支えるー日本私立歯科大学協会

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健康寿命の延伸や予防医療・地域医療の充実が社会的な課題になっています。さまざまな医療従事者や関連職種が専門性を発揮しているなかで、重要な役割を担うのが歯科医師です。歴史をさかのぼると、日本における歯科医師の養成は私立大学から始まりました。私立歯科大学では100年を越える年月が培ったノウハウと「地域の健康を支える」ことへの情熱が受け継がれ、日本各地で活躍する歯科医師を輩出しています。現在の歯科医師をめぐる社会状況と私立歯科大学が担う役割について、日本私立歯科大学協会の専務理事であり、日本歯科大学生命歯学部教授の羽村章氏に聞きました。

日本私立歯科大学協会専務理事
羽村 章
歯学博士 日本歯科大学生命歯学部教授

日本私立歯科大学協会とは
日本私立歯科大学協会は、日本全国の17の私立歯科大学・歯学部が相集い昭和51年に設立しました。我が国の歯学教育及び歯学研究の振興を図る重要な機関として幅広い事業を行っています。
https://www.shikadaikyo.or.jp
●日本私立歯科大学協会加盟校
北海道医療大学(歯)/岩手歯科大学(歯)/奥羽大学(歯)/明海大学(歯)/東京歯科大学(歯)/昭和大学(歯)/日本大学(歯)/日本大学(松戸歯)/日本歯科大学(生命歯)/日本歯科大学(新潟生命歯)/神奈川歯科大学(歯)/鶴見大学(歯)/松本歯科大学(歯)/朝日大学(歯)/愛知学院大学(歯)/大阪歯科大学(歯)/福岡歯科大学(口腔歯)

―歯科医学とはどのような学問でしょうか。

ひと言で表すなら、口を通して健康を守るための学問であり、その専門家を育成する学問です。具体的には、ご存知の通り歯科医師を育成しています。

歯科医師というと、虫歯の治療をしたり入れ歯をつくったりというイメージが強いかもしれません。しかしそれは歯科医師の仕事の一部分にしか過ぎません。口や歯(口腔)が持つ機能が低下したり、その機能に障害を持つと、食事が摂れなくなるばかりではなく全身の健康も維持できなくなります。話すことにも支障をきたすようになり、人との意思疎通が難しくなります。それは、精神的な悪影響を引き起こします。口腔が健康であることは、心身の健康を支えていると言えるのです。このことにフォーカスしているのが歯科医学だと言えるでしょう。

歯科医学を学んで歯科医師の資格を取得した人の約9割は、地域で活躍する開業歯科医師です。残り1割は、大学教員や病院勤務医、研究者、そして、保健所や公官庁などで働いています。

―地域社会において、歯科医師は大きな役割を担っていると言われています。

まさにそのとおりです。歯科医師は「口を通して健康を守る専門家」と言いましたが、その役割を果たすためには、地域で活動することが非常に重要なのです。

一番大きな役割は、虫歯や歯周病などの口腔疾患予防と、「食べる・飲み込む・話す」などの口腔機能の維持や向上と低下の予防です。歯科医師が常日頃から歯の磨き方や食生活のアドバイスをする意味は、口腔疾患の多くは口の清潔が損なわれることにより発症するためです。また、私たちは何気なく食べ、話していますが、これらは口腔領域の複雑な動きによりなせることです。同じ口腔という器官を使って、あるときは食べ物を噛んで飲み込み、あるときは肺から空気を送り出して声にしているのです。これをスムーズに体得できるように、離乳食から通常の食事への移行や、それらの時期に応じた口腔の健康維持・向上の指導を行うのが歯科医師です。さらに、高齢になると噛む力や飲み込む力が衰えます。そのようななかで安全に食事をし、確実に栄養を摂取できるように指導するのも、歯科医師の役割です。

これらの活動はすべて、患者の日々の暮らしのすぐそばで行う必要があります。そのため、歯科医師の活動の舞台は地域になるのです。別の言い方をするなら、歯科医師は、地域住民の健康増進や病気の予防に軸足を置く一次医療を担っているのです。高度で先端的な医療を提供する三次医療は大学病院などの病院歯科が中心に担っており、それらの施設に所属する口腔外科医が口腔がんなどの治療を行っています。このことは、地域と歯科医師の関係性を象徴的に表しているとも言えるでしょう。

全国の歯科医師の長年の努力のかいがあって、最近では虫歯に悩む子どもが随分と減ってきました。出産前・後のお母さんや子供たちへ、地域の開業歯科医師が行う口腔健康教育が成功しているといえます。また、口腔がんだけでなく全身のがん治療や全身麻酔の手術時などには、口腔の清潔や機能を維持向上することが、がんの治療効果を上げ手術後の治癒を早くすることが分かっています。疾患治療の担当医と地域住民の口腔健康管理を担当する歯科医師の連携が必要とされているのです。これらは一例ですが、地域に根差して活動する歯科医師の存在が不可欠です。

―私立大学の歯学部で学ぶことの魅力について教えてください。

現在につながる医師と歯科医師に関する制度が日本でできたのは、1906年のことです。医師・歯科医師の業務などを定める法律と同時に、養成機関に関する法律が制定されました。当時は富国強兵の時代です。医療は富国強兵に直結するという政府の考えにより、すぐに官立の医師養成機関が設けられました。現在の国立大学医学部です。ところが歯科は富国強兵には直接関係しないと判断され、官立の歯科医師養成機関は設けられませんでした。しかし歯科医師養成の重要性を強く認識していた先人たちは、政府の力を借りず、自らの力で養成機関を設立しました。これが日本における近代歯科医学教育の始まりです。1907年のことで、日本の歯科医師養成は私立から始まったのです。国立の歯科医師養成機関が設けられたのはその21年後で、現在も歯学部の数は国立よりも私立のほうがはるかに多いです。

このような歴史的経緯もあって、私立大学歯学部には豊富な教育ノウハウが蓄積されています。卒業生も圧倒的に私立大学出身者が多く、開業歯科医では75%を私立大学の卒業生が占めています。卒業生である開業歯科医とのつながりは、学びや研修、就職など、さまざまな場面で現役生をサポートしてくれます。

前述のとおり、歯科医師は地域が重要な活動の舞台です。地域に貢献できる歯科医師になるためには、在学中から地域で学ぶ必要があります。ここで役立つのが、私立大学歯学部の持つ臨床教育施設です。多くの私立大学歯学部は、附属病院やクリニックで地域に根ざした歯科医療を実践しており、学生はこれらの施設を舞台にして実践的に学ぶことができます。これらの施設にいる歯科医師は大学の教員という側面も持っていますので、学生の習熟度合いや悩み・不安に寄り添い、個別に的確な指導を行うことができます。これらの要因が積み重なり、「地域の歯科医療をめざすなら私学で」と言われるまでになっています。

―歯科医師になるにはどのような勉強、プロセスが必要でしょうか。

よく知られているように、歯学部など専門の教育課程で6年間学び、国家試験に合格する必要があります。合格後は1年間の研修期間が設けられています。医師は2年ですから、歯科医師のほうが学びの期間は少し短いです。

もう少し詳しく説明しましょう。まず大学に入学すると、基礎医学教育を受けます。そのうえで臨床教育があり、その後に病院実習があります。特徴的なのは、病院実習の前と後に共用試験が行われることです。共用試験は大学単独ではなく医療系大学間共用試験実地評価機構により行われる試験で、病院実習前の試験では、実習を行うにふさわしい技術を確認する臨床模擬試験と知識が問われるCBTが行われます。そして実習後の試験では、実習によってしっかりとした知識・技術を身につけたかが問われる実地試験が行われます。この試験をクリアしてはじめて、国家試験を受験することができます。他の医療系職種もそうであるように、歯科医師への道のりは年々ハードルが高くなっています。それだけ、知識も技術もしっかりとした歯科医師が求められているという意味でもあります。

「手先が器用じゃないと歯科医師にはなれませんか」という質問を受けることがあります。これに関しては、心配いりません。たとえ入学時にはうまくできなくても、在学期間を通じて必要な技術を習得するための努力ができる人であれば大丈夫です。また、最初にお話ししたように、歯科医師免許を持った人は臨床歯科医師以外の職種でも活躍しています。手先の器用さに不安がある人は、免許の取得後にそういった道を目指すことも可能です。

学費が気になる人もおられるかもしれません。歯学部を持つ私立大学は大学ごとに、さまざまな奨学金制度を設けています。成績優秀者は学費が減免される特待生制度もあります。ぜひ各校の情報を調べてみてください。

―専門的な知識・技術に加えて、歯科医師として大切な素養は何でしょうか。

コミュニケーション能力です。一次医療を担う地域の歯科医師は、患者さんやその家族と話す機会が圧倒的に多いです。人間関係を築き、本音を引き出したり生活習慣の改善に導くには、スムーズかつ相手の真意を汲み取ることができるコミュニケーションが欠かせません。虫歯をはじめとした口腔疾患は、重症化すると著しく生活の質を低下させるにもかかわらず、患者さんはなかなかリアリティーをともなって受け止めてくれません。なぜなら、命に関わることや、入院が必要になることはほとんどないからです。結果、歯科医師の指導を聞き流されてしまうことも少なからずあります。このような現実のなかでも粘り強く指導を行い、成果を出していくことが歯科医師には求められているのです。そこで各大学では医療コミュニケーションや地域医療・在宅歯学の授業を設けています。また、実習ではコミュニケーション能力の重要性を実体験できるようにしています。

―高校時代に心掛けておくと、歯科医師になったときに役立つことはあるでしょうか。

歯学部の入試は理系科目が中心ですが、それ以外の科目にも目を向けておいてほしいです。医師も歯科医師も、「大学に入ったら文系」とよく言われます。患者さんとコミュニケーションを図ったり、治療内容を記録に残したりする仕事内容が文系の学びに通じるものがあるからです。ですから、文章を読んだり書いたり、社会のことを幅広く学んだりという高校時代の学びは、歯科医師になってからきっと役立ちます。

人とのつながりを大切にすることもおすすめします。友だちや先生、部活動での仲間との付き合いは、社会に出てから大きな財産になるはずです。

―高校生へメッセージをお願いします。

最近、「歯科医師が多すぎて余っている」「歯科医師は実は低収入だ」という話を耳にすることが増えています。しかし、実際はまったく違います。就職率は100%です。そして、しばしば報告されている求人情報から得られる歯科医師の収入は、歯科医院経営者が多い歯科医師全体の収入を正確には表してはいません。安心して歯科医師を目指してもらいたいと思います。

近年、女性の歯科医師が増えてきました。患者さんや家族とコミュニケーションを図りながら、地域に根ざして住民の健康を支えるという仕事内容は、女性が能力を発揮しやすいのかもしれません。基本的に当直がないため、結婚・出産後も続けやすい仕事だと言う女性歯科医師もいます。それに、歯科医院でともに働く仲間である歯科衛生士は、99%が女性です。女性歯科医師がもっと増えることで、歯科医師も歯科衛生士も今以上に働きやすくなるかもしれません。ぜひ、女性のみなさんにも歯科医師を目指してもらいたいです。私たちはそのための環境整備に努めてまいります。

歯科医師は地域での健康教育などさまざまな役割を担っています。対象は子どもから成人、高齢者まで幅広いです。1人の患者さんを何十年にもわたってサポートし、一緒に歳を重ねていくことも歯科医療の特徴の一つです。歯科法医学や口腔病理といった、専門性の高い仕事を目指すこともできます。歯科医師を志すことで、きっと自分なりのやりがいを見つけ、充実した人生を送っていくことがきるはずです。みなさんとともに学べることを楽しみにしています。

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