東京工芸大学が創立100周年 テクノロジーとアートの融合による特色ある教育を加速

東京工芸大学が創立100周年 テクノロジーとアートの融合による特色ある教育を加速

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写真教育を原点に発展してきた東京工芸大学が、2023年に創立100周年を迎えた。テクノロジーとアートを融合させ、産業に直結した学問分野を時代に合わせて切り拓いてきた同大からは、各時代の最先端のメディアで活躍する人材が数多く輩出してきた。工芸融合を軸に進化を続ける現在の教育の特色や強みについて、吉野弘章学長に話を聞いた。

取材・文 松平信恭(大学通信)

―東京工芸大学は日本で最初の「写真」の高等教育機関として、1923年に設立されました。当時の教育と現在の学びには、どんなつながりがあるのですか。

写真は当時、最先端の情報メディアでした。写真を撮るためには、カメラやレンズの難解な構造や、薬品の調合方法など、多くのテクノロジーを学ぶ必要がありました。他方、撮影された写真は絵画と同様に、ポーズや光の当て方、画面構成の意味など、アートとしての理解が求められます。

本学はテクノロジーとアートを「融合」した教育により、社会に役立つメディアを扱える人材を育成し、社会に貢献していこうという建学の精神の下で発展してきた大学で、それは今日まで変わることなく受け継がれています。芸術学部で扱うのは、絵画や彫刻などの伝統的な美術とは異なる、写真、映像、デザイン、インタラクティブメディア、ゲーム、マンガ、アニメーションといった「メディア芸術」であり、これらは最先端のメディアや技術を通じて広く人々に楽しまれています。本学で学ぶのは、建学の精神に直結した「文化」でもあり「産業」でもある芸術なのです。

情報教育に力を入れる工学部に関しても、社会を動かす情報メディアが写真からコンピューターやネットワークへと広がっていくのに伴い、教育を発展させてきました。今年から本学ドローンサイエンス研究会が「AUTC東京工芸大学ドローン・サイエンス研究会支部」として登録講習機関活動を開始するのもその一例です。ドローンは人間が見られない視点から映像を集められるのが大きな利点であり、建物の劣化や畑の植物の生育状況といった画像情報の新しい収集方法として、今後の社会で重要な役割を担うのは間違いありません。集めた画像情報の解析は、100年の歴史の中で「写真」という情報メディアを発展させてきた本学にとって、ルーツに直結した強みとなる研究分野です。いずれの学部も写真を原点として研究領域を広げてきたということは、非常に筋が通った大学だと言えるのではないでしょうか。

―分野融合的、かつ実践的な教育も盛んに行われていますね。

大学名の「工芸」という言葉からは伝統工芸品などが想起されがちですが、実は工芸とは、明治時代に使われ始めた「工業技術」と「芸術」を融合した新しいものを指す言葉です。本学の英語名「Tokyo Polytechnic University」を見るとよく分かりますが、本学の大学名には「テクノロジーとアートの融合」という建学の精神が強く表現されているのです。

昨今は文理融合の学びが注目を集めていますが、本学はもともと技術と芸術の融合から出発した大学です。純粋に工学的な、あるいは芸術的な研究をしている教員もいますが、「工芸融合」というスピリットを出発点とした研究や教育をしているという点は共通しています。

工芸融合教育の一例が、学生が学部を超えて共同研究に取り組む「Co-G.E.I.チャレンジ」や、実際にマンガや建築模型などの制作活動を行う「マンガ工房」「模型工房」といった工芸融合科目です。本学の特色の一つに、実習や制作の機会が多く、教員と学生が一緒にものづくりへ取り組む文化があることが挙げられます。「研究者」に加え「クリエイター」の側面を持つ教員が多く、「未来の業界を一緒に盛り上げてくれる人を育てる」という思いが強いからか、学生と教員の距離が近く一体感があるのです。

だからこそコロナ禍でオンライン授業となった際には、実習や実験科目に工夫を凝らしました。今はその経験を生かして、より合理的に学べる大学へと進化しています。これからはキャンパスで存分に実習や制作に取り組みながら学んでいってほしいですね。

―100周年を記念した取り組みなどはありますか。

工学部は24年に、情報学系、工学系、建築学系の3学系へと再編を行います。これまでと同様に1年次に基礎を学ぶ準備期間を経て、2年次のステップアップ期間でコース変更が可能というような、フレキシブルな履修体系は維持しつつ、情報処理教育や工芸融合科目などさらに特色ある教育に力を入れていきます。情報学系では、昨今社会で重視されている顔認識や画像解析、AIによる画像生成といった本学の得意とする「画像関係のテクノロジー教育」に対して、特に力を入れていきます。

芸術学部は100周年にあたって、19年に一元化された中野キャンパス全体を「メディア芸術」の拠点として、情報発信や地域との交流を強化していきます。メディア業界の企業が集まる環境で学べることは、学生にとても良い影響を与えています。

そのほか、11月には東京都写真美術館で「創立100周年記念展」を開催します。本学のこれまでの歩みを紹介するほか、工学部と芸術学部の学部を超えた共同研究による成果をアート作品としてお見せしたいと考えています。たとえば色素の研究を行う工学部の教員は、芸術学部の映像の教員と組んで、研究成果を映画として発表する予定です。

高い就職率へ結実する専門領域に直結した学び

―理系もクリエイティブなセンスが求められ、文系にもデジタルのスキルが求められる時代です。そうした人材には高いニーズがあります。

本学は就職も強いのですが、それは工学部と芸術学部がいずれも「発想力を持った、産業に直結した人材」を育成しているからだと考えています。就職率は工学部が97.0%。芸術学部も94.3%と、芸術系では突出した高さです。

保護者や高校の先生の中には、大学でマンガやアニメーション、ゲームを学ぶことを趣味の延長のように心配される方もいらっしゃいます。ただ、これらの分野は今の日本が誇る世界的な産業であり、市場規模も非常に大きい。また、AIが進化したことで人間の仕事が奪われてしまうとも言われますが、本当に新しい発想や技術は人間が生み出すものです。たとえばAIが新しい芸術をつくれるといっても、それは過去の芸術を集め、一番良いところを抽出しているに過ぎません。「工」と「芸」が融合した本学での学びは、必ずやこれからの時代を生きるための力となることでしょう。

―最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

本学は専門領域に強い大学ですが、一つの専門のことしかできないスペシャリストを育てているわけではありません。専門について自分で考え、問題を解決していく能力を身につけることで、あらゆる分野でその方法を応用して課題解決ができるようになります。自ら情報を分析し、考え、クリエイティブな発想で物事に対峙できれば、社会が変わっても生き残っていけます。ぜひそうした意識を持って大学を選んでほしいと思います。

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