経済的困窮で大学進学を諦めない返済義務のない給付型奨学金制度

経済的困窮で大学進学を諦めない返済義務のない給付型奨学金制度

学生のための様々な奨学金や就学支援新制度

大学で学ぶ強い意志があるのに経済的な理由で叶わない学生救済のため、奨学金や就学支援新制度の整備が進む。様々な学生支援の制度の中から、入試と連動して給付される、返済不要の奨学金制度を見ていこう。

JASSO(日本学生支援機構)の「平成30年度学生生活調査結果」によると、大学生の47.5%が、JASSOをはじめとした、何らかの奨学金を受給していた。この傾向は、コロナ禍における家計の急変などでより強まっていると見られ、大学生活を送る上で奨学金の重要度が増している。

入学前段階の受験生に対する奨学金制度も充実しており、大学やJASSO(日本学生支援機構)はもちろん、自治体や企業なども、貸与型や返済義務のない給付型奨学金制度を設けている。2022年度入試(22年4月入学)に臨む受験生用の奨学金の多くは申請が締め切られている。しかし、一般選抜の成績と連動した大学独自の奨学金なら受給が可能だ。

日本全国の大学が用意する給付型奨学金制度

国公立大では、北見工業大や東大、新潟大、信州大、広島大、九州大など。私立大では、東日本の北海学園大や東北工業大、聖徳大、亜細亜大、上智大、東京理科大、鶴見大・歯学部。西日本の金沢工業大や岐阜聖徳学園大、愛知大、大阪工業大、近畿大、広島工業大、西南学院大、福岡工業大などがある。

このように、入試と連動した給付型奨学金制度を持つ大学は日本各地にある。多くは、奨学金の給付額は高額だが、採用者数が少ないため、入試のハードルが高く、第一志望校の奨学生になるのは難しい。奨学金アドバイザーは、こう話す。

「社会の高度化に伴い、修士まで進んで社会に出る傾向が強まると見られます。第一志望の大学ではなくても、奨学金を受給しながら余裕をもって大学の勉強に打ち込み、第一志望だった大学の大学院に進むという将来図を描くのも一つの考え方です」

特待生を選抜するための特別入試を行う大学もある。中でも白鷗大は募集定員が多く、定員の約3分の1を学業特待入試で募集。学業特待生の学費は国立大と同程度になる。東京工科大は奨学生入試を実施。定員は103人で、合格者には130万円の奨学金を最長4年間給付。スカラシップ特別入試で48人のスカラシップ生を募集する東洋英和女学院大は、2年間分の授業料など214万円(21年実績)を免除。最長で4年間、428万円が免除される。

これらの大学以外にも、スカラシップ入試合格者の授業料等を免除する専修大や、給費生試験の合格者に対し、授業料免除に加え生活援助金を給付する神奈川大などが特待生入試を実施している。

合格と同時に給付が決まる事前予約型奨学金制度

近年は、首都圏や近畿圏の難関・有名大を中心に、入試の成績上位でなくても、事前に採用候補者となっていれば合格と同時に奨学金が給付される、事前予約型奨学金制度が増えている。地元の学生の占有率を下げることを主目的に、首都圏なら1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)、近畿圏なら2府4県(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)以外の受験生を対象に行う事前予約型奨学金制度の給付額は、成績上位者を対象とした奨学金より少ないが、合格すれば成績に関係なく給付が決まるため、第一志望大学の奨学金を獲得しやすい。

事前予約型奨学金の中でも規模が大きいのは、早稲田大の「めざせ!都の西北奨学金」の1200人。採用条件を満たせば評定平均値は問わず、年間給付額は学部により、45万円から70万円。慶應義塾大の「学問のすゝめ奨学金」も評定平均値を問わない。採用候補者は550人以上で、学部により60万円から90万円が給付される。

MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は全大学が実施。明治大の「おゝ明治奨学金」は、給与収入の条件は厳しくなるが、1都3県の出身者も対象となる。関関同立では、関西大、関西学院大、立命館大が実施。関西大は2府4県の給与収入を低く設定して全国の受験生対象の「学の実化入学前予約採用型給付奨学金」を実施。関西学院大の「ランバス支給奨学金」は、地域の制限を設けない。

合格すれば給付が決まる事前予約型は、都市部の受験生も含め、戦略的に使える奨学金制度。早稲田大や慶應義塾大など、給付額を変更した上で「高等教育の就学支援新制度と併用できるケースがあるので、志望大学の状況は押さえておきたい。

20年度に導入された高等教育の就学支援新制度は、住民税非課税及び準ずる世帯収入380万円以下の家庭を対象に、大学による授業料等の減免制度とJASSOによる給付型奨学金の拡充を図るもの。新入生を対象とした申請は終了しているが、入学してからでも申請可能だ。

「修学支援新制度は、入学後の秋採用になると年収制限が460万円に上がります。これにより受給対象になることもありますので、入試プランに組み込んでおくといいでしょう」(奨学金アドバイザー)

入学後の奨学金制度も視野に入れつつ、目の前の入試に連動した奨学金の可能性を探してほしい。

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