コロナ禍で大学生の就職状況が厳しくなる中、女子大の就職力に期待が高まる

コロナ禍で大学生の就職状況が厳しくなる中、女子大の就職力に期待が高まる

女子大の就職の強さ

就職活動における女子学生不遇の時代を乗り越えた女子大の就職力は高く、女子大全体の平均実就職率は常に大学全体を上回っている。コロナ禍で厳しさが増している大学生の就職戦線において、女子大に進学する意義は大きい。

同じキャンパス内に多様な学部があっていろいろな授業が取れ、交友関係の広がりが期待できる総合大学の人気は高く、女子の総合大学志向が強まっている。しかし、女子大には総合大学にない魅力がある。例えば、異性を意識しなくてよい就学環境やコンパクトにまとまったキャンパス、女子大特有の面倒見の良さなど、様々な要因が考えられるが、中でも就職の強さは女子大の大きな魅力になっている。

全般的に女子大の就職率は高い。大学通信が医学部と歯学部の単科大学を除く全大学を対象に行っている就職状況調査(2021年7月20日現在)によると、、大学全体の平均実就職率が85.4%なのに対し、女子大だけの集計では、87.2%と1.8ポイント上回っている。次頁の「平均実就職率の推移」を見ると、近年この傾向が続いていることが分かる。リーマンショック以降、大学生の実就職率が最も落ち込んだ10年においても、女子大は全体を上回っていたのだ。

女子大の就職率が高い背景には、1986年の男女雇用機会均等法の施行以前、女子学生の就職が厳しかった頃に蓄積された、丁寧で面倒見の良い就職支援が今に受け継がれていることが挙げられよう。

教員養成、家政など資格系学部が実就職率をけん引

就職力が高い女子大の中でも上位の大学はどこか。左の21年卒の「女子大の実就職率」は、卒業生500人以上の女子大の実就職率を一覧表にしたもの。最も高いのは聖徳大(96.3%カッコ内の数値は実就職率、以下同じ)。就職に強い女子大の特徴の一つに、保育士や幼稚園・小学校教員免許、栄養士など、就職に有利な資格が取得できる学部の充実がある。聖徳大は、6学部中、教育、心理・福祉、人間栄養、看護の4学部が資格系。特に幼保の教員養成実績が高く、幼稚園教諭就職者が8年連続、保育士就職者は15年連続で全国1位となっている(いずれも2020年までの実績)。

ノートルダム清心女子大(94.6%)には人間生活、児童、食品栄養の3学科からなる人間生活学部がある。東京家政大(92.6%)は、児童学科と栄養学科を持つ家政学部や教育福祉学科を持つ人文学部、子ども学部の3学部に加え医療系の健康科学部があり、就職に強い学部が揃っている。表中には、管理栄養士国家試験合格者数ランキングで全国1位の常連となっている女子栄養大(89.8%)も入っている。

表の見方
◆表は各大学発表による2021年の就職状況。
◆アンケートに回答のあった大学のデータをもとに作成。卒業者数500人未満の大学は除いた。
◆実就職率(%)は、就職者数÷〔卒業(修了)者数-大学院進学者数〕×100で算出。
 設置の※印は国立、◎印は私立。大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
◆データに一部の学部・研究科を含まない大学がある。

卒業生1000人以上の女子大で11年連続実就職率トップの昭和女子大

近年、ビジネス系学部を開設し、就職で結果を残している女子大が増えている。卒業生が1000人以上の女子大中、11年連続で実就職ランキングトップを続ける昭和女子大(92.9%)には、グローバルビジネス学部がある。ビジネスデザインと会計ファイナンスの2学科からなり、グローバルに活躍できるビジネス人材を養成している。

安田女子大(91.9%)は、ビジネスに関する専門知識や技術を学ぶ、現代ビジネス学部を設置している。ビジネス系を含む社会科学系は、女子大には少なかった学部系統だが、こうした学部を設置し就職に対する意識の高い学生が多く集まることにより、高い就職実績を上げている大学が多くなってきている。女性のビジネス人材を養成する学部を持つ大学には、「人を知り、社会を知り、ビジネスを学ぶ」をモットーとする人間社会学部がある実践女子大(90.2%)、マネジメントの視点を養い、社会で幅広く活躍する女性を養成するマネジメント学部を持つ跡見学園女子大(87.2%)などがある。

一昔前は花嫁修業の場ともいわれた女子大。ビジネスで通用する力を身に着け、実就職率という形で証明していることは、社会に有用な人材を送り出す現在の女子大の立ち位置を物語る。20年には武庫川女子大(90.7%)が経営学部、共立女子大(87.4%)がビジネス学部を設置しており、今後の就職状況が注目される。

このように、資格取得やビジネス人材の養成など、就職に強い学部が大学全体の実就職率を支える傾向にあるが、そのベースには、キャリアセンターと教職員が連動した丁寧な就活支援など、女子大ならではの充実した取り組みがあることは間違いない。

コロナ禍の影響で実就職率が下がる女子大が数多く

もう一度、平均実就職率の推移のグラフを見てほしい。21年卒の大学の平均実就職率は大きく下がり、全体が3・3P、女子大は4・3P下がっている。一因となっているのは、求人倍率の低下。リクルートワークス研究所が発表している21年3月卒の大学生の求人倍率は、1.53倍で前年を0.3P下回っている。もっとも、15年並みの水準は維持しており、この状況を就職氷河期の到来という識者はいない。航空や観光、サービス業の募集が低迷した一方、情報系など求人を増やした業種もあったからだ。採用が低迷した業種を志望する女子が多いことから、全体より女子大の実就職率の下がり幅が大きくなっている。

表中の女子大の状況を見ると、前年と比較可能な大学の大半で実就職率が下がっている。そうした中で実就職率が上がった大学には、聖徳大、甲南女子大(90.8%)、跡見学園女子大の3大学がある。中でも跡見学園女子大は2Pと上がり幅が大きかった。

大学生の就活環境は大きく変わってきており、就活のガイドラインが撤廃され通年採用もいわれる。AIに代表される情報技術の発達による事務系職員の削減は、すでにメガバンクなどで起きており、コロナ禍の影響で大学生の就活環境が大きく変わった。そうした中で、就職における女子学生不遇の時代を乗り越えた女子大の就職支援力にかかる期待は大きいといえよう。

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