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1949年に経済学部経済学科の単科大学として開学した武蔵大学は、3学部8学科を擁する文系総合大学へと発展。「ゼミの武蔵」として4年間必修のゼミ教育を重視しながら、グローバル教育にも力を注いできた。学園創立100周年を迎える2022年には国際教養学部を新設し、名実ともに「ゼミ」と「グローバル」を双璧とした教育が実現する。そこで、同大の新たな取り組みと今後の展開について山㟢哲哉学長に伺った。また、国際教養学部の特徴について、同学部長に就任予定の東郷賢教授に話を伺っている。(https://univpressnews.com/2021/08/13/post-7886/)
山㟢哲哉学長
早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得退学。早稲田大学助手などを経て1991年に武蔵大学に着任、2000年教授。社会学部長、教務部長などを経て、2014年に学長就任。専門はジェンダー論、若者文化論、社会学理論。
4年間必修のゼミを軸に徹底した少人数教育を推進
―まずは武蔵大学の魅力についてお聞かせください。
武蔵大学は、入学定員120名の単科大学としてスタートしました。背景には少数精鋭主義があり、少人数でのゼミナール教育を重んじる姿勢は現在まで受け継がれています。また、教員は開学時から経済学の研究者に限らず、自然科学や人文科学まで幅広く在籍し、経済学のエキスパート育成ではなく、幅広い教養を備えた人材を育成しようという、旧制武蔵高校時代から続くリベラルアーツを志向する伝統がいまも続いています。
その後、人文学部、社会学部が開設され、3学部すべてにおいて1年次から4年次の卒業論文まで丁寧に指導できる少人数制のゼミを重視してきました。
ゼミでは指導教授制を採用し、学生は学業以外でも困ったことがあれば自由に相談でき、教員も親身に対応します。オフィスアワーに限らず活発にコミュニケーションする機会があるため、学生と教員の距離が近いアットホームな雰囲気があります。
―近年はグローバルプログラムも充実している印象です。
まず、2015年にスタートした経済学部の「パラレル・ディグリー・プログラム(PDP)」は、武蔵大学のキャンパスにいながらイギリス・ロンドン大学のカリキュラムを履修でき、ロンドン大学の経済経営学士号を取得できる日本初のプログラムです。授業はすべて英語で行われ、履修要件はIELTS 5.5以上。数学力も必要です。卒業生はグローバル企業や官公庁、シンクタンクなどへの就職のほか、国内外の大学院への進学実績もあります。このPDPを皮切りに本学のグローバル教育は一気に加速し、2017年度には人文学部で特訓型の語学プログラムである「グローバル・スタディーズコース(GSC)」を、社会学部では現代の世界共通語であるデータと英語を学ぶ「グローバル・データサイエンスコース(GDS)」を開設し、グローバル教育を全学的な取り組みへと広げました。
GSCの卒業生は海外展開する企業や教育機関、官公庁やマスコミなどグローバルなコミュニケーション力を生かせる場へ多く進んでいます。またGDSもグローバル企業や官公庁のほか、データサイエンスの力を生かせるIT企業への就職実績があります。
2022年春に国際教養学部を新設
―新設される国際教養学部の概要をお聞かせください。
国際教養学部はPDPとGSC〔英語プログラム〕を組み込んだ学部です。ただし、単にPDPとGSCを“移行”するのではありません。詳細は東郷先生に話していただきますが、国際教養学部の独自性として、例えば日本語がまったく話せない教員も少なくないため、教授会などの会議はすべて英語で行います。当然、職員にも英語力が求められますので、学園全体で英語の普及が進むことになるでしょう。また、秋入試の導入も視野に入れ、準備を進める予定です。
国際教養学部は小規模ながらもグローバル色が豊かな学部ですし、他学部にも好影響を与えることで、より充実した教育環境へと大学全体がレベルアップしていくはずです。
既存3学部に新たな展開 全学的な副専攻も導入
―既存3学部のカリキュラム改定のほか、さらに新たな展開もあるようですね。
経済学部では2022年度から「海外インターンシップ」と「グローバル企業研究」という科目を設置します。「海外インターンシップ」は、アジアを中心とする海外の現地企業で実践的なマーケティング活動に挑み、異文化理解を深め、海外で活躍するための基礎を養うものです。「グローバル企業研究」では、海外展開を行う企業の課題解決策について、学生がチームでプレゼンテーションを行います。グローバル企業への理解を深め、世界基準の思考力や協働力を磨くことを目的としています。また、こうした海外での経験を帰国後の学びに効果的にリンクさせるプロセスも想定しています。
一方、人文学部では「グローバルチャレンジ(GC)」という名称で、英語やドイツ語、フランス語、中国語、韓国/朝鮮語の運用能力を徹底的に鍛えるプログラムを新設します。さらに、言語別・地域別の縦割りで学ぶだけでなく、グローバルに“横ぐし”を刺して俯瞰的に学ぶ「グローバルヒューマニティーズ(GH)」も新設します。
その他、学生が所属学部にとらわれることなく、自由に履修できる3つの副専攻もスタートします。まず「アントレプレナーシップ副専攻」は、起業を視野に入れて経営の実践力を養うものです。また「エコノミクス&マネジメント副専攻」は、国際教養学部の経済経営学専攻の科目を軸に、国際経済と企業のあり方を英語で探究します。「グローバルスタディーズ副専攻」も国際教養学部と連携し、グローバル市民として持つべき知見と高度な英語運用能力を身につけるプログラムです。
これらの副専攻プログラムは、本学のリベラルアーツ志向を体現すべく、今後10専攻程度まで拡充する予定です。
―最後に、受験生へメッセージをお願いします。
新学部のスタートとともに、既存学部の学びや施設面においても、より充実した学習環境を整えていく予定です。また、小規模ながらもこれまで以上にグローバルかつ個性豊かな学生の集まる大学にしていきたいと思っています。
今回の新型コロナウイルス感染症対策を例にすれば、一国単位での問題収束は困難ですし、ワクチンを海外から調達するための交渉力をはじめ、グローバルスキルを駆使して世界と協調していく必要があります。要はグローバルな素養がなければ、人々は生きていけないということです。だからこそ、グローバルな視点と語学力、多様性を受容し尊重するための幅広い教養を、ぜひ本学で身につけてくれることを期待しています。