人権問題を解決に導く人材を育成する法学部ヒューマンライツ学科を新設-青山学院大学

人権問題を解決に導く人材を育成する法学部ヒューマンライツ学科を新設-青山学院大学

*2022年4月設置届出中

青山学院大学法学部は、2013年度にビジネス法、公共政策、司法、ヒューマン・ライツの4コースを設置した。このうちヒューマン・ライツコースは同学部の特徴的な学びとして、国内外における人権問題の解決に向け、学生が目的意識を持って学びを深められるカリキュラムを展開。2022年度には、このコースでの学びを本格的に学科として展開する見込みだ。⼈権をめぐる問題が多様化・複雑化するなか、救済⼿段としての法制度の機能を理解し、具体的なアクションにつなげるヒューマンライツ学科の学びについて、法学部長の申惠丰しんへぼん教授に話を聞いた。

問題意識を持つことで目的意識も明確になる

―ヒューマンライツ学科の設立背景や意図を教えてください。

まず、ヒューマン・ライツコースを立ち上げた背景に、条文ありきで人権に関わる学説や判例に触れて法解釈の仕方を学ぶ従来のスタイルでは、現実の人権問題に実感を持って向き合いにくいという側面がありました。そこで、現実を直視することに重きを置き、実際の人権問題にどう法を活かすのか、問題解決能力という観点からアプローチできる環境を整えました。

ここからさらに学科としての本格的なカリキュラムを整えたのは、人権侵害が絶えない現代社会においてリーガルマインドを発揮し、喫緊の課題である人権問題の解決や改善のために法の知識を活かせる人材を輩出したいと考えたからです。世界共通の価値として人権意識を大切にし、問題解決に資する人材を育てたいのです。

―具体的にどのような科目を設置するのでしょうか。

1年次には、ヒューマンライツ学科独自の必修科目として「ヒューマンライツの現場」を設けます。人権問題に関わるドキュメンタリー映像を見たり、人権侵害に苦しむ当事者の生の声を聞いたりしたうえで、法の役割を考える科目です。例えば沖縄の基地問題や戦争・紛争における民間人の被害、過労死などさまざまな問題について、グループディスカッションを行います。まずは問題意識を持つことからスタートし、同性婚や選択的夫婦別姓といった現実に対して法が不十分な問題なら、新たな法整備や法改正の必要性も含めて模索し、検討します。社会が急速に変化するなか、現実の問題に対処するための立法が必要な場面も多いのです。

その際、教員が一方的に教えるのではなく、学生同士で「なるほど」「勉強になった」「気づけた」といった相互作用が生まれる学び合いを重視します。教員は知識を与えつつ、学生の議論を促し、深めさせる役目を担います。学生は議論をすると、自分とは違う意見の存在に気づき、意見が分かれた場合には、社会に出ればより多様な意見があることを想像できるでしょう。自分とは相反する意見の人に対して説得力を持って説明することの大切さや、その力を身につけることの重要性も感じられるはずです。そのなかで、互いの意見を尊重しながら、自信を持って自分の意見を発信できるようになることが理想です。

なお、貧困問題を例にすれば、法の知識に加えて経済学、政治学、社会学など隣接する社会科学分野の知見が必要になりますので、「政治学入門」「経済分析入門」「公共政策入門」のうち2科目が選択必修となります。

―2年次以降についてもお聞かせください。

2年次以降は、国内法である憲法と、国際的な人権基準である国際人権法の双方の観点から学ぶ「人権法入門」を必修とし、「ジェンダーと人権」「性的マイノリティと人権」「子どもと人権」「戦争・紛争と人権」「貧困と人権」「ビジネスと人権」など、多彩なテーマ別科目を配置します。また、英語で人権問題を議論する科目や、フィールドワークを用いた科目も用意します。

さらに「ジャーナリズム実習」では、人権問題を報じるジャーナリズムの役割を学びます。人権侵害があっても報道されなければ、なかったことにすらなりかねないからです。一方で、人権を侵害する差別的な報道など、ジャーナリズム自体が抱える問題もあり、人権意識の高いジャーナリストの育成も視野に入れています。

その後、3・4年次にはより本格的な専門科目を展開し、ゼミで自分の興味・関心に沿って問題を探究していきます。また、日本赤十字社とのタイアップで「国際社会と人道支援」を開講し、人道支援でグローバルに活躍する方々から実体験を聞く機会も設ける予定です。

―身につく資質や、期待される将来像をお聞かせください。

人権問題の本質を的確に理解できる問題発見力や、当事者の立場になって理解しようとする想像力や洞察力、そして法的な知識や隣接する分野の知識を活かした分析力や思考力の向上が期待できます。そのうえで、相手を納得させる論理展開や表現力を鍛え、解決・改善に導いていける力を高めてほしいと思います。差別への怒りなど感情も原動力になりますが、具体的かつ論理的に何をすべきかの判断が肝心です。社会科学的な知見を活かして望ましい方向に導く方法を考えてほしいのです。正義感とのバランスを保ちながら探求する姿勢が求められます。

卒業後の進路は、企業法務や人事、CSR部門などが想定されます。近年は人権報告書を公開する企業も増えています。

また、経営者を目指すうえでも従業員や取引先の人権擁護への理解は不可欠ですし、公務員にしても人権意識を持って実務にあたることが大前提です。そのほか国連などの国際機関や、人権問題に取り組むNPOやNGO、人権問題を発信するジャーナリストなど、多様なフィールドでの活躍も期待しています。もちろん法律家という進路もあるでしょう。弁護士は基本的人権を守ることが使命だからです。

また、忘れてはならないのは、人権問題には自分の人権も含まれるということです。例えば“ブラック企業”から自分の人権を守ることは、同じ境遇の仲間を救うことにもつながりますし、そうやってより広く社会全体の人権問題に対して声をあげてほしいと思います。

―最後に高校生へのメッセージをお願いします。

法の世界では、誰もが同意できる単一の正解があることはレアケースであり、言葉の力、文章の力で相手を説得することが法学の醍醐味でもあります。紡ぎ出される言葉には、人それぞれの人生経験や考え方、教養が反映されますので、人権問題を解決に導く論理構成を考える作業は「全人格的な知的作業」といえるほど、大変やりがいのあることだと思います。

入学の時点で人権法の知識がなくても何ら問題はありません。大切なのは問題意識があること。身近な部分での気づきや、ニュースなどで見聞きした内容でも構いません。社会が抱える人権問題に関心を持ち、それを法の観点から考えていこうとする方をお待ちしています。

空き時間にはスマホを置いて本や新聞を読んでほしい

普段から心がけてほしいのは、新聞を読む習慣をつけること。スマートフォンでは、過去の閲覧内容に応じてトピックが選択されるため、得られる情報は限定的かつ断片的で偏りがちです。対して紙の新聞は一覧性が高く、自分には身近でないトピックにも触れられます。加えて海外のメディアにも目を向ければ、国内では報道されないトピックにも接することができ、こうした積み重ねから視野が広がっていきます。

法学は⾔葉の⼒がものをいう世界。良質な本や新聞で幅広い記事に触れることで語彙も増え、文章力や表現力も向上します。しかも、活字を読むには集中力も必要です。1時間でも30分でも毎日読み続けることで集中力が高まり、それが知的な活動に活きてくるのです。(申教授)

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