コロナ禍でも世界をめざす!—海外名門大への進学

コロナ禍でも世界をめざす!—海外名門大への進学

コロナ禍で留学がままならず、自宅でオンライン授業を受ける留学が一般的になった。
それでも高校生の海外大進学志向は止まらない。
受験生にとっては、志望校に国境がなくなってきているようだ。

教育のグローバル化が進む

日本の大学のグローバル化は順調に進んできた。〝国際〟や〝グローバル〟と名のつく学部は、約130大学に設置され、全大学の16%あまりになる。国際系学部の人気は高く、グローバル社会の到来を見越し、高校生の学びの意欲も高まっている。2022年4月には武蔵大が国際教養学部の新設を予定している。

学部だけでなく、授業内容のグローバル化も進んでいる。すべての授業を英語で実施する学部もあれば、1年間の海外留学を卒業の必須要件としている大学もある。多くの大学でグローバル教育は、当たり前になりつつある。

入試でも「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語4技能を問うため、民間の英語試験の成績を活用する動きが広まってきた。受験のための英語ではなく、社会を生きていくための「言語」として捉える傾向が強まっている。昨年度からは小学校の5、6年生で英語が必修になった。中学入試で英語の試験を実施する学校も増えている。

大学のグローバル化だけではなく、高校卒業後、いきなり海外の大学に進学する高校生も増えている。こうなってきたのは、多くの学校に帰国生徒やネイティブ教員がいることで、海外の大学の情報を得ることが容易になってきたことが一因だ。中高でも修学旅行やフィールドワークで海外を訪れたり、長期休暇を活用した海外研修、留学の制度が設けられるようになってきた。

さらに、最近では海外の学校と同じように、授業が全て英語のIB(国際バカロレア)校が公立を含め国内に設置され始めている。また、文化学園大杉並(東京)のように、日本の高校とカナダの高校、両方の卒業資格を手に入れられるダブルディプロマ制を取る学校も出てきた。カナダの高校卒だと海外大へ進学しやすい。このようにグローバル教育は、大学だけでなく、高校、中学などでも行われるようになってきた。

新型コロナウイルスの影響は

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、グローバル化が一時的に頓挫してしまっている。昨年は留学できず、語学研修にも出かけられなかった。留学といっても、家でオンラインで海外の授業を受けることになった。

このコロナ禍の影響は大きい。私立大で見ると、国際系学部はコロナ禍前の19年に前年より15.7%も志願者が増える人気だった。ところが20年には志願者が19年の92%と前年を大きく下回り、さらに21年は20年の81.9%まで減ってしまった。コロナ禍の影響をもっとも受けた学部系統だ。

ところで、この新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の大学ランキングに影響を与えたのだろうか。表を見てほしい。英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が発表した21年版のランキングで、トップは前年と変わらずオックスフォード大、2位が前年の4位から上がったスタンフォード大、3位が前年の7位から上がったハーバード大だった。トップ10はすべてイギリスとアメリカの大学で、コロナ禍の影響は受けていない。やはり世界的な流行のため、どの大学も影響は等しいということだろう。

アジアのランクを見ると、トップは全体で20位の中国の清華大、次いで北京大、シンガポール国立大、東大の順だった。東大は世界で36位、続く日本の大学は54位の京大だった。日本のトップ2となる2校だが、世界のトップ大学と比べると、留学生が少ない、外国人教員が少ない、論文数が少ないなどの弱みがある。それに比べ、アジアトップの清華大はどの項目も東大より高く、産学連携に力を入れていることが評価されている。

英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ時代に

こういった大学ランキングの影響もあり、日本の大学より順位が上の海外大に進学という選択肢も現実的になってきている。大学通信では全国の進学校にアンケートを行い、海外大の合格状況を調査した。その結果を見ていこう。

海外大合格者数トップは、218人の広尾学園(東京)、続いて117人の国際(東京)、78人の沖縄尚学(沖縄)、48人の立命館宇治(京都)、43人のN(沖縄)、36人の東京学芸大附属国際中教(東京)の順だった。広尾学園は昨年の76人から3倍近くに増えた。

今回のアンケートでは、合格実績だけでなく、いくつかの項目についても各校に聞いている。それを集計すると、「最初に生徒の相談を受ける時期は」の問いへの回答は「高1以前」が32%、「高2前半(9月まで)」が30%、「高2後半(10月以降)」が17%、「高3」が20%だった。やはり早い時期から海外大進学を考えている生徒が多い。

また、「海外進学の相談に対応するのは」の質問には、トップが担任、次いで進路指導、英語の先生、専門部署の順だった。さらに「海外進学情報の入手先」については、「民間の情報サービス」がトップで、次いで「他の教職員」と「公的機関」が並び、その後に「インターネット」が続いた。この「他の教職員」には、ネイティブ教員が含まれている。

高校でも、海外大進学を希望する生徒の要望に応える体制整備が進んでいる。さらに、「今後、海外大学に進学する生徒数は」の問いに、「今より増える」が41%、「わからない」が30%、「今と変わらない」が23%だった。今後もどのような要因があろうとも、海外大進学は続いていきそうだ。

ただ、学費の高さが気になるところだ。大学にもよるが学費は7~800万円かかる。これには寮費と賄いがついている場合もあるが、それ以外に生活費がかかる。合格を勝ち取っても奨学金がどれぐらいもらえるのかも重要だ。

地方の公立校からハーバード大に行ける時代となった。アプリを使えば英語の勉強は可能で、ネット上に情報もたくさんある。高い学費がネックだが、企業などが奨学金を出す制度も少しずつだが増えている。今後も海外大に進学する生徒は増えていくのではないだろうか。

かつての「日本の有名大学に合格しないから海外の大学に」という考えはなくなってきている。「英語で医学を学びたい」と考える受験生も出てきている。英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ時代が来たといえそうだ。

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