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2020年は、未曾有の出来事で始まった。「新型コロナウイルス」という見えない敵に世界中が翻弄される中、長野県立大学は開学から3年目を迎えた。時代が大きく変わろうとしている今、「学生の心に火をつけたい」と話す金田一真澄学長に話を聞いた。
時代の転換期に問われる教育とは
―まずはコロナに関する長野県立大学の取組みをお聞かせください。
5月半ばにようやく1学期がスタートし、すべてオンラインで授業を行っています。4学期制を採用しているため、現在は2学期ですが、延びています。文部科学省は、授業回数圧縮もありだと言っていますが、学生のために、減らさずに全部行うという方針です。通常2学期は、6月〜7月ですが、学期が終わるのが9月になり、夏休みは少し取れるかどうかという感じでしょうか。それでも、教員も学生も文句一つ言わずにやってくれています。
―オンライン授業に関する学生さんの反応はいかがですか。
オンライン授業を始めるにあたり、IT関係に強い先生が、自分がヘルプデスクを担当するので、何か困ったことがあれば24時間体制で対応しますと言ってくれたんです。大変感激しました。おかげで、スムーズに遠隔授業に移行できました。
毎年4月に、新入生の学長面談を行っています。大学生になって、やる気のある4月に学生の心に火をつけるのが狙いで、早いうちに学ぶ楽しさに気づいてくれたら、人生100年時代の今、卒業後も学び続けることが苦にならなくなると考えているからです。それが今年は、コロナ感染症で断念せざるを得なかったのです。しかし、オンライン授業も7月に突入し、かなり学生が不安になっているという話を聞いたものですから、Zoomを利用して、1人5分間の面談を実施しました。今年の新入生は240名いるので、火曜を除く月曜から金曜の授業終了後、夜9時まで実施して、7月現在、ようやく半分が終了したところです。
実際、学生一人ひとりと話をしてみて、意外とみんな元気そうで安心しました。授業については、それほど違和感はないという意見が多い中、通信環境がよくないという学生には、こちらから機器を貸し出すなどして対応しました。しかし、不安や不満については、2つほど言われました。1つは、寮に入りたかったのに入れなかったこと、もう1つは、授業がオンラインなので友達ができない。だから大学生活が楽しめないということでした。
ようやく3学期から入寮が可能となりますが、クラスターを避けるため、希望者のみに切り替えました。その点は申し訳ないと思います。また、友達づくりに関しては、入学当初からリアルに会うことができず、そのままオンラインに移行したのですから不安に思うのも当然です。いくらZoomにブレイクアウトルームといって、仮想空間に少人数のグループ分けができる機能があるとはいえ、そこでのコミュニケーションは限られています。本当の意味での友達づくりは難しいですね。やはり学生のこの4年間というのは、貴重ですから、できる範囲で仮想またはリアルにそういう機会が持てるよう、大学としてもいろいろと考えていかなくてはならないと思っております。
―3学期以降はどうなりますか。
3学期からは対面授業を再開する予定ですが、長くオンラインで自分の顔を見せない授業をしてきたことから、対面に不安を感じる学生も出てきています。一方、実験や実習などは対面でないと成り立ちません。現在学内でも議論しているところで、両方できるハイブリッド方式を検討しています。
日本は長年対面教育を重視してきました。それはそれでよい面もたくさんありますが、IT環境で世界に後れをとっていることも事実。今回のコロナで期せずしてオンライン授業を取り入れざるを得ない状況になりましたが、これからの日本の教育を一から考える良い機会だと実感しています。
「攻める大学」で新しい時代を一緒につくっていく
―開学から3年目を迎え、理想の教育に近づいているのでしょうか。
この3年間、グローバルな視野で未来を切り拓き、地域を創生できるリーダーを育てることを使命とし、全寮制やハードな海外プログラム、ボランティア活動など、さまざまなことに挑戦してきました。それができるのも、県、大学、産業界の関係が良好であること、そして新しい大学ならではの熱量のせいだと思います。
開学時、すでに大学全入時代を迎えていましたから、新設大学は珍しい存在でした。久しぶりに新しい大学ができるということで、新天地で力を試したいと、熱心で優秀な先生が集まってきました。学生も同様で、学長面談で尋ねると、新しい大学だからその可能性に惹かれて長野県立大学を選んでくれたという学生が1期生に限らず、2期生、3期生でもけっこういます。まだ完成年度を迎えていないため、評価も定まっていない大学を選んでくれ、さらに一緒に大学の歴史をつくっていこうと考えてくれる気概のある学生がいることは大変うれしいことです。そんな学生たちとどんな大学を創ろうかと考えると、ワクワクします。
トップクラスの就職支援体制で長野発の人材を送り出す
―来年はいよいよ3年生が就活を迎えます。そのあたりはいかがでしょうか。
キャリアセンターにはプロフェッショナルな職員がおり、1年次には、自分とはどんな人間か、どういう人生を送りたいか、何に幸せを感じるかなど、自己分析に時間を割きます。2年次にはインターンシップにどんどん参加させ、3年次にはそこで絞った企業に行く。そういう一貫した支援を行うことで、学生が自ら納得する進路を選択できるよう設計いたしました。
やはり、卒業後は地元に残ってほしいという期待がある中、うちは半数以上が女子学生ですから、知事には長野県で女性が活躍できる環境づくりをお願いしております。実際、大学にもCSI(ソーシャル・イノベーション創出センター)を設置し、長野県の産業や企業と結びつき、間に立って地元企業がブラッシュアップしていくお手伝いをしているところです。
また、これから必要となるのは、おそらく、何が起きても生きていける力だと考えられ、そのための教育基盤は整っています。そして、コロナ禍で世界中が鎖国状態になっている今だからこそ、グローバルの意味する多様性、つまり個性を大切にし、日本にしかない強みをどんどん発信していく必要があるのではないかと思います。