【視点】高まる「9月入学待望論」、導入開始の「時期」を間違えてはいけない

【視点】高まる「9月入学待望論」、導入開始の「時期」を間違えてはいけない

これまでの「9月入学」議論を振り返る

緊急事態宣言の解除が再延期され、いつ学校は再開できるのか。先が見通せない状況のもと、現役高校生らによる「9月入学」を求める声が出て来ている。小池百合子都知事は、もともと秋入学論者であったそうだし、ほかの各県知事や一部の政党も、学生の請願などを受け、9月入学賛成の流れに棹さしている。

9月入学導入には、いくつかのアンケート調査より賛否両論あるのが見て取れる。たとえば、河北新報が4月30日と5月1日の両日に行った調査(※1)によると、賛成意見が半数を超えている。9月入学に「賛成」と答えた人は57.8%、「どちらでもない」が28.1%、「反対」は14.1%で、賛成意見は反対意見の4倍以上だ。

(※1)河北新報/2020年05月03日
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202005/20200503_73008.html

一方で、4月29日に日刊スポーツが行なった調査(※2)では、「反対」が約55%、「賛成」が約41%と反対派が賛成派を上回っている。なかでも、10代以下の「反対」が約77%と多数に上った。これは、履修年限が短くなること、あるいは長くなることによって、就職や進学において不利になると想像した結果などが反映していると思われる。

(※2)日刊スポーツ/2020年4月30日
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202004300000206.html

教育学者や教育問題の専門家の中には、準備時間の短さや教育現場の負担増などを理由に反対の意を示している人も少なくない。彼らは、ITC教育(オンライン指導)など、優先課題にリソースを割くべきだと主張している。

元・文科事務次官の前川喜平氏は、朝日新聞Eduのインタビューで、「9月入学制」の議論の盛り上がりについて、「いま優先するべき話ではありません」と断じている。彼によると、9月入学論はすでに、中曽根康弘内閣時の臨時教育審議会の答申(1987年)で提言があり、次に、中央教育審議会の答申(97年)、さらに2000年の教育改革国民会議でも提言が出されており、何度も検討を重ねてきたのだという。その結果わかった最も必要なことは、導入までの十分な時間とコストや国民の広い合意であったそうだ。

いまから「約1年半をかけて」9月入学への移行を進めよ

ではどうすれば良いのか。私は、2020年9月の開始はあまりに早いと言わざるを得ないが、「1年半後」の来年2021年9月の開始なら良いのではないかと考える。1年半しかない、といえばそれまでだが、2年かければよいというものでもない。一番の問題は、いま、目下の児童・生徒・学生なのだから。

もし、9月入学がコロナ対応の有力な選択肢の一つであるとするなら、その導入は今年ではなく来年の2021年だ。それまでの1年半で、さまざまな制度変更の準備を行いながら、オンライン教育・遠隔教育などの対応を同時に行なっていく。

今年度の履修は1年半をかけて実施することにすれば、遅れた生徒の学習を取戻すこともできるし、先に進んでいる生徒への対応も、オンラインの対応も可能になるだろう。

「2021年9月」開始による、9月入学制度導入で、「新しい日常」における新しい教育の実現を目指すのはいかがだろうか。

【執筆者】
原田広幸(はらだ ひろゆき)
文筆業、ファシリテーター、進学・受験アドバイザー。東京外国語大学卒、中央大学法学部を経て、東京工業大学大学院修了、東京大学大学院総合文化研究科中退。専門は社会学・哲学。都市銀行、投資顧問、短大勤務、医学部予備校経営など、幅広い職種を経験。著書に『医学部入試・小論文実践演習~生命・医療倫理入門編』(エール出版社)、『30歳・文系・偏差値30でも医学部に受かる勉強法』(幻冬舎)、『医学部に受かる勉強計画』(幻冬舎)などがある。
Twitterアカウント→@harad211

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