【山手学院中高の校風】 大学受験より「人生そのもの」に効く中高一貫教育を提供したい。

【山手学院中高の校風】 大学受験より「人生そのもの」に効く中高一貫教育を提供したい。

近年神奈川県内で目覚ましい進学実績を上げている山手学院中学・高等学校は、創立当初から国際交流に注力した教育で知られている。中高一貫コースでは6年間に2回の海外研修が行われ、そのほかにも任意参加の海外研修プログラムがいくつも用意されている。その目的や、6年一貫教育で提供するさまざまな学びについて入試対策部長の渡辺大輝先生にお話をうかがった。

取材:井沢 秀(大学通信)

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非・偏重主義がもたらす「多様性」が子どもたちの化学変化を生む

ーー 今回は山手学院中高の一貫コース(中学校からの入学)での教育を中心にお話をうかがいたいと思います。まず山手学院中学校の生徒の皆さんは、どのような特徴や傾向があるのでしょうか。

渡辺先生 一貫コースは海外研修を一つの目的にして入ってくる子が多く、特に女子生徒はその傾向が強いですね。近年、大学付属校の人気が高く、近隣には女子校もたくさんあります。そこであえて本校を選んで入学する目的として、「海外研修」を挙げる方は多いです。

一方男子はどうかというと、近隣の鎌倉学園さんや逗子開成さんと併願関係が強く、どちらかというと通常通り勉学を頑張ってきたという子が中心ですね。だから入学時の男子は海外研修にそれほど興味があるわけではなく、中学生活のスタート時は男子と女子の雰囲気や気質がわりと異なっています。

ーー 全員参加の海外研修が、中高6年間で2回ありますよね。

渡辺先生 はい、最初は中学3年でオーストラリアに1週間ホームステイに行ってもらいます。女子は最初から海外研修を目指して入学してきた意識の高い子が多いので、積極的に英語を使って現地の生活にもすぐ溶け込みますが、男子は苦労する子が多いようです。研修がこれだけなら“一度きりの経験”で終わってしまいますが、高校ではさらに長い2週間のホームステイが控えています。ここで男子の顔つきが変わります。「何のために英語を学ぶのか」という意識が芽生え、積極的にコミュニケーションを取る大切さ、そのために必要な語彙力の獲得など、実践的な英語力向上に取り組み始めます。このあたりから男女差はなくなりますね。最終的には男女ともに外的で、何事も自分たちから発信していけるような、主体的な生徒へと成長していきます。

ーー なるほど、女子と比べて男子は学校生活の中で変化していくのですね。

渡辺先生 そうです。仲間同士で切磋琢磨しあう相互作用もありますし、本校の伝統的な教育の影響もあると思います。やはり国際交流に力を入れた教育は、開校以来力を入れてきた山手学院の強みです。

ーー その国際性を育んでいく教育には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。

渡辺先生 まず教科書ベースで4技能をバランスよく学ぶ一般的な英語教育に加えて、ネイティブスピーカーが担当する「English」という授業を1年生から行っています。この授業は40人のクラスを20人ずつに分けて行う少人数制で、3年時の海外ホームステイで最低限の意思疎通ができる英語力・語彙力の獲得を目標にしています。これが週2回3年間続くことで、英語に対する意識や親しみがだいぶ変わると思います。

 それから任意参加ですが中3の3学期、すなわち1月〜3月までの3か月間ニュージーランドに留学するプログラムを2年前からスタートさせました。公立中学に通う同級生が高校受験に励んでいるこの時期、一貫校の子はともすると中だるみして目標を見失いがちです。そこで本校では、この時期に長めの海外研修プログラムを取り入れました。初年度は8名の参加でしたが、参加した先輩からの口コミで数が増え、翌年は38名に増員。3回目となる今年度も30人前後の参加を見込んでいます。3か月間と期間も長いので費用がそれなりにかかりますし、生徒全員が海外でホームステイしたいというわけではありません。それでも約5人に1人の割合で参加するということは、やはり本校らしい国際交流の取り組みに対する生徒・保護者からの期待の表れだと感じています。 

 高校受験がなく時間のゆとりがあるのは一貫校のメリットの一つなので、こうしたプログラムに思い切って参加して、海外でじっくり自分を見つめ直す時間を作ってもらえたらと思っています。

ーー 先ほど生徒さんが外的というお話がありましたが、部活動も盛んで全体的に活発な子が多い印象を受けました。

渡辺先生 これは入試や募集形態に関わるのですが、本校は生徒の偏りがないからかもしれません。極端に言えば勉強だけしたい、あるいは部活に注力したい、そんな子だけを集めることで学校に特定の“色”をつけたくないのです。似たような子が集まれば教育する側はある意味楽なのですが、本校では初めから同じ方向を向いた同じ気質の生徒だけを集めるのではなく、いろんな考え方や性格・価値観の子が入学してきて、ぶつかり合って成長していく場でありたい。そこで生まれるダイナミクスが、生徒の活気につながっていくのだと思います。

ーー 特定のことだけに注力する受験生が集まるのではなく、すそ野を広げて生徒の多様性を大事にする気風ということでしょうか。

渡辺先生 そうですね。保護者や生徒からは、それではもの足りないので一つの方向に強く向かせてほしい、あるいはのびのび育ててくれてよかった、などいろんな声があります。でも最終的には本校の自由な風がのちのち子どもたちの主体性に生きてくる、と考えています。偏らないプレーンな空気と言われることもありますね。 

中高一貫教育で生まれたゆとりで「受験対策」ではなく「目標設定」を

ーー 前述した国際性の涵養のほかに、山手学院中高の一貫教育の特徴はどんなことがありますか?

渡辺先生 現在の校長である時乗が前回インタビューしていただきましたが、国際交流以外の分野でも幅広く子どもの力を伸ばせるような取り組みが必要だと考えています。その先駆けとしてスタートしたのがアントレプレナーシップの講座です。起業家精神に基づいたさまざまな学習内容を中高生向けにアレンジしたもので、近隣の私立中高一貫校に声をかけて、学校をまたいでいろんな刺激を入れながらやっています。これを皮切りに、エンパワーメントや、さらにプログラミング講座などを来年、再来年と導入する予定です。

ーー 時乗校長は、6年間を2年ずつ3つのタームに分けてSTEM教育を中心に据えた教育を始めていくとおっしゃっていましたね。

渡辺先生 STEM、あるいはArt(芸術)の要素を入れたSTEAMの導入に校長はこだわりを持っており、現場では本格導入に向けて準備しているところです。土曜の午前中に行う特別授業で徐々に提供していくイメージなので、これから入学してくる生徒たちはだんだん思考の変化が現れてくるのではないでしょうか。 “いままでの山手らしい教育にプラスアルファの仕掛けを用意していく”、という感じです。

ーー 2年区切りで積み上げていく教育方針の詳細と、その意義はどんなところにあるか教えていただけますか?

渡辺先生 これだけ大学入試が変わってきたとはいえ、読み書きのような基礎学力は絶対に必要な部分です。中1〜中2の2年間は学習習慣を定着させ、英・数はペースを速めて先取りで学習します。本校ではそこで出来たアドバンテージを中3〜高1でそのまま大学受験のための勉強に活かすのではなく、海外研修やいろんなプログラムに充ててほしいと思っています。

 一般的に中3〜高1の中学と高校の接続期間が勉強に向かない理由というのは、子どもたちの目標設定によるところが大きいと考えています。高校受験がないぶん、この時期の勉強のモチベーションはどうしても落ちてしまいがちなのですが、むしろ職業体験や海外研修を通じて“外の世界”をしっかり見てもらいたい。そして視野を広げてこれからの目標設定を考えてもらいたいのです。このように2年ごとに勉強のバランスや目標を変えながら、最後の2年で本格的に大学受験に向かっていってもらいます。

偏差値ベースの進路指導から目的と熱意で大学を選ばせる時代へ

ーー ここまで既に山手学院では高い進学実績をあげてきたわけですが、この2年スパンで区切ることでさらなる伸びを見込んでいるのでしょうか。

渡辺先生 そこはやってみないとわからない部分ですね。でも一つだけ言えるのは、これは何らかの力を身につけるための仕掛けではなく、モチベーションの向上や大学を選ぶ際の目的意識といった、自分の人生をしっかり見据えて選んでいくためのプログラムであると我々は考えています。なぜなら、もはや単に大学に行くことがゴールであった、1ポイントでも偏差値の高い大学を選ぶような時期はすでに過去の話であり、子どもたちが一人一校満足する進学先を見つけてもらうという進路指導に変わっているからです。

 これからの大学入試は、さらに本当の意味でのAOや推薦枠が増えていくでしょう。そうなると単に勉強ができて入試で点が取れる子より、きちんとビジョンがあってこの大学・この学部で学びたい子の熱意が問われ、ときには受験時の学力差を埋めてくれる要素になるとも思います。そして大学側もそういうところを見極める方向に向かうであろうという予測のもと、先駆けて力を入れて始めているわけです。

ーー 進学実績につなげるプログラムというよりは、子どもたちのモチベーションや目標設定のため、という位置付けなのですね。

渡辺先生 そうです。その結果かどうかわかりませんが、いくつか大学に合格した場合に、こちらが予想しないような進学先を選ぶのは一貫コースの子が多いです。同じケースでも高入生は勉強一本で勝負してきているので、偏差値ベースで一つでも高いレベルを選びますし、そこに考える余地はほとんどありません。例えば上智と慶應に受かれば間違いなく慶應を選びます。

 これはある一貫生の話ですが、慶應大学SFCと武蔵大学の2校に受かり、最終的に武蔵大学に進学しました。これは偏差値的に判断するとありえない選択だと思います。でもその年に武蔵大学で「パラレル・ディグリー」といって武蔵大学と海外大学の2つの学位を取得できるプログラムを始めたのです。その子は学力的には申し分なかったのですが、事情により大学で1年間留学するのは難しいと感じていたようで、海外大学の学位取得を決め手に武蔵大学を選びました。こういう子は我々より情報収集も早いですから、留学したいけどできない場合はどうすればいいか、自分で考えてちゃんと調べていますね。

 そういう学力では測れないものを最後に発揮してくれるのも一貫生が多く、そういう化学反応みたいなものが今後もっと増えてほしいですね。みんながみんな高いレベルの大学に受かるような“美談”ではなくて、どこであっても大学選びには本人なりのストーリーがあり、そこが一つの満足できるゴールであってほしいと我々は願っています。

ーー 6年のカリキュラムで生まれる学生生活の余裕を、そういう生きるうえでの「目標」に結びつけているのが素晴らしいですね。前回のインタビューでは、近年の山手学院では難関国立大学の合格者が増えている背景に、なるべく5教科7科目を頑張らせているというお話がありました。これもまた6年間で生まれるゆとりが影響しているのでしょうか。

渡辺先生 一貫コースを作ったのが10年前のことですが、その時に国立型の特進クラスを設けて、そこでしっかり実績をあげています。

 山手学院というと上位私大への合格実績のイメージが強いと思いますし、これまでMARCH・早慶などに多くの合格者を出してきました。ある種のよいポジションやイメージに甘んじることなく数学必修化に踏み切ったのは、短期的には受験対策、すなわち国立大学までカバーする教科をきちんと学習してもらうためです。でも数学で培う力とは、机の上で問題と向き合うときだけに発揮されるものではなく、社会に出てから人と話をするときや物事を組み立てる際の論理的な思考力へと結びつきます。目先の合格実績ではなく、長期的には子どもたちの将来を考えた「教養」として数学は必要だと考えています。

 それに一貫生は数学もほぼ1年前倒しで授業を進めています。カリキュラム的には高入生より先取りで学習しているので、受験までの準備期間は彼らより余裕があります。これも一貫コースのメリットですね。

子どもの「やりたい」を叶えたい。特待生制度で海外研修をもっと身近に

ーー 一貫コースの入り口としてまず中学入試があるわけですが、特待生選抜制度をスタートするとうかがいました。その導入の経緯や、求める人材について教えてください。

渡辺先生 特待生制度は数年前から検討はしていたのですがちょうど、2年前より先にお話しした3か月間のニュージーランド研修が始まります。このプログラムには、130万円ほどの参加費用が必要になります。当然安くはない金額ですので費用面で二の足を踏むこともあると思いますし、今後はアントレプレナーシップなど別種のプログラムも増え、そこでも参加費用をいただくことになります。せっかく良いプログラムを用意しても、金銭的な負担ばかりが重なっていくことについて学校としてもなにかできないか、と対応を考えていました。そして海外プログラムに参加したい、そして学力的にもサポートするに足るという子に対しては、学校側が費用を負担していこうということになりました。それも直接的なプログラムの参加費用負担ではなくて、授業料の免除という形でサポートしよう、それが特待生制度を導入した背景です。

 中学と高校で特待生の権利の切り替わりがありますが、中学3年間在籍した場合で毎月の授業料4万円×36か月で144万円、入学時にいただく施設設備費24万円、これらを全額免除して合計168万円の免除になります。そうするとニュージーランド研修の参加費130万円、夏に行うシンガポール研修が約30万円程度かかりますので、その2つのプログラムの参加費用相応の金額になっています。そうすれば、こうしたプログラムにも思い切って参加してもらえるのではないかと思って打ち出しました。

ーー 単に学力の優れた子を集めるのではなく、こうした体験の参加を通じて子どものポテンシャルをもっと伸ばしていきたいというわけですね。

渡辺先生 偏差値ベースで優秀な子に一人でも多く入ってほしいとは、正直思っていません。本校と併願される学校群を考えると、「特待だから山手に行こう」という選択をする子は少ないと思います。この学校でしか体験できないプログラムに魅力を感じて、そこにお子さんを参加させたい、あるいは本人が山手に行きたい、そんな熱い志をもって入学してもらいたいです。

ーー 選抜方法についてはいかがでしょうか。

渡辺先生 これまでも入試日程別に特待生というのは出していましたが、この制度では合格者の中から単純に上位40名を特待合格、残りは一般合格という形になります。これまでは特待合格を出しても実際に入学してくる人数との間に差があったので、これから来年、再来年と進むにつれてその差が埋まっていくといいなと考えています。

ーー そんな優秀な生徒さんが目標の海外研修に参加してしっかり育ってくれると、周囲を活性化するというか、いい影響を与えてくれそうですね。

渡辺先生 はい。それを大いに期待していますので、ぜひいろんなお子さんに山手学院に挑戦してほしいと思っています。

 

山手学院中学校・高等学校

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2019年度中学説明会 (10/12 11/9)
https://www.yamate-gakuin.ac.jp/examinee/j_setsumeikai.html
2019年度高等学校説明会(10/12 11/9 11/30)
https://www.yamate-gakuin.ac.jp/examinee/j_setsumeikai.html

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