リベラルアーツの実践「対話」する寮生活とは│国際基督教大学(ICU)

リベラルアーツの実践「対話」する寮生活とは│国際基督教大学(ICU)

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日本のリベラルアーツ教育をリードしてきた国際基督教大学。実はキャンパス内にある同学の寮は全学生の約1/3もの収容定員を誇ることはあまり知られていない。寮生活にどのような教育観を持っているのか、その環境は学生にどう作用するのか、そのねらいについてお話をうかがった。

リベラルアーツの実践 「対話」する寮生活とは

進学時に考えたい住まいの選択肢

この春、多くの受験生が大学進学という一大イベントを通じて新たな環境で生活をスタートさせることだろう。初めて親元を離れて暮らす学生、あるいは子供を遠方に進学させる保護者、ともに直面するのが「どこに住むべきか」という問題ではないだろうか。

一人暮らし、学生マンション、学生寮―これらの主要な選択肢のなかから、通学の至便さ・家賃など親の経済事情・防犯などのセキュリティ事情等を総合的に勘案し、居住形態を決定するのが一般的だ。学生への質の高いサービスやプライバシーに重点を置いた居住施設も増えてきている。

そんななか、学生寮を“教育寮”と位置づけ寮生活を「生活を通じた学びの場」としているのが国際基督教大学(以下ICU)だ。同学では自然豊かで緑に囲まれたキャンパス内に、歴史の古い寮から新しい2017年築のものまで、大学院生用の寮を含めて計10棟の寮を構えている。その収容規模は、じつに全学生の約3割にあたる900人に相当する。

「アメリカのリベラルアーツカレッジは伝統的に全寮制のところが多いので、それを模範としているのでしょうね。広大な敷地内には寮のほかに教職員住宅もありますし、かつては農場もあったそうです。」

そう語るのは、ICUでアドミッションズ・センター長を務める森島泰則教授。リベラルアーツ教育を日・英のバイリンガルで行う大学として知られるICUだが、在学生(大学院生含む)の4人に1人が学内の寮から通うという、都内でも珍しい校風はあまり知られていない。なぜ、同学ではここまで寮環境の整備に力を入れているのだろうか。

森島泰則(もりしまやすのり)
アドミッションズ・センター長/教授(心理学)
1996年コロラド大学大学院から博士号(Ph.D.)取得。在米日経企業研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、2003年ICUに着任。2010年から2年間、アカデミックプランニング・センター長。2015年より現職。

 

生活のすべてがリベラルアーツの学び

寮生活の意義について、森島教授は以下のように語る。

「ICUでは献学以来、寮生活そのものを教育の一環として位置づけています。共同生活のなかでは生活様式や責任分担などを巡って意見の食い違いが生まれることもあります。学生はそれらを『対話』を通じて解決していかなければなりません。それは人として成長する要素が多分に存在する、全人教育的な環境と言ってもいいでしょう。」

同学の寮では、一般的な学生寮にありがちな大学側による一元的な管理体制が敷かれているわけではなく、学生自身が主体的に運営方針やルールを決定しているのが特徴だ。代表となる各寮の寮長や執行役は寮生により選出されるほか、月に一度は運営方針の確認や議題を全員参加で話し合う「寮会」が開催されるなど、きわめて民主的な自治が行われている。

実際の運営や自治にはもちろん大学側も関与するが、寮生と大学との間では、常に「対話」に基づいた信関係が構築されている。

 

また、バイリンガリズムを標榜するICUでは海外から進学・留学してくる学生も多く、どの寮にもそのようなバックグラウンドをもった学生が一定数住んでいるという。それぞれの育ってきた文化や価値観の違いが、ときに共同生活における意見の相違や不和をもたらすことは想像に難くない。

学生たちはお互いが理解し納得するまで、日本語と英語を駆使して「対話」でそれらを克服していくことが求められる。そうすることで、学生は多様性や人権の尊重、責任の分担と共有を実践で学んでいくのだ。

同学が「教育寮」という名称を用いるのは、こうした寮生活がコミュニケーション能力やリーダーシップ、あるいは協調性や問題解決能力を育むためのリベラルアーツ教育そのものと考えているからなのだ。

広大なキャンパスには10棟の学生寮がある

 

学生や教職員も利用できる共有スペース

 

キッチンでは寮生が話し合って決めたルールがある。

 

新入生の寮生による発表会。

知的学修コミュニティの創出

自治を重んじ、教育的な要素も色濃いいっぽうで、寮は多くの仲間が集うコミュニティとしても機能している。寮内でパーティーや寮対抗のスポーツ大会など年間を通して多彩なイベントが開催されるほか、新入生が寮生活を始める際に参加するイニシエーションなど各寮で独自のカルチャーが形成されている。

授業のなかで得られるものとは異なるこうしたカルチャーを共有することで国内外の学生や先輩・後輩との人間関係が育まれ、ときにその交流は卒業後も続くのだという。寮ごとに行われる同窓会にいまも多くのOB・OGが集まることからも、寮生が過ごしてきた充実した時間や絆の深さがうかがえる。

また2017年春に開寮した新たな寮では、寮生だけでなく通学生や教員も利用できる複数のセミナールームや共有スペースが備わり、こうした場の活用を通じて寮でのつながりが他の学生へと広がるなど、さらなる知的学修コミュニティの創出が期待されている。

「ICUはメジャー制になっているので、それぞれの学生がいろんなことを学んでいます。少人数の大学なので人と人との距離は近いのですが、他大学に見られるような学部や学科によるまとまりや連帯感はそこまで強くないように思います。だから学生間のコミュニティ感覚を醸成するうえで、寮の果たす役割は想像以上に大きいのかもしれませんね。」

ややもすると、受験の二の次で慌ただしく決定されがちな住まいにまつわる選択。しかしこのような教育寮の事例を見ても、授業以外の生活時間さえ環境によっては大きな学びの糧とすることも可能なのだ。

受験生・保護者・そして教員ともに、大学進学で「何を学ぶか」はもちろん「いかに人と関わり生活していくか」、そして「それを支える大学の多様な環境とはいかなるものか」について考察し議論を深めてみるのも、進路選択の一助となるのではないだろうか。

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