情報・データサイエンス教育が養う予測困難な時代における適切に意思決定する力―流通科学大学

情報・データサイエンス教育が養う予測困難な時代における適切に意思決定する力―流通科学大学

デジタル人材の育成が、国を挙げた取り組みとして進められている。大学でも情報・データサイエンス関連の学部・学科の新設や、新たな教育プログラムの導入が活発に行われている。今なぜ、大学で情報・データサイエンスを学ぶことが重要なのか。流通科学大学では、社会の変化を見据えてどのような教育に取り組んでいるのか。経済学部の寺口敏生講師に伺った。

聞き手 松本陽一(大学通信)   
文 松本守永(ウィルベリーズ)

―大学における情報・データサイエンス教育が活発になっている背景や意義について、先生の見解をお教えください。

背景としては、社会の多様化・複雑化や変化の目まぐるしさがあります。このような社会では、かつてのように経験や勘に頼っていては適切な判断をすることができません。2〜3年先すら正確に予測することも難しいです。そこで、判断や予測のよりどころとして、情報やデータを重視するようになっているのです。

技術的な発展も背景として挙げられます。以前は、収集したデータのうち実際に活用されるのは一部分だけで、残りは活用せずにいました。なぜなら、使わないデータを保管しておく場所や、「必要なさそう」なデータまでを分析する技術的な余力がなかったからです。それに対して現代では、クラウドコンピューティングや高速計算、ディープラーニングなどの技術によって、より多くのデータを蓄積することや分析することが可能になりました。その結果、より多くの有益な情報を取り出し、経営判断などに活用できるようになったのです。

情報の分析やそれを基にした考察は、さまざまな学問や研究で行われています。本学では経営や会計など、情報やデータが重要な位置を占める学びに取り組む学生が多いです。情報・データサイエンス教育は、学年が進んで研究や専門的な学びを行うための土台作りにもなっています。

―流通科学大学における、発展的な情報・データサイエンス教育について教えてください。

本学は経済学部に経済情報学科を設置しています。同学科には、経済データの分析やそれに基づく意思決定に軸足を置いて学ぶ経済情報コースと、プログラミングなどのシステム構築に軸足を置いて学ぶ情報システムコースがあります。いずれのコースも、現代の経済・経営を支える人材を育成します。「新店舗はどこに作るか」「仕入れの数はどうするか」など、会社の経営や仕事をするうえで欠かすことのできない意思決定をデータに基づいて行う力を養う「意思決定論」など、特色ある授業を行っています。

―情報やデータサイエンスを学ぶうえで、数学は必須でしょうか。

まずは、四則演算ができれば十分です。その他の要件を挙げるなら、エクセルに抵抗感がないことです。情報・データサイエンスの知識は、数学の苦手さを補完してくれるという側面があります。ですから、数学が苦手な人ほど学んでもらいたいですし、学んだときに得られるメリットが大きいと言えます。

―流通科学大学は「企業がつくった大学」という設立の経緯を持ちます。現在も企業や地域との結びつきが非常に緊密です。それらの要素が、情報・データサイエンス教育を行ううえで役立っている点はあるでしょうか。

まさに本学ならではの強みとして作用しています。例えば、企業でシステム構築や運用などに携わる方が講師を務めてくれる授業があります。ここでは苦労話や仕事への思いなど、教科書を読んでいるだけではわからない、舞台裏のリアルな姿に触れることができます。情報やシステムというと無味乾燥なものに思われがちなのですが、企業の人たちから現場の話を聞くことで「血の通ったもの」に変わるのです。そうすることで、学びや就職に向けた意欲が高まります。また、業務内容や働き方への理解が深まることで、就職後に起こり得るミスマッチの防止にもつながります。

―情報系・データサイエンス系の大学・学部を目指すにあたって、高校時代に準備しておくべきことはあるでしょうか。

「自分は何が好きなのか」を掘り下げて考えてみてください。仮に「ゲームが好き」だとしましょう。そこから進んで、プレーすることが好きなのか、美しいグラフィックに興味があるのか、ゲームをつくり出すことに興味があるのかなどを考えるのです。さらにプレーすることが好きなら、なぜそうなのかを考えます。すると例えば、膨大なパターンを記憶して適切なタイミングで適切な対処を行うという、自分自身の強みや「得意」が見えてきます。そこまで見えてくると、関係する分野の学びを探しやすくなるはずです。

先生方には、生徒のみなさんが「好き」を見つけるお手伝いをしてもらいたいです。「好き」は、勉強を始める大きなきっかけです。将来の職業などはまだまだ決められないかもしれませんが、「好き」が見つかることで、「この方向に進んでいきたい」という大きな道筋を描くことができると思います。

注目の授業

文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)認定
全学共通教育科目「デジタル社会の基礎知識」

■段階的にリテラシーを習得

2022年度から導入された「デジタル社会の基礎知識」は、全15回の授業が「導入」「基礎」「心得」という3段階で構成されている。

「導入」では、デジタル社会の構成やデータがどのように生活で活用されているかなど、情報と現代社会に関する全体像への理解を深める。「基礎」では、平均や偏差をはじめとした統計が学びの中心となる。ここでは「どのようなデータを集めるか」「どうやってデータを使うか」を学ぶとともに、実際にデータを活用する体験も積む。「心得」では、個人情報の扱いやウイルスをはじめとしたセキュリティ対策など、デジタル社会を生きるうえで不可欠となる知識を習得する。

■現代の若者に寄り添ったカリキュラム

情報・データサイエンス教育は大きな注目を集める“新しい”教育だ。一方で現代の学生は高校時代に「情報」の科目を履修しており、一定の知識はすでに備えている。さらに、「デジタルネイティブ」の世代であり、日々スマートフォンなどを通して情報に接している世代でもある。そこで同科目では、学生が「知っていること」と「知らないこと」のバランスを見極めたカリキュラムになるように注力している。また、ゲーム的要素を学びの中に取り入れることで、「科目」として学ぶことへの抵抗感や苦手意識を軽減している。興味さえ持てば、スマホなどを駆使して情報収集を行い、自分なりの考えを深めるのが現在の学生たちだ。その特性に寄り添ったカリキュラムとなっている。

■応用のための土台をしっかりと築く

エクセルをはじめ、計算やデータ処理に関してはさまざまな便利なツールが利用できる。同科目でもそれらを積極的に利用し、活用方法を学んでいる。同時に、ポイントとなる場面では、データ処理を支えている数式の説明もしっかりと行う。これは、仕組みや理屈を理解することによって、数式などを活用する力を養うためだ。授業のなかで出される課題も、学んだ内容の定着度を測るものだけでなく、学びを活用して考えを深めることを意図したものも多い。流通科学大学では、ビジネスをはじめとした情報・データを多く扱う分野での専門的な学びが展開されている。同科目はそういった大学の特性を見据えながら、確かな土台を築く科目としての役割も果たしている。

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