海に学び「あきらめない」力を身につける│逗子開成中学校・高等学校

海に学び「あきらめない」力を身につける│逗子開成中学校・高等学校

横浜から電車で30分。神奈川県の逗子駅を最寄りとする逗子開成中学校・高等学校は、東大や京大をはじめとする国公立大学に100人以上が合格する進学校です。東京からの通学圏内にありながら目の前に海がある贅沢な環境が自慢で、遠泳やヨットといったユニークな教育活動の実践でも知られています。インタビューに応じてくれた風間啓一先生(数学科教諭)は、広報部長であるとともに中学ヨット部の顧問も務めています。逗子開成が進学実績を伸ばしている背景から、日頃の生徒たちの様子、ヨットや海との付き合い方まで、幅広くお伺いしました。

取材・文:松平 信恭


逗子開成中学校高等学校 広報部長 風間啓一先生(数学科教諭)

新たなものを積極的に取り入れる校風 生徒の自主性を伸ばす教育で進学実績も伸びた

――逗子開成はこの10年ほどで大きく進学実績を伸ばしました。進学校として一段高いステージに上がったように感じられますが、躍進の背景にはどのような要因があるのでしょうか。

逗子開成が持つ「新しいものを積極的に取り入れようとする風潮」が大きいと思います。時代に合わせて教育を少しずつ発展させ、今の子どもたちに合った形で教育活動を行っているのが実績にも表れてきたのだと思います。

他の学校がやっている良いことは逗子開成に合うようにアレンジして、よい意味で真似をするようにしています。2000年以降、逗子開成では学内改革チームを編成し全国の進学率が伸びているさまざまな学校へ、公立、私立問わず視察に行って、良い取り組みをどんどん取り入れてきました。この学校は教員として任される部分が多いので好きなことができて働きやすいです。

なかでも影響が大きかったのは、生徒に自主性を発揮してもらおうと、家庭学習を重視する方向に日々の学習支援をシフトしたことでしょうか。家庭学習を促すツールとしてシステム手帳のような「学習の手引き」を導入し、毎日勉強したことを書き込んでもらうことにしたのです。

学習の手引き

以前は「放課後居残り勉強」をやっていました。成績のあまり芳しくない子を教員が抱えて、補習をやって、下校時刻まで勉強させる(笑)。ただそれだと生徒たちに「やらされている感」がものすごく強かったので、学習の手引きの導入と同時に補習は少なくしました。

このようなことを始めたのがちょうど6年ほど前で、中学の3年間でセルフマネジメントができるようになることを目指しました。

――昨今は主体性を育むことの大切さが広く言われるようになりましたが、当時としては先駆的な取り組みですよね。

時代を読む嗅覚が強い学校ではあると思います。パソコン教育にも30年以上前から取り組んでいましたし、現在もタブレットなどのICTは積極的に活用しています。

そのほかにも職員室の廊下にホワイトボードを設置して質問に来た生徒にその場で解説できるようにするなど、さまざまなことを試しています。

 

職員室廊下のホワイトボード

以前は3桁に届かなかった国公立大への進学者が100人を超えるようになりましたし、生徒の中には「自分の力で理解を深めないと」という意識が芽生えてきました。さまざまな取り組みがある中で、家庭学習を重視する方向転換は間違いでなかったと感じています。

2019年度大学合格実績(過去4か年)

「なにげに国公立志願率が上がってきたんですよ」と風間先生。ここ2年は国公立大110名超え。東大・京大・国公立大医学部を核とした最難関大学に限定しても毎年30人超の実績を誇る。

――家庭学習重視の指導のもとで学んだ生徒が挑んだ今年(2019年)の入試では、東大に4人、京大に3人合格するなど、多くの生徒が難関大に進学しています。

逗子開成は高2まで文理分けはなく、全員が5教科を最後までバランス良く学びます。進学については生徒の意思を尊重していますが、学校としてはコンスタントに東大合格者を2桁出すことを目標にしていて、「国立大を目指してもらいたい」という見えないメッセージを伝えているつもりです。

そのための受験指導は昔から手厚く行っています。たとえば英語科では英作文の添削をマンツーマンで実施しています。学年や習った先生かどうかは関係なく、希望する生徒が先生と1対1でやりとりをしてスキルを身につけています。

「家で勉強しなさい」とは言いつつも、昔の癖が抜けないのか生徒に頼まれたら学校で勉強を教えています。私も試験前には生徒に呼ばれることがあり、教室で10人くらいを相手に彼らが分からない問題を教えています。

放課後なので私の場合は板書をカメラで撮ったり、解説を録画するのをOKにしています。その場では聞くのに徹して後で見返すのだそうです。生徒に合わせた指導が行えるのはメリットですね。他の生徒もそれぞれに頼んでいるのだと思います。

――先生たちがこうした取り組みを自主的、積極的にやっているということですか。

そうですね。生徒からの依頼があれば、ということではありますが。彼らに呼ばれると少なくとも2時間くらいは取られてしまうので、「学校説明会の要項を作りたいんだけど・・・」などと思う時もありますが、生徒と過ごす時間は一番楽しいので断れないですね。

各生徒が自主的に先生に声をかけて行われる放課後補習。放課後まで距離近く好きなだけ先生に教われる。これも男子校の醍醐味。

大切なのは「あきらめない」こと生徒と教員が楽しみながらつくる学校生活

――自分で勉強することを基本にしつつ、必要なサポートは充実させているのですね。このように日々接する中でどんな生徒を育てたいとお考えでしょうか。

逗子開成のアドミッション・ポリシーにもつながるところで、「あきらめない」いうのが一つのキーワードです。粘り強い、くじけない、そういった気持ちを持った青年になって巣立っていってほしいと思っています。

――生徒に対してはどんな印象を持っていますか。

個性的で人懐っこい子が多く、根は優しい生徒たちです。これは男子校全般に言えることかもしれませんが、逗子開成は生徒と教員の距離が近く、とても仲が良いと思います。それぞれの生徒に信頼できる先生がいて、人生のアドバイスなどを聞きながら育っている印象があります。
「先生、あれやろうよ」と言われて、私たちも「面白そうだね、やろう」と一緒になって取り組む。こうした雰囲気が以前からあって、生徒と教員とでお互いに学校生活を楽しもうとしていますね。

饒舌ではないが強くてやさしい。男子校の教員らしい風間先生
「学校生活って生徒だけではなく教員も楽しむことで作られるんですよ」

――みんなで何かに取り組む雰囲気があると。

勉強もひとりぼっちでする子は少ないですね。自習室にも数人で連れ立って行きます。試験前の土日には友達と自習室に来て、普段通りに自分たちで勉強しています。お昼になったらご飯を食べて、昼休みはグラウンドでキャッチボールをして、自習室に戻って、また勉強をする。そんなことを自分たちでやっていますよ。

「もしかしたら同じ大学に行きたいライバルなのかもしれないけれど、お互いに励ましあって、助けあって、受験を乗り越えよう」ということを、学校からも彼らにメッセージとして伝えています。

芝生で寝転んで仲良く勉強する生徒たち。教室だけでなく晴れた日の芝生もそこに共に学ぶ仲間がいれば、すべてが「自習室」になる。とにかく自由で「対話」しつつ高めあっていく日々は宝物。

――難関大に合格するような生徒でも同じような様子なのですか。

今年、推薦入試で東大に入学した生徒がいたのですが、その子もすごく特別なわけではありません。ただ、逗子開成の生徒らしく、さまざまなことに興味を持った生徒でした。

彼は高1からツバメの研究をしていて、『BIRDER』という鳥の専門誌に何度か論文が掲載されたことがあります。興味は鳥だけに留まらず、有志がチームを組んで海の研究に取り組む「プロジェクト」に参加して、地球を流れている深層海流の要因の1つではないかと予想されている「乱流」という現象の解明にも取り組んでいました。

「乱流」の研究発表。興味関心ごとにメンバーをアサインしてプロジェクトに取り組む。そして横断的に複数の集まりにジョインしていく。現代社会で求められている動き方を偶然教育の中で体現してしまっている。これが逗子開成。

ほかにもふとした時にメールで蛾の写真を送ってくれたり、横須賀の山の中までサンショウウオの卵を見に行ったり。入試では鳥だけでなく生物全般に興味を持っている点が評価されたようです。

東大推薦合格の生徒がある日メールでくれた「蛾」の写真。
生徒が教員に興味関心を発信してくれるのも男子校ならではの距離の近さかもしれない。

彼が研究を始めたきっかけは中2の夏休みに学校の短期プログラムで行ったカナダの研修旅行です。現地の学生や研究者と交流する中でカルチャーショックを受けて、科学者にはコミュニケーション能力や積極性が大切なことに気づいたそうです。だからこそ一人ではなく友達と一緒に協力しながら研究を行っていましたね。

カナダ留学

海洋教育が特徴の逗子開成ならではのアクティビティや東大との研究活動

――海との関わりについてもお伺いしたいと思います。学校の目の前に海がある恵まれた環境を生かして数多くのアクティビティを行っているそうですね。どのような取り組みがあるのでしょうか。

一つは海での遠泳です。中3の時に全員で行っているもので、逗子湾を沖まで泳いでUターンして帰ってきます。直線距離としては1500メートル程度なのですが、波に流されるので実際に泳ぐのはそれ以上の距離になることもあります。

「遠泳」実習。逗子開成の海上の授業はすべて複数名のライフセーバーや船舶などしっかりと安全を確保した上で行われている。級友とみんなで隊列で泳ぐことにより人への信頼、連帯感など社会に出ても役立つ下地が作られていく。

 

――入学時に全く泳げない子もいると思います。大丈夫なのでしょうか。

もちろんそういう子もいて、毎年10人くらいは全く泳げない「トップアスリート」が入学してきます(笑)。初めはものすごく差があるのですが、泳げない子でも3ヵ月もすればプールの端から端まで行けるようになります。今はできなくても必ず泳げるようになるので安心してください。

 

大浴場。逗子開成には海の教育に使用する様々な設備があり、この大浴場もその1つ。遠泳のあとはみんなで冷えた身体をあたためる。「1クラス30名ずつ入れる浴槽でお湯を張るのに2時間超かかるんですよ」と風間先生。この遊びやゆとりが子供を大きな青年に育てる。

――遠泳以外にはいかがですか。

中1の技術の授業で半年かけて自分たちでヨットを製作して、完成したヨットを実際に海で操縦する取り組みを30年以上続けています。これまでに200艇を超えるヨットが生徒たちの手で製作されています。

一般生徒にとっては製作したヨットに乗る機会は授業の中だけですが、ヨット部では部活動としてヨットに乗って操船能力を身につけることができます。

 

伝統の木型からヨットを削りだす。地下のヨット制作場にはナンバリングされたこれまでの作品がずらりと並ぶ。

――先生が顧問を務める中学ヨット部の活動も教えていただけませんか。

普段ヨットに乗るのは土曜日で、平日の放課後は筋トレや技術の勉強をしています。最もヨットに乗れるのは海が空いている冬の時期です。夏は逗子湾が海水浴場となってボートやヨットが禁止されるのでヨットで海に出ることができません。

ヨットに乗れない時間が多いのは大きな悩みですが、そんな時は部員をオープンキャンパスにガイドとして派遣するなどボランティア活動に関わってもらっています。ヨットとボランティアを通して、協調性や奉仕の心が自然と育まれているように感じます。

――こうした活動を学校生活に取り入れているのはなぜなのでしょうか。

遠泳もヨットも、挫けそうになった時でも自分の力で最後までいかなければなりません。その経験をすることで得た「あきらめない」気持ちを、社会に出てから生かしてもらいたいと考えています。

これまでは達成感を得ることを目的とする面が強かったのですが、今は教育活動として海を媒介にしながら学ぶことも意識しています。

たとえば生徒には「海に関するアクティビティは自分にどんな影響があったか」といったテーマでレポートを書いてもらっていて、「忍耐力がついた」「周りと協力することが大事だった」といった感想が出てきます。私たちはそれらを分析することで初めて、「生徒の中で協調性という部分で何かうごめいているな」と分かるようになりました。海での活動をきっかけとして教育活動をブラッシュアップしているところです。

 

「海から受ける影響」のレポート事例。逗子開成では毎年海と触れ合うことで自分の中にどんな変容があったかを生徒にきいています。“海がくれるもの”は学年と共に深く大きくなっていきます。

――海洋教育パイオニアスクールとして、東京大学と連携した活動も行っています。

東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センターとの間で、海洋教育プログラムの発展のために相互協力しています。東大の教授が年に1度、生徒に向けて講義をしてくれます。

 

大学寄与講座

そこで興味を持った生徒が独自にプロジェクトチームを組んで、研究室を訪ねたり、実験器具を貸してもらったりしながら探究活動を行っています。これが先ほども話にあがった「海洋人間学」の活動です。全国の海洋教育に携わる教育関係者が集まる「海洋教育サミット」にも参加しています。

私たち教員は教室などの箱を提供するだけで、何をやるかはすべて自分たちで決めています。年間40回ほど活動があるので部活のようなものですね。現在は10人前後のチームが1つだけですが、今後は何チームもできるように新たな仕掛けをしていきたいと考えています。

海の近くで独自の進化を続ける逗子開成で楽しみながら新しいことに挑戦しよう

――こうした活動ができるのも近くに海があるからですよね。風間先生が海に近い環境の良さを感じるのはどんな時ですか。

海に出た時には一週間のストレスが溶け出す感じがします。海には情感に訴える何かがあると思っていて、そうした「癒やし」や「リラクゼーション効果」がある学校環境というのは、逗子開成以外にはあまりないと思います。

海は波風があるのでヨットで沖に出ると大きな声を出す必要があります。そのことでスッキリできる面もあると思っていて、生徒にも「嫌なことを思い出しながら声を出してストレスを発散していけよ」と声をかけています。海は必ずしも楽しいだけではありません。自然は時には猛威をふるうもの、ということを逗子開成はしっかり学べる学校です。「海を使ってやろう」という気持ちではなく、自然な形で海と付き合うようにしています。

 

放課後の逗子海岸。こんな風景と波音が365日身近に。この環境が「志、雲より高い生徒」を育てるのに一役買っているのは言うまでもない。

――最後に、逗子開成のことが気になっている人に向けてメッセージをいただけますか。

これだけ海に近い学校は他にないと思います。逗子開成は恵まれた環境を生かしながら独自の路線で進化を続けています。

新しいことにチャレンジする勇気をもともと持っている人はもちろん、「一歩踏み出す勇気が欲しい」と思っている人も、逗子開成に来たら楽しめると思います。背中を後押ししてあげることはできるので、いずれそうなりたいと思っている人にも来てほしいですね。「いまは泳げないけど、楽しそうな学校だから入りたいんだ」というのは大歓迎です。「どうぞどうぞ、泳げるようになるからね」と伝えてあげたいですね。

逗子開成に来ることで、泳げないことに関しては確実に1つできるようになるわけです。できなかったことができるようになる。逗子開成で中高時代を過ごす中で、そういう経験をたくさんしてもらえればと思っています。

 

校地からは国道越しに逗子海岸を望む

 

◎取材後記

何度も笑いながら自然体でお話をしてくださった風間先生。生徒のことをいつも気にかけている様子が伝わってきて、こういう先生と一緒に過ごしたら子どもたちは楽しいだろうなと感じました。

風間先生ご自身も神奈川にある男子校の出身とのことで、男女別学の良さも話題にのぼりました。神奈川県には約10校男子校がありますがうち3つは全国規模の超進学校(栄光学園・聖光学院・浅野学園)、残りも上位進学校が数校続き県内男子校市場は決して進学に長じているだけで優位に立てるものではありません。

逗子開成は海に面した自然豊かな環境と、生徒をそのまま受け入れてくれる先生たちのもと、自分の興味や関心を自由に深めていける学校です。

【都内からもアクセスがいい全国有数のリゾート地にありながら、進学実績も非常によい】こういった学校は全国でも類がないのではないでしょうか。恵まれた自然環境の中、豊かな人間性を育みつつ、一生に渡り学び続ける姿勢を身に付けるーーー。編集部ではこの「総合力」が逗子開成最大の魅力であり、都内や県内の競合校との違いだと考えています。

ぜひ一度、説明会などに足を運んで風間先生とお話をしてみてください。楽しい学校生活の様子が伝わってきて、きっと逗子開成に行きたくなると思いますよ。

 

逗子開成中学校・高等学校

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『神奈川私立男子中学校フェア2020』開催
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