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グローバル化で進む国際学生寮の設置
社会のグローバル化の進展に伴って、近年は多くの大学がグローバル教育に力を入れています。国際系の学部を新設したり、学生の海外留学を支援したり、海外からの留学生を増やしたり、その手法はさまざまです。最近では、外国人留学生と日本人学生が共生するタイプの学生寮を設置する大学が増えています。
今どきの学生寮の中でも代表的なのが、早稲田大学の国際学生寮「WISH」です。東京・中野区にあり、872名が収容できる大規模な寮です。
部屋は全室個室ですが、4人の寮生が「ユニット」を組み、リビングはユニットの4人で共有します。プライバシーを保ちながらも、多様なバックグラウンドを持つ寮生同士が普段から交流できる空間です。
ただ単に生活するための建物ではないのが最近の学生寮の特徴です。早大のWISHでは「SIプログラム」という独自の教育プログラムがあり、外国人留学生を含めた寮生がグループワークなどを通して課題に取り組みます。このプログラムを目当てに入寮を希望する学生も多く、海外留学に向けてのステップにもなっているようです。
大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)には、「APハウス」という学生寮があります。寮生は世界中から集まった約1,300人。そのうち海外から来た学生が7割を占めています。
日本人学生にとっては、日本の大学であるにもかかわらず少数派となるわけで、国も人種も宗教も、もちろん生活習慣も違う仲間と生活をともにする中で、多様性を学ぶ場となっているようです。
「ランドマークタワー」が見える神奈川大学の新しい国際学生寮
神奈川大学にも2020年4月に新しい国際学生寮が誕生します。これまでも国際寮はありましたが、新しい国際学生寮は「まちのような学生寮」をコンセプトに、「外国人留学生と日本人学生が共同生活を送り、多様性の中で国際的な感覚を養う」としています。7月22日にその建物が完成したということで、「落成式」に行ってきました。
どのような点が「まちのよう」なのか、レポートしてみたいと思います。
この国際学生寮は、神奈川大学の横浜キャンパスから徒歩6分の場所に建てられました。横浜市営アパートの跡地なので、敷地面積としては十分です。窓からはみなとみらいの「ランドマークタワー」が見え、「ザ・横浜」が実感できるロケーションです。
4階建の建物の中には多目的スタジオや和室、課外活動のための部室があり、それがワンフロアの中に配置されています。最上階までの吹き抜けがあり、各階から別の階が見渡せるのが印象的です。仲間の顔がよく見えて、一体感が生まれそうな空間だと感じました。少人数で作業や会話ができる「ポット」というオープンスペースが19カ所も設けられていて、寮生が出会い、活発に交流する様子が目に浮かびます。
気になる居室部分ですが、2階以上のフロアに209部屋が配置されています。その半数は海外からの留学生が入寮する予定ということです。
外国人学生と日本人学生が行き交い、交流できる空間は「まちのような学生寮」のコンセプトにピッタリだと感じました。
さまざまな思いが詰まった学生寮
この日の落成式で挨拶に立った神奈川大学の牧内良平理事長は、自身の学生時代の寮生活を振り返り、「同じ釜の飯を食った仲間とは今でも格別の関係にある」と話しました。
その上で「この国際学生寮は素晴らしい環境が用意されていますが、与えられた環境に受け身になるのではなく、自主的に運営する委員会などを作って、自発的に企画したり、地域貢献などをしていってもらいたい」と語りました。
また兼子良夫学長は「来年の国際日本学部の設置や、再来年のみなとみらいキャンパス、さらには2028年の学園100周年につながるプロジェクトです。この国際学生寮を通じて、未来に向けた共生と寛容な心を持った良識ある国際人を養成していきたい」と話しました。
実はこの国際学生寮、神奈川大学の工学研究科建築学専攻を2010年に修了した萬玉直子さんの監修で設計されました。落成式で萬玉さんは「母校のプロジェクトに関われたことを感謝しています。私自身の学びの機会ともなりました」と語りました。卒業生の思いも詰まっています。
兼子学長の言葉にもあった通り、神奈川大学には来年4月、「国際日本学部」が設置され、再来年の2021年には「みなとみらいキャンパス」が開設されます。このキャンパスには国際日本学部のほか、既存の外国語学部と経営学部が移転します。経営学部は同時に「国際経営学部」に名称を変更する構想で、グローバル系の3学部がみなとみらいキャンパスに集結することとなります。
新しい国際学生寮が、これらのグローバル化の一環として、有機的につながっていくことが期待されます。