【2017年度大学就職力データ③】有名企業の就職に強い、女子大伝統校の実力

【2017年度大学就職力データ③】有名企業の就職に強い、女子大伝統校の実力

女子受験生の4年制大学を目指す傾向は高まる一方だ。文部科学省が公表している2017年度版の学校基本調査(速報)によると、17年度の大学学部の女子学生は前年を1万5000人上回る115万6000人となり、全学生に占める占有率は44・8%だった。人数と占有率ともに過去最高を更新する数値だ。

こうした女子の4年制大学志向の高まりを受け、総合大学における女子の占有率が高まっている。一般入試の合格者に対する女子の占有率を1997年と2017年で比較してみると、早稲田大が25%→36%、慶應義塾大が24%→30%、上智大が37%→47%、明治大が21%→35%、法政大が22%→35%などとなっており、大規模総合大学を中心に、女子の占有率が大幅に上がっていることが分かる。

一方、同時期の女子大の入試状況に注目すると、総合大学のような女子受験生の伸びは感じられない。一般入試において実質倍率(受験者数÷合格者数)が上がっている大学は多くないのだ。東京の津田塾大や東京女子大、日本女子大。関西の京都女子大、同志社女子大、神戸女学院大といった東西の女子大御三家も例外ではなく、実質倍率はほぼ横ばいで大半が2倍台。中には大幅に実質倍率が下がっている大学もあるのだ。

入試の倍率が下がっても高い就職力は変わらない 

女子の4年制大学志向の風向きは総合大学に向いているわけだが、そんな時代だからこそ、女子大のお得感が際立つ。なぜなら、入試のハードルは下がっていても、就職における女子大の優位性は高いままだからだ。大学通信が全国の大学を対象に行っている就職状況調査の17年卒版によると、大学全体の平均実就職率が87・6%(就職者数÷《卒業者数−大学院進学者数》×100で算出、以下同じ)なのに対し、女子大の平均実就職率は90・3%と3ポイント近く上回っているのだ。

このように女子大の平均実就職率が大学全体の実就職率を上回るのは毎年の傾向であり、08年のリーマン・ショックを契機として起こった、大学生の就職状況が厳しい時代でも変わることはなかった。こうした女子大の就職力の高さの要因について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんに聞いてみた。「学生の面倒見の良さが女子大の高い就職率を支えています。その背景には、志願者の減少に対する危機感から、キャリア教育に力を入れていることがあります」

歴史に裏付けられた就職力が有名企業に効く 

女子大の就職力を、有名企業400社の実就職率ランキングから検証してみよう。このランキングの特徴は、その大半が伝統校だということ。ランキング上位校の実就職率は、1位の東京女子大から津田塾大、聖心女子大、日本女子大、学習院女子大、白百合女子大、神戸女学院大、フェリス女学院大までが20%以上と、高い数値になっている。

女子大伝統校の就職力の高さについて、駿台教育研究所の石原さんは、こう説明する。「女子大の伝統校は昔から有名企業の就職に強く、中堅社員にOGが数多くいる強みがあります。法政大や明治大などの女子が増えているのは最近のことなので、女子大ほど中堅社員のボリュームは厚くないでしょう。大学と同様に後輩に対する卒業生の面倒見の良さも、高い就職状況につながっているのです」 OGの活躍が就職力に直結するのは、多くの女子大の伝統校に共通する傾向といえる。

就活コンサルタントは、企業側からみた女子大の優位性について、こう話す。「長い歴史の中で、女子大の伝統校は多くのOGが実社会で活躍しています。人事担当者は失敗をしたくないので、実績のある大学の学生を選ぶ傾向にあります。こうした傾向は大企業になるほど強くなるため、採用実績が多くかつ優秀な学生を輩出する女子大の伝統校が優位になるのだと思います」 有名企業に強い女子大は、メガバンクの就職者が実就職率を押し上げている大学が多く、3大メガバンクのみを対象として実就職率を算出すると、白百合女子大の7・2%を筆頭に、学習院女子大6・3%、昭和女子大と聖心女子大が5・9%、東京女子大5・1%、大妻女子大5%、神戸女学院大4・5%など、高い割合で就職している大学が数多くある。 ランキング上位の女子大と同程度の実就職率の大学には、学習院大(30・6%)、青山学院大(29%)、関西学院大(28・4%)、明治大(28・2%)、立教大(27・6%)など、東京と近畿圏の難関総合大学がある。これらの大学とランキング上位の女子大の難易度を比較すると、さらに女子大のお得感が増す。

駿台予備学校が実施する駿台全国マーク模試の難易度(※原則として募集人員の多い日程・方式から、学科の最高値を採用)によると、東京女子大の現代教養学部が57、日本女子大と神戸女学院大の文学部がともに55となっている。それに対し、明治大の文学部が64、青山学院大と関西学院大の文学部がともに61などとなっている。ランキング上位の多くの女子大は、有名400社の実就職率が難関総合大と遜色ないのに難易度は低いという、お得感があるのだ。

有名企業に総合職として多数就職する女子大も

その昔、女子大からの就職というと、結婚までの腰掛けと言われる時代があったが、現代の伝統ある女子大は、男性社員と対等に働くことが求められる総合職に就く学生が多い。津田塾大は17年卒の学生の9割が総合職もしくは専門職として就職している。このような就職状況について、同大のキャリア支援担当職員は、こう話す。「7割が総合職で2割が専門職という割合は雇用機会均等法が施行されて以来変わらない傾向です。卒業生の職場経験を聞く中で、在学生は自然と卒業生に惹かれるようになり、そうした3年生や4年生を見ている1・2年生も影響を受けるという図式ができ上がっているのです」

伝統の力が大きいのは、東京の女子大御三家の残る2校も同じ。東京女子大と日本女子大ともに、多くの卒業生が専門職や総合職として就職している。京都女子大や同志社女子大、神戸女学院大といった関西の女子大御三家にあっても、同様の傾向であろう。

女子大は比較的規模が小さな大学が多く、学生や学部の多様性などの面では、総合大学に見劣りする面がある。しかし、面倒見の良さや少人数であるがゆえに濃密な人間関係が構築できる女子大ならではの良さがあり、その延長線上には良好な就職状況がある。倍率や難易度に比べて就職力が高いお得感のある女子大は、女子受験生の志望校としてもっと注目されていいのではないか。

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