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進学実績著しい広尾学園は、パソコンやタブレット端末を活用したICT教育のパイオニア校としても知られる。同校の金子暁氏に、ICT教育を成功に導く秘訣を聞いた。
教室をのぞくと、生徒たちが自分専用の情報端末を広げ、情報収集や検索をしながら授業を受けていた。ICTが授業風景にとけ込み、年間100校以上が見学にやってくる理由もうなずける。
導入の責任者、金子暁氏は語る。
「校内ならどこでもネットにアクセスできるWi︱Fi環境のもと、先生と生徒のやり取りや連絡事項の伝達にも用いますが、英語の発音チェック、共同でミニドラマを作成するなど、生徒たちのアイデアで生まれた活用法も多い」
医師や理系研究者を志す医進・サイエンスコースの生徒たちは、端末で海外の英語論文も読む。
ICTが本格化したのは、クラウドサービス「Google Apps」を導入してからだという。メールから課題提出、文書やプレゼン作成、共同作業ほかがすべてこなせ、利便性から生徒が一斉に使い始めた。このアプリと出合ったことが大きかったと、金子氏は振り返る。
「導入により学習効率は高まり、その場で情報収集できるので、ウィキペディアレベルの授業は意味をなさなくなりました。高度な内容が先生に求められ、授業の質は格段にアップしました」
情報があふれるネット社会だが、本当に価値があり、役に立つ情報とは何か。情報リテラシ
ーが身につけられるメリットも、ICT教育にはあると金子氏は強調した。
【導入の目的を明確にすべし】
広尾学園の躍進を支えるICT教育だが、全国を見渡しても苦戦する学校がほとんどなのが実情だ。
「端末は一人一台、Wi︱Fi環境も最低条件。コンピュータ室に端末を数十台用意したくらいでは、うまくいくはずもありません」
さらに導入する際、どんな位置づけで用いるかを考えておかないと、使いこなせないだけでなく、逆に振り回されてしまうと続けた。ただICT機器を入れれば済むというものではない。
「教育内容を充実させ、学習を高度化させる土台だと決めて出発しました。それ以外のことは、たとえできたとしても手を出しません」
さてICTで心配なのが、ネットイジメなどのトラブルだろう。本校では端末の設定を一括管理し、アプリの追加やダウンロードができない機能制限も加えている。
「音楽は聞けないし、ゲームも楽しめない。学習に特化しているので、特別な問題は起きていません」
今ではICTの模範校のような広尾だが、正直なところ面倒で取り組みたくなかったそうだ。
「すべての改革に通じますが、教師の都合で動いている学校に成長はありません。生徒の未来を最優先すれば、採用するしかない。そう考え重い腰を上げました」
学習効率を飛躍的に高め、生徒を伸ばすICT教育。そろそろ本腰を挙げて取り組む時期だろう。