一筋縄ではいかない、グローバル系学部の選び方

一筋縄ではいかない、グローバル系学部の選び方

【2019年最新記事はこちら!】養成が急務なグローバル人材そのルートは多様化している

ボーダレス化する社会のどの局面を切り取るかで、グローバル系学部の性格は変わる。ベースとなる語学力も求められるレベルは大学によってまちまち。
ひとことでグローバル系学部と言っても、その内容は大学によって大きく異なる。


グローバル系学部に注目が集まると同時に、学部の設置も進んでいる。過去にも国際系学部の人気が高かった時期があったが、当時は国際経済なら社会科学系、国際文化なら人文系と、それぞれの系統の一分野と見られていた。一方、現在は留学の必須化や英語の授業など、グローバル社会での活躍を前提とした学部が中心となっている。

【多様なグローバル系は学部内容の十分な精査を】

人気が高いグローバル系学部だが、この系統から生徒に適した学部を選ぶのは意外に難しい。最初に引っかかるのは、名称だけで学部の内容が判断しにくいこと。

この系統は、文系から理系まで、多様な分野を網羅しているので注意が必要なのだ。例えば、学習院大が今春開設した国際社会科は、法律、経済、経営、地域研究、社会学といった社会科学系の5分野を総合して、国際的なビジネスマンの養成を目指す学部だ。

下の「主な国際・外国語系学部」を見ると、人文系と社会科学系の両方にまたがる系統が最も多く、東京外国語大・国際社会、青山学院大・国際政治経済、関西学院大・国際、立命館アジア太平洋大・国際経営などがある。人文系は大阪大・外国語、神奈川大・外国語、岐阜聖徳学園大・外国語、関西大・外国語など外国語系が中心となっている。

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カバーする分野がさらに広がり、文系と理系はもちろん、大学によっては芸術系までフォローする学際系もある。今春開設した千葉大・国際教養は、文理融合型で留学を重視する、国立大初の国際教養系学部だ。スーパーグローバル創生支援でグローバル化牽引型に採択されている同大にとって、大学全体で進めるグローバル化の核となる学部だ。

この系統の草分け的な存在は、教養学部のみで構成される国際基督教大。

単科大ながら、学部の中にはを30超えるメジャー(専修分野)があり、関心がある分野を見極めた上、3年次になる前の段階でメジャーを選択する。その際、一つのメジャーを選択するほか、二つのメジャーを同じ比率で履修するダブルメジャーと比率を変えて履修するメジャー、マイナーの3種類の選択方法がある。学部名に国際はつかないが、50以上の国と地域からの留学生がいるグローバルな学部だ。

来年新設される学部にも注目しておこう。国立大では、神戸大が国際文化と発達科を統合して、海外留学や体験学習が必須の国際人間科を新設する。グローバル社会で起こりうる、災害や民族対立、経済格差などの課題を解決し、グローバル共生社会の実現に貢献できる人材養成が目的だ。

私立大では、東洋大が国際と国際観光、情報連携の3学部をまとめて新設する。国際はビジネスの世界でイノベーションを起こせる人材、国際観光はグローバル市場化する観光業界で即戦力となる人材を養成する。情報連携はIT技術を介したシステムや人間の連携を目指し、将来的に留学生比率を10%から15%とする構想がある。

【オールイングリッシュについていけるか見極めが重要】

グローバル系学部を志望する上で、次に押さえておくべきなのは、英語による授業の比率だ(下の表参照)。

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オールイングリッシュで全ての授業を行うのは、現在のグローバル系人気の引き金となった、国際教養大と早稲田大・国際教養。さらに、上智大・国際教養や法政大・グローバル教養、立命館大・国際関係のグローバル・スタディーズ専攻などがある。その他、語学のみ英語で行う名城大・外国語や、低学年時に英語力を育成した上で、専門科目を英語で行う愛知淑徳大・グローバル・コミュニケーションのようなケースもある。

入学直後から全授業をオールイングリッシュで行うのは、語学力が突出している生徒でないと厳しい。オールイングリッシュの授業頻度と語学力向上プログラムを突き合わせて、授業についていけるのか判断した上で志望校を選択しないと、ドロップアウトの危険性もある。

【期間、内容、奨学金制度など、留学制度も千差万別】

グローバル社会で活躍することを前提としたグローバル系学部は、留学が大きなウエートを占めるが、留学も時期や期間など、各大学によって異なる(下の表参照)。

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表中の大学の留学期間は、同志社大・グローバル・コミュニケーションや創価大・国際教養など、1年間が半数近くを占める。今春、開設した近畿大・国際も1年間だが、時期が一般的な大学と異なる。通常、語学力や一般教養を修得した後、2年次以降に留学をする大学が多いが、同大は1年次後期から留学に送り出す。2年次前期までの1年間、語学をはじめコミュニケーションや文化を学び、国際的なビジネス社会で通用する人材育成を行う。帰国後は語学力をさらに高めると同時に、専門教育に移行する。留学期間が半年という大学も、龍谷大・国際や関西外国語大・英語国際など数多くある。

留学期間以外にも、語学留学なのか深く専門分野を学ぶのか。また、高額な留学費用に対する奨学金支給対象者の人数や支給額など、大学によって留学制度は千差万別だ。

ちなみに、留学で気になるのは留年だが、多くの大学は単位の読み替えにより4年間で卒業できる。大学によっては、協定校との単位互換で、2大学分の学位を得られるケースもある。さらに、就職活動も気になるところ。3年次に1年間留学すると、3年次の3月にスタートし4年次の6月に選考開始という就活スケジュールに乗り遅れる危険性がある。しかし、留学経験者を対象に7月に選考を行う大手企業は数多くあるので、留学がデメリットになることはない。むしろ、企業は留学経験者を求めているほどだ。

留学から帰国後、身につけた語学力を錆びつかせないための施設を用意する大学もある(下の表参照)。

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留学生やネイティブ教員とのコミュニケーションを通じて、英語力の維持にとどまらず磨きをかけることもできる。こうした施設は、全ての学生が異文化コミュニケーション能力を鍛えられる学内留学の場であり、オールイングリッシュの授業についていけるよう、学生を個別にフォローするスペースとして活用する大学もある。

グローバル系の学部の中には、対象をアジアに絞るなど、志向する地域を限定するケースもある。大学によって性格が異なるグローバル系学部は、漠然と志望しているとミスマッチを起こしかねない。対象がグローバルだからこそ、受験生それぞれの志向に落とし込んだ志望校選択が求められる。

文/構成 井沢 秀・松平信恭(大学通信)

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