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日本経済の命運をかけた次世代半導体の開発、製造拠点の建設が進む北海道・千歳市。さまざまな国や地域から、多くの企業や人が集まることが予想される注目のエリアで、中規模校ならではの教育で理工系人材を育成するのが公立千歳科学技術大学だ。データサイエンスを活用しながら地域社会の課題解決を目指す同大の実践的な教育について、理工学部長の吉本直人教授に話を聞いた。
取材・文 松平信恭
理事・理工学部長
吉本直人(よしもと なおと)
工学博士。北海道大学大学院工学研究科電子工学修士課程修了。日本電信電話株式会社(NTT)を経て、2014年より千歳科学技術大学総合光科学部光システム学科教授。2019年より公立千歳科学技術大学理工学部電子光工学科教授、2022年より理工学部長。専門は、知識流通ネットワーク、光通信方式、ブロードバンド・ユビキタスアクセスシステム、光機能デバイス。
北海道の「理工系・産学連携」の中心
北海道の玄関口である新千歳空港のすぐ隣にキャンパスを構える公立千歳科学技術大学は、1学年の定員が240人の理工系単科大学。教職員と学生の距離が近い中規模校だからこそできる、学生一人ひとりに合わせたきめ細かな教育を強みとする大学だ。
理工系の大学として開学当初から数学やプログラミングの共通教育に力を入れており、e-ラーニングを活用した個々の学生の進捗度に合わせたサポート体制も充実している。社会や企業の関心が高まっているAIやデータサイエンスの分野についても、長年蓄積された理数教育の資産を活用しながら「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」としていち早く体系化されたカリキュラムを構築。専門分野での研究や卒業後のさまざまな仕事へ活用可能なツールとしての基礎的な知識や技術を全学生が学んでいる。
こうした基盤教育としての役割を果たすのは同プログラムの「リテラシーレベル」であり、情報系分野に進まない学生を含む全1年次生が必修だ。2年次以降に選択できる「応用基礎レベル」は、実験やプロジェクト型の学修を通じて、学んだ知識を生かしながら実践的な力を養うことを重視した内容となる。理工学部長の吉本直人教授は、実社会のビッグデータを活用した、社会と結びついた実践的な教育に力を入れていると話す。
「実験をして、データを取り、それを解析する、という理工系の研究の基本的なデータの活用方法自体は、昔から大きく変わっていません。ただ、今はバイタルデータや人流データといったビッグデータが公開されていて、データを通じて社会そのものを見ることができるようになりました。データサイエンスを学問として学ぶだけでなく、生成AIなどをツールとして使いながら社会について学び、社会課題の発見や解決に取り組むための力を高めてほしいと考えています」
実際の社会は複雑だ。教科書に出てくる「美しい」データと異なり、ビッグデータには雑多なものが数多く含まれている。そして、一見すると何の価値もないようなデータの中に、素晴らしい発見につながるデータが隠されていることもあるのだ。
だからこそデータを分析する上では、何よりも「多角的な視点」と「多様性の受容力」が大切になる。公立千歳科学技術大学がグループディスカッションなどの多様な意見に触れる中で学ぶ機会を数多く用意しているのは、イレギュラーで解釈の難しいデータに直面することがあっても、粘り強く、さまざまな角度から、一歩踏み込んだ見方ができる人に成長してほしいと考えるからだ。
「理工系の学問には絶対の真理や法則があり、答えは一つだと考えられがちですが、特に工学分野は限りなくアートに近い領域です。さまざまなクリエイティブなことができるようになった生成AIに対して最終的に人間が勝るのは、個性をベースとした創造性です。社会は複雑であり、10人いたら10通りの解決策があっていい。これからは、一人ひとりの個性がより一層問われる時代になることでしょう」(吉本教授)
AIを活用した課題解決 学生が地域の中で成長
AIやデータサイエンスに関する知識やスキルは、社会課題の解決へ活用することで真骨頂を発揮する。公立大学である公立千歳科学技術大学には地元の人々や近隣自治体から大きな期待が寄せられており、地域貢献活動の機会が豊富。学生の成長機会にもなっている。
たとえば、冬の北海道のインフラ維持に欠かすことができない除雪作業に関して、大学と千歳市が連携。住民から寄せられた最新の情報を加味しながら、除雪車を走らせる最適な経路をAIでプランニングすることで、効率的な除雪作業を可能にしている。
また北海道石狩振興局とは、道内市町村のブランディング戦略の策定に向けて連携。近年の人流データや過去のさまざまなデータを見ながら、AIを用いてどこに課題があるのかを検証。検証結果をベースに地域の人々とのディスカッションを重ねることで、今後どんな取り組みが必要になるのかを探っていく。
現在はAIやさまざまなツールが充実しており、それらを活用すれば自分で一からすべてをプログラムする必要はない。目の前の課題をしっかりと捉え、データを収集することさえできれば、多くのことを解決可能だ。興味のある学生が地域に役立つ課題解決へ加わるハードルは低くなっている。
「ものづくりや農業などに比べ、やったことがすぐに実装でき、結果のフィードバックも早い。学生は小さな成功体験の積み重ねで育っていくものであり、短い期間で達成感が得られるのは教育的なメリットも大きい。学生の自己肯定感を高めることにもつながっています」(吉本教授)
産学連携の機会が拡充 先端産業の集積地で学ぶ
公立千歳科学技術大学の位置する千歳市周辺では、さまざまなインフラの整備も進んでいる。次世代半導体の開発、製造を行うRapidus株式会社が千歳市内に半導体製造拠点の建設を進めるほか、周辺自治体でも太陽光発電や風力発電施設、大規模データセンターなどが整備され、先端産業を支える一大拠点として全国的な注目度も高い。同大では周辺企業との産学連携やインターンシップ、企業と結び付いた地域貢献などの取り組みを拡充させており、学生の学びの機会も広がっている。
半導体産業は非常に裾野が広い産業であり、半導体の評価や、半導体を用いたシステムやサービスの開発といった関連産業も多く含まれる。今後はこうした地元の企業群に対する人材供給にも力を入れていくという。
なお、同大の2023年度の就職率は98.4%。近年は情報系、IT系企業への就職者が多い。1年次からのキャリア形成プログラムをはじめ、4年間を通じた夢と適性に合わせたサポート体制で、就職の意思がある学生の全員就職を実現している。
公立千歳科学技術大学の最大の強みは、時代の流れに即応したプログラムを、きめ細かく、一人ひとりに提供できること。教員と学生の距離が近く、教授会の意思決定も早いからこそ可能な、中規模校ならではの特長だ。吉本教授は、これからますます多様になる社会で活躍するためにも、自分の個性を大切にしながら学んでほしいと言う。
「『自分のこういうところを伸ばしたい』という意欲を持った人に、道内・道外問わず全国から入学してほしい。各学生のキャリアプランに沿って、一人ひとりと並走しながら、私たちが4年間しっかりと教育するので、その気持ちさえあれば大丈夫です。社会と連携した学びが充実しているのが、大規模大学にはない本学ならではの魅力。そうした環境で学びたいと考える、全国・全世界の人を待っています」