幅広い視野を養うリベラルアーツの伝統を現代につなげる5学園の教育

幅広い視野を養うリベラルアーツの伝統を現代につなげる5学園の教育

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複雑化した現代社会の諸課題を、特定分野の専門知識のみで解決するのは難しい。こうした認識が広がる中で、さまざまな視点や考え方に触れられるリベラルアーツ教育が見直されている。日本で最初にリベラルアーツ教育を行った旧制高等学校の歴史を紐解きつつ、その伝統を現代に引き継ぐ5学園(学習院、成蹊、成城、武蔵、甲南)の最新の取り組みを見てみよう。

文 松平信恭

旧制高校の時代から続く伝統のリベラルアーツ教育

今、リベラルアーツ教育が見直されている。世界が複雑化したことで、ビジネスや社会課題に取り組む上で求められる能力も変化。特定分野の専門的な知見だけでなく、「問題全体を見渡せる幅広い視野」や「他者と協働する力」の重要性が再認識されている。

学習院、成蹊、成城、武蔵、甲南の5学園は、いずれも戦前の旧制高等学校をルーツとしており、リベラルアーツを重視した教育を実践している点が共通している。旧制高校は、教養や良識、協調性、行動力などの「総合的な人間力」を養う教育を、日本で最初に行った教育機関。その伝統を引き継いでいる5学園には、他大学と一線を画す独自の校風や魅力が備わっている。旧制高校時代の教育は、現在の5学園の教育にどうつながっているのだろうか。

旧制高校は当時、帝国大学で専門教育を学ぶための準備を行う「予科」としての役割を果たしていた。帝国大学は日本の近代化を担うリーダーの育成を目的としており、その帝国大学への入学が実質無条件で認められていたことからも、旧制高校の教育が「社会の仕組みづくりをリードできる素養ある人材」の育成に力を入れていたことは想像に難くない。旧制高校へ進学できたのは同世代の約1%と非常に狭き門で、「高等学校」という名称は同じでも、その役割は今の高校とは大きく異なるものだった。

旧制高校の歴史は、東京大学や京都大学などの前身である第一から第八までの「ナンバースクール」と呼ばれる政府管轄の学校が、明治期に設置されたことを端緒とする。大正時代の1918年に公立、私立の設置も認められるようになると、私立の武蔵、甲南、成蹊、成城や、宮内省管轄の学習院が相次いで新設された。

「リーダー養成」のための文理横断の学びと語学教育

旧制高等学校では幅広い教養や指導者としての人格を養うために、古文、漢文、歴史、外国語、文学、倫理学、論理学など、文理を問わず多様な科目が展開された。5学園では7年(学習院は8年)間の一貫教育が行われ、現在の中高一貫教育のルーツともなっている。

語学教育に重点が置かれていたのも特徴で、学科課程には英語、ドイツ語、フランス語といった外国語科目が組み込まれ、全授業時間の3分の1を占めるほどだった。多くの時間が外国語教育に割かれたのは、戦前の専門教育が欧米の原書を教科書としていたため。最先端の教養や知識を吸収するには、まずはその国の言語を学ぶことが必要だった。だからこそ5学園は、設立以来、現在に至るまで国際教育を重視。社会のグローバル化が進展して国際教育への注目が高まるずっと前から、世界に開かれた思考を養うための教育を続けてきた。

1930年代に撮影、ドイツ語講師(前列中央)と旧制高等学校の生徒。
資料提供:甲南学園

また、他の旧制高校にはない5学園の特色として、ナンバースクールの象徴だった「バンカラ(学生服、破帽、下駄、マント)」なスタイルを継承せず、紳士的でスマートな文化を持っていたことが挙げられる。イギリスのパブリック・スクールやドイツのギムナジウムを模範として、単なる「物知り」でなく「自分で考え、創造できるリーダー」の育成を目指す、現代にも通ずる新しいリベラルアーツの形を作り出した存在だった。

1935年撮影、試験を受ける高等科生徒、背後の黒板にはドイツ語の文章が書かれている。
資料提供:武蔵学園記念室

都会の中の緑豊かな環境で多様な学生と交わり学ぶ

戦後、旧制高等学校のほとんどは新制大学へ再編され、リベラルアーツ教育は「一般教養」として形を変えて大学教育に残った。ただし、社会が変化する中でより専門的な「実学」が求められるようになったことで、平成以降の大学教育では「専門教育」を重視する傾向が強まっていく。

一方で、5学園をはじめとする旧制高校を前身とする大学はリベラルアーツの伝統を捨てることなく、リーダーに必要とされる力を養うための教育を継続。現在、その価値が再評価を受けていることは前述の通りだ。

5学園はいずれの大学も、人と人とのつながりから生まれる学びや、ゆとりある学びの空間作りを大切にしているが、学生同士が交わりながら学ぶ伝統は旧制高校時代の寮生活に起源がある。当時の寮生活は、西洋の哲学書や思想書から万葉集などの日本の古典まで、古今東西の書物を読みながら、それぞれの意見や信念が活発に議論される空間だった。現在でも学部を越えた文理融合の学びや、ゼミ、研究室、プロジェクト活動を通じた少人数教育などに力を入れることで、さまざまな背景を持つ学生同士が交わる機会を各大学が提供している。

都会にありながら緑あふれる環境も5学園共通の魅力。空間的ゆとりのあるキャンパスにはさまざまな活動に使用できるオープンスペースが豊富に用意されるなど、学生生活を快適に過ごせる環境が整っている。学内で過ごす時間が増えることで、学生同士のコミュニティの醸成にもつながるなど、リベラルアーツ教育の一つの基盤として大切な役割を果たしている。

では100年以上続くリベラルアーツの伝統は、現在の教育にどのような形で受け継がれているのか。ここからは各大学の最新の取り組みを見ていこう。

学習院大学 「文理融合科目」の設置で分野を越えた学びを後押し

学生と教職員がコミュニティの一員として対等に議論し、同じ興味を追究するのびやかな校風を大切にする学習院大学。5学部17学科の全学生が、歴史的建造物と最新鋭の施設が調和するオール・イン・ワンキャンパス「目白の杜」で学んでいる。

専門分野の垣根を越えた最先端の知的交流を促す文理融合科目や、興味に応じて他学部の科目履修が可能なカリキュラムなど、ワンキャンパスの環境を活かして幅広い学問分野に触れられる機会を豊富に用意。グローバル教育に関しても単なる語学研修に留まらず、異文化体験、現地の大学や研究所の視察、フィールドトリップなど、多面的なプログラムを提供。学生の学ぶ意欲を後押しする仕組みや制度を整えている。

特徴的な文理融合科目の一つが、宇宙ベンチャーとの産学連携でカリキュラムが開発された「宇宙利用論」。国際宇宙ステーションを活用した宇宙ビジネスの創出や、宇宙の持続可能な利用機会について、あらゆる視点から学んでいく科目だ。また「生命社会学」では、生命科学の発展と超高齢社会の到来で生じる社会、経済、法律、倫理などの問題をテーマに、文系・理系の混合グループで考えを深めていく。このような専門性と学際性を有機的につなげる教育で、幅広い知見を身につけた「T型人材」を育成している。

成蹊大学 専門+αの「副専攻制度」自分だけの学びをデザイン

成蹊大学は、自由な発想の基礎をつくる学びとして「外国語」「技能」「教養基礎」「持続社会探究」の四つの科目群からなる「成蹊教養カリキュラム」を展開。文理問わずさまざまな学生と学び合う中で、広い視野と教養を身につけられる大学だ。

所属学科の専門教育に加え、自分の興味・関心やニーズに合わせて+αの学修を進められる「副専攻制度」も魅力の一つ。ワンキャンパスにすべての学科が集まっているからこそ、多彩な組み合わせで自分だけの学びをデザインすることが可能だ。

文理融合の特徴的なプロジェクトの一つが、産学連携の人材育成プログラム「丸の内ビジネス研修(MBT)」。ビジネスの中心地である東京・丸の内を舞台に、多数の企業の協力のもとで約7カ月に及ぶ学内研修やインターンシップに取り組むプログラムだ。文系・理系の学生が一緒になって研修や討論に取り組む徹底した実践体験で、他者と協働して課題を発見、解決するための力を身につけていく。

各学部・学科に所属しながら学部横断型の少人数授業でグローバルに学ぶ、定員30人の「グローバル教育プログラム(EAGLE)」にも注目だ。実践的な英語力強化から、留学、帰国後のキャリアデザインまで、大学4年間を一貫して徹底的にサポート。国際社会を牽引できる人材を育成している。

成城大学 「サポーター制度」が学生同士の助け合いを醸成

成城大学の特色の一つが、学生が授業外の活動として他の学生を支援する「サポーター制度」。

現在は、キャリアに関するプログラムの企画・運営などを行うキャリアサポーター、学生同士の学習支援を行うピアサポーター、留学生支援や交流イベントを行う国際交流サポーターなど合計6つのサポーター団体が活動している。全学部・全学年の学生がワンキャンパスで学び、学部・学科や学年を越えた関わりが生まれやすい大学だからこそ、大学生活での困りごとを学生同士で助け合う文化が根付いている。

国際教育としては、留学や海外インターンシップに挑戦するための力を養う「SIEP(成城国際教育プログラム)」というプログラムが特徴だ。英語力の向上に加え、留学先の地域研究や海外から見た日本の姿など、幅広い教養を修得。実際の留学をより一層充実したものにするためのプログラムとなっている。

また、成城大学は人文・社会科学系の4学部からなるが、全学共通教育科目としてデータサイエンス科目群を設置。全学部の学生がそれぞれのレベルに応じて、ビッグデータなどの多種多様な情報を効果的に活用するスキルを身につけられる。それぞれの専門知識をベースに、データサイエンスの力を加えることで、これまでにない独創性を備えた教養人を育成している。

武蔵大学 25年に新2号館が完成!!学生の「居場所」が拡充

武蔵大学は、特定の領域に特化した「専門知」に加え、社会や学問全体を俯瞰的に理解する力である「総合知」の獲得にも力を入れる大学だ。複眼的知識を身につけるために「文理融合」の学びを重視しており、共通科目として数多くの理系科目を展開している。全学部の学生が履修可能な副専攻として新設された「データサイエンス副専攻」では、統計学やプログラミングの基礎知識を修得した上で、ビッグデータの解析や実際のデータ活用を学ぶ。異なる学部の学生が企業の課題に協働で取り組む「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」も特徴的だ。

キャンパス内留学ができる参加体験型の学習空間のほか、協定留学、学生海外研修など、実践的な英語力の養成や異文化体験の機会も豊富に用意。海外インターンシップなど、各学部のグローバル科目も充実している。

キャンパス内には「ラーニングコモンズ」「グループスタディルーム」など、気分や用途にあわせて自由に学べるオープンスペースが充実。25年完成予定の隈研吾氏設計の新2号館には、イベントホールにも利用可能な食堂、屋外テラス、ラウンジ、オープンスペースなど、学生の居場所となる空間を多数配置。他の学生との活発な交流で新しい発想や多様な価値観に触れるなど、互いに刺激を与え合う環境が整っている。

甲南大学 専門の枠を越えた学びで個性を伸ばす「彩り教育」

甲南大学は開学以来、良質な社会常識や倫理観、品格などの人間性を養う「人物教育」を大切にしてきた大学だ。充実した全学共通教育を活用しながら、専門の枠を越えて関心の高い分野への学びを主体的に深め、多様な考え方や価値観に触れる「彩り教育」を展開。幅広い専門領域を有する、学生数約9000人の「ミディアムサイズの総合大学」だからこそ可能な特色ある教育によって、各学生の才能を磨き、個性に彩りを加えている。

ブックカフェやラウンジ、プロジェクトルーム、スタジオなどの設備が揃う岡本キャンパスの「iCommons」をはじめ、学生同士が自由に活用し、交流できるスペースも充実。授業では評価しきれない個性ある挑戦を大学が評価・認定する「KONANサーティフィケイト」など、多様な経験を積める環境が整う。

2024年には、2カ国以上への「ダブル留学」を卒業要件とするグローバル教養学環を開設。1学年25人の少人数教育で、国際理解、社会科学、データサイエンスなどを学び、世界基準で考え、行動できるグローカル人材の育成を目指す。全学部・学環で留学ができるのも特色の一つで、学内での国際交流、短期留学といったプログラムの中から、一人ひとりのニーズにあわせたプランを提案。段階的なステップアップを重ねることで留学実現度100%を達成している。

リベラルアーツ5学園が進学相談会を開催
各大学の魅力や特色を学生に聞いてみた

6月16日に開催された「大学フェア2024東京会場」内で、リベラルアーツ5学園は合同で進学相談会を実施。学生相談ブースを担当した各大学の現役大学生に、①お気に入りのキャンパス施設、②印象に残る授業や活動、③学生同士のつながりを作るのに役立った大学の仕組み、についてコメントをもらった。
 

学習院大学 国際社会科学部 国際社会科学科 3年
私立(静岡県)西遠女子学園高等学校 出身
①法学部・経済学部図書センター:開放的な吹き抜けがあり、自習スペースも充実の落ち着く空間です。
②国際社会科学部の海外研修:実際の留学に加え、振り返りの授業を通しても視野が広がりました。
③オープンキャンパスで受験生に個別相談などを行う学生団体:所属学部以外のつながりができました。

成蹊大学 法学部 法律学科 3年
島根県立松江北高等学校 出身
①情報図書館:ガラス張りの個室閲覧室で集中して勉強ができます。書籍だけでなく、映像資料も充実しています。
②MBT(丸の内ビジネス研修):活動自体は大変ですが、社会人基礎力を養う貴重な機会となっています。
③大学運営に携わる学生スタッフ:大学の大きなイベントに直接関わる中で、友達の輪を広げられました。

成城大学 社会イノベーション学部 心理社会学科 2年
埼玉県立川口高等学校 出身
①旧中学校校舎をリノベーションした大学9号館:落ち着いた雰囲気で、集中して勉強に取り組めます。
②全学共通教育科目の自然科学:専門外の漁業や林業の学びが新鮮で、より広い観点で専門に向き合えるようになりました。
③学生目線で学習支援を行うピアサポーター:学部や学年を超えて同じ志を持った仲間を作れます。

武蔵大学 国際教養学部 グローバルスタディーズ専攻 3年
埼玉県立不動岡高等学校 出身
①ラーニングコモンズ(11号館):個人スペースもあり、他学生から刺激を受けつつ集中して課題に取り組めます。
②オーストラリアからの留学生との交流:文化や考え方の違いや、自分の英語力を知る機会となりました。
③Musashi Communication Village(MCV):居心地のいい空間で、学部・学年を超えたつながりができます。

甲南大学 経済学部 経済学科 4年
私立(愛知県)愛知高等学校 出身
①iCommons内のプロジェクトルーム:ゼミの発表練習、勉強、サークル活動など、便利に利用できます。
②ベーシックキャリアデザイン:発表やグループワークの力が身につき、キャリアを意識するきっかけになりました。
③ラーニングアシスタント活動:授業のサポートを通じて、先輩・後輩との深く広いつながりを築くことができました。

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