世界で通用する本当の「国際」を学ぶ│神奈川大学

世界で通用する本当の「国際」を学ぶ│神奈川大学

神奈川大学2020年、新たに「国際日本学部」を開設予定の神奈川大学。国際文化交流・日本文化・歴史民俗という3つの学科で、日本人が世界と自国の文化をより深く理解するための学びを提供する。この学部が目指すのは、グローバル社会に対応できるだけではなく、世界と日本、さらに地域を結びつけることのできる真の国際人材の育成だという。その内容について、同学部に就任予定のクリスチャン・ラットクリフ准教授にお話を伺った。

クリスチャン・ラットクリフ(Christian Ratcliff)
アメリカ・ワシントン州出身。中世日本古典文学および中世日本文化史を専門とし、当時の宮廷社会における和歌・蹴鞠など芸能の価値と役割について研究する。現在は同学の外国語学部・国際文化交流学科で教鞭を執る。

日本の名作古典に見る、異文化交流の難しさ

訪日外国人の飛躍的な増加を背景に、日本の文化や観光資源をPRしようと「おもてなし」「ものづくり」といったキーワードがメディアで喧伝されている。しかし「日本で良いとされているものが、そのまま海外でも評価されるわけではありません」と言うのは、神奈川大学外国語学部のクリスチャン・ラットクリフ准教授だ。彼は専門の日本中世文学から例を挙げて、こんな示唆に富んだ話をしてくれた。

「『紫式部日記』のなかで、朝早くに目覚めた紫式部に、藤原道長が和歌を一首詠むよう頼むシーンがあります。一見歌遊びをしているように映るので、日本の学生はさほど気にしませんが、アメリカの学生には非常に不評なんです。

このシーンの背景を説明すると、当時から名歌人として知られていた紫式部は道長の娘の教育係として雇用され、屋敷に住み込んでいました。そんな彼女に対して道長は、即興で詠むという難度の高いことを、いじわるにも起き抜けに要求しています。

またこの時代は、家族以外の男性が女性の顔を直接見ることは禁じられていました。雇用主の道長はそれを無視して彼女に近づき、無断で顔を見たわけです。地位も立場も彼女の方が圧倒的に弱いのは明らかですから、アメリカの学生には紫式部がパワハラもセクハラも受けてかわいそう、と受け止められるのです」

ラットクリフ准教授のことばを借りて補足すると、アメリカでは60~70年代からフェミニズム論やジェンダースタディーズが盛んで、人々の価値観に影響を与えてきた。一方、日本ではそういった論議はかなり遅れてやってきている。こうした受け手の国の文化的背景まできちんと理解していれば、その反応を予測し適切な解説を提供できるし、同時に彼らの視点から自国の文化を再発見・再検討することもできるという。

みなとみらいキャンパスで世界と日本を横断的に学ぶ

いわゆるグローバルな人材とは、外国語のスキルや海外留学経験の有無などで語られがちだ。しかし前述のように、自国のことば・文化・歴史などについて深い知識を持ちながら、世界の文化も広く理解し交流できることが本当の〝国際人〞なのではないだろうか──。そうした理念のもと、神奈川大学ではあらゆる角度で世界と日本について学べる3つの学科を擁した「国際日本学部」を来春新たに開設する。

同学部の英語名称はFacultyof Cross-Cultural and JapaneseStudies。国際交流だけでなく、多文化の価値を認め、日本の文化・歴史にも大きく目を向けているのが特徴的だ。多様な文化や価値観を理解し、足元にある「roots(根)」と広い世界に羽ばたく「wings(翼)」をともに学ぶ場となっている。

1つめの国際文化交流学科は、①文化交流コース ②観光文化コース ③言語・メディアコース ④国際日本学コースの4コースで構成される。1年次で各コースの入門科目を履修したのち、2年次から個々の関心に合わせてコースを決定し専門性を深めていく。

2つめの日本文化学科では、日本語や日本文学のほか、演劇、美術、伝統芸能からポップカルチャーまで文化についても幅広く学んでいく。またこの学科では、神奈川大学で初めて中学・高校の国語教員免許が取得できるようになる(教職課程認定申請中)。

3つめの歴史民俗学科では、文献講読のほかフィールドワークや資料館での実習など体験型の学びを通じて、歴史文化について実践的な知識・技能の習得を目指している。

どの学科に属しても国際交流の基本となる素養が身につくよう、「多文化共生論」「異文化コミュニケーション論」など学部共通の教養科目が多く配置されているほか、3つの学科の授業を横断的に履修できることも同学部の特徴だ。「3学科の学びをシェアすることで自分の専攻分野の視野を広げて、補完し合うことができるのです」とラットクリフ准教授はその狙いを語る。

また2021年には新たにみなとみらいキャンパスが完成し、それにともない国際日本学部も新キャンパスへ移転予定だ。古くから人・モノ・文化が行き交ってきた国際都市・横浜での学生生活は、世界と日本を学んでいく上で豊かな刺激をもたらしてくれるだろう。

近隣にはグローバル展開する企業の拠点も多く、産官学連携による複数のプロジェクトが既に進行中だという。さらなる国際化が進むこれからの社会に向けて、大学はどんな学びを提供しどんな人材を育てていくべきなのか。神奈川大学の新たな取り組みは、受験業界だけでなく企業や地方自治体からも熱い注目を集めている。

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