18歳人口100万人割れ 少子化の急激な進行により待ったなしの大学改革

18歳人口100万人割れ 少子化の急激な進行により待ったなしの大学改革

18歳人口の急激な減少に歯止めがかからない。大学の経営を直撃する人口減に対応するため、大学は受験生確保に向けて様々な改革を進めている。学部・学科の新増設やキャンパス移転、入試方式の変更など、生徒の志望校選びに直結する大学の取り組みについて見ていこう。

文 井沢 秀(大学通信)

2023年度の出生数は前年を4万3482人下回る72万7277人となり、8年連続で過去最少記録を更新。23年度の4年制大学の現役進学率57.7%を当てはめると、23年度生まれの子どもが大学に進学する42年の入学者数は41万4547人。23年の62万4215人を21万人下回ることになる。定員1万人規模の大学が20校なくなる計算だ。

このような状況の中、多くの大学が様々な改革を進める。「主な大学の学部学科改組・入試変更点」を見ると、そのトレンドの一つは、人材が払底している、デジタルに関する情報系の学部や学科の新設と言えそうだ。

改革の背景には、成長分野であるDX人材やGX人材養成のための学部・学科の整備を促す、文科省による「大学・高専機能強化支援事業」がある。25年度には、秋田大・情報データ科学や山形大・社会共創デジタル学環、神戸大・システム情報、帝京大・理工のデータサイエンス学科、金沢工業大の情報デザイン、メディア情報、情報理工、関西大・ビジネスデータサイエンス、松山大・情報などが新設予定だ。

情報系以外の分野でも理系シフトが進み、岩手大が獣医を新設し理工と農を再編、秋田大は理工を総合環境理工に改組。私立大では、愛知淑徳大が建築を新設し、追手門学院大は理工を設置する。

理系学部の女子枠の拡大も理系シフトの一環と言えよう。神戸大が工で女子枠を導入し、すでに実施している東京工業大や名古屋大は拡充する。26年度には京大や大阪大も理系の一部学部で女子枠を導入するとしている。

学生確保に向けて、キャンパスの利便性を高める大学も多い。東京理科大・薬は、千葉県野田市の野田キャンパスから東京都葛飾区の葛飾キャンパスに移り、龍谷大・社会は、滋賀県瀬田市の瀬田キャンパスから京都市内の深草キャンパスに移転。前出の追手門学院大・理工は大阪府茨木市の茨木総持寺キャンパスに開設する。

現在100万人台の18歳人口は35年度に90万人台になる。今が少子化問題を乗り切る最後のチャンスであり、大学改革が活発化している。生徒に影響する改革が大半なので注視しておきたい。

2025年度入試
主な大学の学部学科改組・入試変更点

表は2024年6月現在の情報で、今後変更になる可能性があります。
最新情報は各大学のホームページ等をご参照ください。

国公立大

大学名 主な変更点
室蘭工業大学 総合型選抜(昼間コース)Ⅰ・Ⅱに女子枠を新設
岩手大学 獣医学部に共同獣医学科を新設。理工学部は現行の3学科を「理工学科」1学科に改組。農学部を再編し食料農学科、生命科学科、地域環境科学科、動物科学・水産科学科の4学科8コースに
秋田大学 情報データ科学部を新設、理工学部を総合環境理工学部(応用化学生物学科、環境数物科学科、社会システム工学科)に改組
山形大学 社会共創デジタル学環を新設
福島大学 理工学群の総合型選抜に理系教育女性人材育成枠を新設
茨城大学 工学部(除く物質科学工学科、都市システム工学科)の学校推薦型選抜に女子枠を新設
筑波技術大学 共生社会創成学部を新設
東京大学 学校推薦型選抜の既卒者の出願可能な期間を高等学校等卒業後1年までに変更
東京科学大学 24年10月、東京医科歯科大学と東京工業大学を統合して開学。総合型選抜の女子枠を拡大
東京都立大学 システムデザイン学部電子情報システム工学科を電気電子工学科に再編
福井県立大学 恐竜学部(恐竜・地質学科)を新設
岐阜大学 応用生物科学部の2課程を応用生命化学科、食農生命科学科、生物圏環境学科の3学科に再編
名古屋大学 工学部化学生命工学科と機械・航空宇宙工学科の学校推薦型選抜で女子枠を新設
名古屋市立大学 医学部に保健医療学科を新設。看護学部は募集停止
京都大学 法学部の特色入試で後期日程を廃止し学校推薦型選抜を新規実施
京都工芸繊維大学 後期日程を廃止
神戸大学 医学部に医療創成工学科を新設。工学部情報知能工学科を改組しシステム情報学部を新設。同学部で学校推薦型選抜(女子枠)実施
奈良県立大学 総合型選抜を新規実施
和歌山大学 システム工学部の学校推薦型選抜に女子枠を新設、観光学部で後期日程を新規実施
島根大学 総合理工学部は現行の7学科を「総合理工学科」1学科に改組
下関市立大学 看護学部を新設
山口県立大学 国際文化学部に情報社会学科を新設、国際文化学部、社会福祉学部で総合型選抜を新規実施
北九州市立大学 国際環境工学部環境生命工学科を生命工学科に名称変更
宮崎大学 農学部を2学科(農学科、獣医学科)に改組、工学部で学校推薦型選抜(女子枠含む)を新規実施

私立大

大学名 主な変更点
国際医療福祉大学 保健医療学部に医学検査学科を新設
城西大学 理学部に情報数理学科を新設、化学科を化学・生命科学科に名称変更
千葉工業大学 工学部機械電子創成工学科を宇宙・半導体工学科に改組
大妻女子大学 千代田キャンパス(千代田区)にデータサイエンス学部を新設
慶應義塾大学 経済学部で学校推薦型選抜(指定校)を実施、一般選抜の募集人員変更(630人→600人)
実践女子大学 生活科学部生活環境学科を環境デザイン学部環境デザイン学科に改組
昭和大学 昭和医科大学に名称変更予定。27年に鷺沼キャンパス(川崎市宮前区)を開設予定
昭和女子大学 国際学部に国際日本学科を新設、英語コミュニケーション学科を国際教養学科に名称変更
駒沢女子大学 人間総合学群を改組し共創文化学部、空間デザイン学部、観光文化学部を開設
拓殖大学 政経学部に社会安全学科を新設
東京家政学院大学 共学化。現代生活学部を改組、生活共創学部(生活共創学科、こども教育学科)を新設
東京女子大学 現代教養学部を6学科(人文学科、国際社会学科、経済経営学科、心理学科、社会コミュニケーション学科、情報数理科学科)に改組
東京理科大学 薬学部を葛飾キャンパス(葛飾区)に移転。総合型選抜(英語資格検定+特定教科評価)を新規実施、学校推薦型選抜(公募制)は廃止
帝京大学 理工学部を改組し総合理工学科、データサイエンス学科を新設
日本女子大学 食科学部(食科学科、栄養学科)を新設
早稲田大学 社会科学部の一般選抜は共通テストと独自試験併用方式(総合問題型と数学型)に変更。商学部は一般選抜(英語4技能テスト利用型)を廃止。基幹理工学部は3学系募集を4学系募集に再編。人間科学部は一般選抜(文系方式/理系方式)を共通テストと独自試験併用方式(国英型と数英型)に変更。スポーツ科学部は一般選抜個別試験の小論文を総合問題に変更、スポーツサポート歴入試を実施
北里大学 獣医学部生物環境科学科をグリーン環境創成科学科に改組
フェリス女学院大学 学部改組でグローバル教養学部を新設
金沢工業大学 学部学科の新設・改組で6学部17学科に。情報デザイン学部、メディア情報学部、情報理工学部を新設
愛知淑徳大学 教育学部と建築学部を新設
龍谷大学 社会学部に総合社会学科、経営学部に商学科を新設。先端理工学部の環境生態工学課程を環境科学課程に名称変更。社会学部は深草キャンパス(京都市伏見区)に移転
追手門学院大学 理工学部を新設。茨木総持寺キャンパスに新校舎を開設し本部機能などを集約
大阪工業大学 情報科学部に実世界情報学科を新設
関西大学 ビジネスデータサイエンス学部を新設
桃山学院大学 桃山学院教育大学と統合。人間教育学部を新設
関西学院大学 共通テスト利用入試(1月出願)に「8科目型」を新設、理系全4学部で「3教科型」を新設。併願減額制度の対象入試を拡大
神戸女学院大学 人間科学部環境・バイオサイエンス学科を生命環境学部生命環境学科に改組
武庫川女子大学 環境共生学部を新設
岡山理科大学 生命科学部に医療技術学科、生物地球学部に恐竜学科を新設
松山大学 情報学部を新設
博多大学 25年4月開学(福岡市博多区、データサイエンス学部)予定
ZEN大学 25年4月開学(オンライン大学、知能情報社会学部)予定

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