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近年、急速なICT技術の進歩や社会への普及に伴い、AIやデータサイエンスを学びの中心に据えた学部学科の新設が進んでいる。そうした中、東洋大学では時代に先んじて、2017年4月に情報連携学部:INIAD(Information Networking for Innovation and Design)を開設。「情報」と「連携」をコンセプトに「文・芸・理融合」を強く打ち出したカリキュラムは徐々に注目を集め、入学希望者数も毎年右肩上がりとなっている。INIADでの先駆的な取り組みを中心に、今後の展望や求める学生像について、学部長である坂村健教授に話を聞いた。
取材・文 林 郁子
2017年4月に情報連携学部:INIAD(Information Networking for Innovation and Design)を開設
情報連携学部:INIAD(Information Networking for Innovation and Design)を開設した背景について坂村学部長はこう語る。
「INIAD開設当初の2017年は、まだ情報科学や情報工学は、プログラミングなどの専門的な仕事をする人だけが学ぶものだと思われていました。しかし、現代社会は、コンピュータを制御する情報工学の技術やデータサイエンスに基づく知見の上に成り立っています。『情報』の恩恵を受けずに生きている人はいません。どのような仕事をし、どのような人生を送るにも『情報』の知識やスキルは大きな強みになります。さらに、現在の高度化し複雑化したさまざまな技術を進化させていくには、いくつもの専門的な知識や技術を持つ人々が協働して取り組む必要があります。そのためのコンセプトが『連携』なのです」
INIADでは、まず、1、2年生にかけてすべての学生が、プログラミング、数理(数学と確率統計)、コミュニケーションを集中的に学び、情報連携の基礎的なスキルを身につける。次に2年生からは学生が希望する進路に合わせた科目群を選択して専門的な学びを深める。そして、3年生からはチーム実習として他の科目群を選んだ学生とチームを組み、1年間かけて自ら立ち上げたプロジェクトを遂行。最終学年となる4年生は研究室に所属し、専門的なテーマに取り組むという流れだ。
時代と共に進化し続けることの重要性
2023年度に実施されている同学部のカリキュラムなどの教育体制は「INIAD2.2」と名付けられている。この名称に、時代の変化に即応する同学部の姿勢が現れている。
「2017年の学部開設後、第一期生を送り出した2021年に、シラバスやカリキュラムを大幅に見直しver.2.0に変革しました。その後も見直しを重ねて、現在は2.2となっています。デジタル時代への対応は一度やれば終わりではありません。よりよい進化のため、常に見直し、変わり続けていくことが必要です。そのため、私たちはINIADの設備、カリキュラム、教授法などあらゆるものをバージョンアップさせています」と、坂村学部長は明言する。
その言葉を裏付けるように、2023年初頭から急速に普及した文章生成AIであるChatGPTに対しても、坂村学部長は迅速に学部としての見解を表明。「学生が自分の頭で考えるためのツール」としてAIを使いこなすことを推奨するとともに、すべての学生が経済的負担なく高性能の文章生成AIを利用できるように、学内の環境を整備した。
学生の成長を促すスマートキャンパスの可能性
情報を学ぶ学生のために最適化されているのは、カリキュラムだけではない。赤羽台キャンパスにあるINIADの校舎「INIAD HUB-1」は最先端の学びの空間となっている。クラウドベースの教育システムを取り入れたスマートキャンパスで、学内のさまざまな設備や機器はデジタル化(IoT化)によって、ネットワーク上で管理。学生や教員は、スマートフォンやPCなどの端末を使って、学内情報の取得やメディアセンター(電子図書館)の電子書籍やジャーナルの閲覧、提出物などのやり取りを行うことができる。講義の案内や連絡事項は校舎内のデジタルサイネージにも掲示される。照明やエアコンにスイッチはなく、センサーによる自動制御のほかスマホを使って操作をするなど、最先端の技術に触れながら学ぶことができる。ユニークなのは、IoT化された設備や機器を、学生が教材として活用できる点だ。例えば学生の個人ロッカーは制御プログラムによって開閉するため、学生が自分で開閉を制御するプログラムを書くことが最初の実習となっている。研究に合わせ、センサーなどさまざまな機器や設備を組み合わせた実験を行うことも可能だ。
坂村学部長はINAIDのスマートキャンパスの意義をこう語る。
「校舎内には学生が自由に使える3Dプリンタを始めとする工作機器や、ロボットの制御プログラムをテストできる設備、プロジェクトオフィスなども揃っています。しかし、設備があるだけでは宝の持ち腐れです。重要なのはそれらを学生がリソースとして使いこなせるか否か。学生が活用できるようなカリキュラムを併せて提供することで、最先端の設備や機器が初めて意味を成すのです」
求めるのはより高い意識と意欲を持つ学生
坂村学部長は高校生に向けて、「人生、これから何をするにしても、コンピュータとネットワークが使いこなせるということは最大の武器になります」と、情報連携学部で学ぶ強みを発信する一方で、そのためには高校レベルの数学知識とコンピュータを学びたいという意欲は必須だと強調する。
「入学試験は合格できても、基礎的な数学の知識がなければ、その後すぐにつまずきますし、学業が評価基準に達しなければ卒業もできません。お互いに不幸になってしまいます」
入学後の数学の試験で規定の理解度に達していない学生には高校数学の学び直しも行ってはいるが、学生の意欲がなくてはフォロー体制も意味がない。幸い入学希望者の増加に伴い、学生の学力レベルも上昇しているという。
「私たちが求めるのは、コンピュータとネットワークの知識とスキルを身につけ、いろいろな人たちと協力しながら、自らの手で未来を築いていきたいという意欲のある学生です。新たなことにチャレンジしてみたいという高校生は、一度INIADのWebパンフレットなどに目を通してみてください」
多角的に取り組む東洋大学のデータサイエンス教育
総合情報学部総合情報学科(川越キャンパス)
「情報の創り手・使い手」になることを掲げ、基礎から最先端までのAIやデータサイエンスの知識やスキルをもとに、心理やスポーツ、メディアアートなど文理融合の幅広い分野に取り組む。2年生で、システム情報コース、心理・スポーツ情報コース、メディア文化コースのいずれかを選択し、学生は各コースの専門性を究めると同時に、関連する学問領域の幅広い知識と実践力も高めていく。コースごとに各種情報処理技術者試験や「情報」の高校教員免許、スポーツトレーナーの資格であるNSCA-CPTやCSCSなど、専門性の高い資格取得を目指すことができる。
食環境科学部フードデータサイエンス学科(朝霞キャンパス2024年度より)
「データで、新たな食の可能性を開く」という目標を掲げ、食環境科学部に2024年度から新たに設置。食に関わるあらゆる分野をカバーする研究分野「食環境科学」において、「フードシステム学」と「データサイエンス」を掛け合わせ、食を取り巻く課題解決に取り組む。フードシステムとは、農林水産物が生産者から消費者に届く仕組みのことで、データサイエンスの活用は、POSデータによるマーケティングや健康寿命の延伸、フードビジネスにおける高付加価値の創出、持続可能な食を実現するための政策の立案など、さまざまなフィールドに広がっている。食の専門知識を学び、デジタルデータの分析・活用技術を身につけることで、食の未来を創造するフードデータサイエンティストを育成する。