奨学金の拡充で多様性を促進し、学生により豊かな経験を―国際基督教大学(ICU)

奨学金の拡充で多様性を促進し、学生により豊かな経験を―国際基督教大学(ICU)

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コロナ禍は、家計の事情によって学びを断念せざるを得ない学生がいるという、社会的課題を浮き彫りにした。奨学金を利用して学んだものの、就職後にその返済が大きな負担になり、将来を描きにくいという問題も表面化している。学びと経済的負担のあり方を社会全体が問い直されている今、学生支援を目的として奨学金専用の基金を作り、奨学金制度を拡充させているのが国際基督教大学(ICU)だ。その具体的な取り組みと狙いについて、理事長の竹内弘高氏に伺った。

取材 松平信恭(大学通信)

経済的背景に拘わらず、多様な学生を受け入れる

理事長
竹内弘高 (たけうち ひろたか)
学校法人国際基督教大学理事長。
専門は経営学。1969年に国際基督教大学教養学部卒業。
1976年よりハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で教鞭をとり、1987年から一橋大学教授、2010年からHBS教授。2019年6月より現職兼務。

―ICUは近年、奨学金制度の拡充に取り組んでいます。その背景には何があるのでしょうか。

背景にあるのは献学の精神です。本学は、世界平和に貢献する人を育てることを使命として1953年に献学されました。献学にあたっては日米で熱心な募金活動が行われ、戦争を悔い、平和を希求する多くの方々による寄付金をもとにして本学が誕生しました。このような経緯もあり、献学当初の国際基督教大学要覧には、「学業に必要な資金を欠く学生でも能力や資格があれば、入学を拒否されることはない」という趣旨の方針が記載されていました。実際、当時は学費収入の25%に相当する額を奨学金として学生に提供していました。今、改めて献学の精神に立ち返り、広く海外も含め経済的に恵まれない学生にもICUでの教育の機会を提供するために、奨学金支給率25%を復活させようというのが、近年の奨学金をめぐる取り組みの根底にある考え方です。

個人的な思いではありますが、私自身の経験も背景にあります。私は1965年にICUに入学しました。そして、サッカー部でタンザニアやカメルーン、インドネシア出身の先輩に出会いました。まったく異なる文化的背景や価値観を持つ先輩たちとともに学んだことは、私にとって大きな財産になりました。今思えば、彼らは奨学金を得て学んでいたのだと思います。つまり、奨学金がICUにダイバーシティをもたらしてくれて、私にかけがえのない経験を与えてくれたのです。ダイバーシティというICUにとっての大きな財産をより豊潤なものにし、未来の学生にも豊かな経験をしてもらうために、奨学金が大きな役割を果たしてくれると考えています。

独自の基金を運用し、奨学金の財源を確保する

―奨学金といえば、アメリカの大学では活用が盛んです。日本とアメリカでは、奨学金のあり方に関して、どのような違いがあるのでしょうか。

日本で言う奨学金は、ほとんどの場合がローンです。つまり返済の必要があります。対するアメリカでは、多くの場合は給付です。「No Strings attached(紐なし)」と呼ばれており、返済の必要がないという意味ですね。ハーバード大学の場合、25%の学生が奨学金の給付を受けています。

本学では少人数教育を徹底しているため、学費収入以上の多額の資金を一人一人の学生に投じています。これらの資金や奨学金には、寄付金や寄付金などを元にした基金の運用益を充てています。これはアメリカの優れた多くの大学と同じ財政構造です。最近、東京大学基金の積極運用が話題になっていましたが、本学はずっと以前から教育研究活動充実のための基金運用に取り組んでいたのです。運用を行うのは金融のプロでもある本学の基金担当理事であり、安定した運用益を上げ、奨学金へと還元することができています。この仕組みもまた、本学が独自の奨学金制度を充実させることができる背景になっています。

奨学金とともにアメリカの大学が力を入れているのが、学生寮です。ハーバード大学では、全員が寮で生活します。ということは、年間1000万円もする学費を自力で払うことができる富裕層の学生と、経済的には困難ながら高い意欲と能力をもって奨学金を得て学ぶ学生が、日常生活をともにすることになるのです。ここで富裕層の学生は、それまでに接したことのない背景や価値観を持った学生と出会います。また、自身の社会的使命を考えます。ビル・ゲイツをはじめとしたハーバードに入学した実業家が慈善活動に力を入れているのには、そういった背景があるのです。これは、ハーバード大学だけに限ったことではありません。

―奨学金の違いの背景には、大学のあり方の違いもあるのでしょうか。

アメリカでは、「大学は基礎をつくる4年間」と位置付けられています。本当の勝負は大学院なのです。ビジネスでも国際機関の職員でも、そしてエンジニアや研究者でも、「プロフェッショナル」として活躍するためには大学院修士課程の修了は必須です。そこを見越しているのがアメリカです。

対する日本では、今もまだ「いい大学に入って、いい企業に入ることが大切」という考え方が根強くあります。すると、“いい大学”に入ることが目的になってしまう。その結果、中学受験が加熱化し、小学生の頃から塾を掛け持ちするような事態が起こります。こうなると、経済力のある家庭の子どもしか“いい大学”には行けませんよね。非常に由々しき事態です。奨学金はそこに風穴を空け、家庭の経済的事情に拘わらず、意欲と能力のある学生を応援するという意味があります。

ハーバード大学の学費が年間1000万円という話をしましたが、日本では、国立大学の年間の学費は60万円前後ですよね。これは、学費を分配する権限を、国が握っているか大学が独自に握っているかという違いを意味します。日本は、広く全体に行き渡るように国が支援を行っています。ただし、支援が薄くなるという課題もあります。アメリカは絞り込んだ対象に対して、手厚く支援をしているのです。「公平」に対する考え方の違いとも言えるでしょう。

献学の精神に立ち返り奨学金支給率25%を目指す

―2021年には奨学金の新たな財源として、Pay Forward基金を立ち上げました。

前述のとおり、本学は寄付金などを元にした基金を運用し、学費の不足分や奨学金の財源にしています。奨学金制度をより一層充実したものにし、多様な学生が学べるようにするにはさらなる財源が不可欠です。そこで新設したのがPay Forward基金です。

同基金の発想の原点となったのは、私自身のICU時代の経験です。本学は当時も現在も、少人数・対話型教育を大切にしています。指導のきめ細かさというメリットを持つ少人数・対話型教育ですが、大学経営という点では、学生からの学費による収入が限られるという課題があります。解決策としては学費を値上げするという方法がありますが、それには限度があります。また、経済的に余裕のある家庭の子どものみが学べるようになってしまい、本学が大切にする多様性が損なわれてしまいます。学費収入以上に一人一人の学生の教育研究にかかる経費をどのように捻出していたのか、それが、大学の保有する基金の運用益による補填です。

計算してみると、私が学生だった時代は、現在の貨幣価値に換算すると学生1人につき4年間で300万円が補填されていたようです。それだけの赤字に目をつむってでも、日本や世界の将来に貢献する若者の育成に取り組んでくれていたのです。時代によって補填額は変わっていきましたが、基金の運用益による補填のおかげで充実した少人数・対話型教育が行われてきたことは変わりません。つまりすべてのICU卒業生は、先人たちの後輩を思う気持ちによって育てられたのです。この思いを卒業生である我々が受け継ぎ、未来の学生たちのために支援しようというのが、Pay Forward基金です。現在、すべての卒業生に呼びかけ、寄付金を集めています。大学としても保有する基金約600億のうち80億円を奨学金専用のPay Forward基金とすることを決定しましたので、これに寄付金を加え、10年後には100億円の基金にすることを目指しています。

基金の立ち上げのもう1つの背景は、他の私立大学と比較して高額と言われる本学の学費です。もちろん、少人数制で充実したリベラルアーツ教育を行うという本学の教育の質を考えると、決して高い金額ではなく、アメリカの大学に比べると圧倒的に安いと言えます。しかし、高い学費は入学を志望する人にとってハードルになってしまいます。このハードルを取り払い、意欲のある人に門戸を開くために奨学金のさらなる充実が必要です。それを加速させるのがPay Forward基金です。

Pay Forward基金の充実により、奨学生が増えることが私たちの願いです。目指すのは、本学献学時の水準である、25%に奨学金受給率を上げることです。

多様性をもたらしてくれる1都3県以外の出身者の就学を支援

―2024年4月からは、ICU Cherry Blossom奨学金も導入されます。

ICU Cherry Blossom奨学金は出願前に給付の可否がわかる予約型の奨学金です。入学から4年間受給した場合、自己負担額は約200万円となり、国立大学に進学するのと同程度の負担になります。

同奨学金の特徴的な点は、首都圏の1都3県以外の受験生を対象としていることです。同じ日本であっても、地域ごとに首都圏とはまったく違った価値観や課題があります。東北では震災以降、社会起業家が次々に誕生しています。そういった多様さや変化に、首都圏で経済的に恵まれた環境だけで生活していてはなかなか気づくことができません。ICU Cherry Blossom奨学金が奨学生以外に気づきや学びを与えてくれることを、大いに期待しています。

ICU Cherry Blossom奨学金は、全国各地から本学に入学する学生を増加させてくれるはずです。それはすなわち、本学にダイバーシティをもたらします。寮で生活する学生も多くなるでしょう。首都圏出身の学生と寮生活を共にし、日々の暮らしのなかで異なる価値観や異なる背景を持った人との対話を深めることも、ICU Cherry Blossom奨学金がもたらしてくれる効果として期待しているものです。

その他にも、ICU Peace Bell 奨学金やICUトーチリレーHigh Endeavor 奨学金など、本学は奨学金の拡充を行っております。これらの奨学金は、ICUにダイバーシティをもたらすものとして、大きな役割を果たしてくれるでしょう。

マインドチェンジの鍵を握るのは高校の先生。子どもたちの後押しを

―受験生や高校の先生方にメッセージをお願いします。

現代の高校生は「すっ飛んでいる人」がたくさんいると感じています。「すっ飛んでいる」とは、考えや行動が従来の枠に収まりきらないということです。これは素晴らしいことです。インターネットを駆使して外から情報と刺激を得て、柔軟で新しい発想を持った人が数多くいるのです。まさに皆さんは、デジタル時代、VUCAの時代の申し子です。自信を持ってほしいと思います。

皆さんはとても恵まれた世代でもあります。というのも、意欲ある人を応援する仕組みが過去に例を見ないほど整えられているからです。例えば柳井正財団は、1人あたり最大95000ドル×4年間の奨学金を給付し、ハーバード大学をはじめとした世界トップレベルの大学へ学生を送り出しています。同様の支援は日本財団も行っています。対象が15歳ではありますが、テクノロジーとデザイン、起業家精神を学んで社会に変化を起こす人材を育てようという「神山まるごと高専」も誕生しました。情熱と使命感をもったチェンジメーカーを育てるべく、「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」というインターナショナルスクールも充実した学びを提供しています。これらはすべて、国が主導した学びの環境ではなく、若者の未来を応援したいという個人によって整えられた環境なのです。そういった環境を大いに利用し、未来を築いていってもらいたいと思います。

先生方には、皆さんこそがキーパーソンであることをお伝えしたいです。長きにわたって日本では、「いい大学に入り、いい企業に入ることこそが大切」だとされてきました。しかしこれからは違います。進学先は国内だけでなく海外にまで広がっています。起業して社会課題に取り組んだり、イノベーションに挑むという働き方もあります。高校生に様々な選択肢を提示し、意識変革を促すことができるのは、高校の先生方にほかなりません。ぜひ高校生たちを、これからの時代にマッチするマインドセットへと導いてあげてください。

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