女子大学の魅力に迫る―3女子大学学長鼎談

女子大学の魅力に迫る―3女子大学学長鼎談

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それぞれが百年以上もの伝統を持ち、女子教育の先駆者として知られる3女子大学。
なぜ時代が変わっても選ばれ続けているのか、その強みや魅力はどこにあるのか、そして女子大学が果たすべき役割とは―。
各大学の学長が思いを語り合った。

日本女子大学
日本女子大学学長
篠原聡子

東京女子大学
東京女子大学学長
森本あんり

津田塾大学 
津田塾大学学長
髙橋裕子

ジェンダーギャップのない社会を目指して

―今年、各国の男女格差を数値で表す「ジェンダーギャップ指数」で日本は146カ国中125位でした。この現状をどう見ていらっしゃいますか。

髙橋 評価対象である政治・経済・教育・健康の4分野のうち、日本で最も男女格差が小さいのは教育分野です。しかし、識字率と初等・中等教育就学率は男女格差なしということでジェンダーギャップ指数1位なのに、高等教育就学率になると途端に105位に落ちています。大学・大学院時代は今後の人生やキャリアを考える上で大切な時期なのに、多くの女子学生は男女格差の激しい環境に置かれている。これは非常に問題だと感じます。

森本 大学で急に格差が激しくなるのは理系分野に進む女性が少ないからだという人もいますが、それはアメリカや韓国も同じです。日本だけこれほど落差があるのは、大学院に進む女性が他国より少ないなど他の要因があるはずで、その理由や解決策を考えていかなければなりません。しかも、社会に出れば政治・経済分野ともに男性が圧倒的多数。本来なら女性こそ大学へ進学して、そんな現実を乗り越える力を身につける必要があると思います。

篠原 私は長く建築界に携わっていますが、この世界もやはり男性が圧倒的多数です。日本では会議や授賞式の出席者が全員男性ということも珍しくありません。世界的に見ればおかしいし恥ずかしいことなのですが、ご本人たちはそう感じていないようです。私としては、後続の女性建築家たちのためにも「おかしいですよ」と声を上げ続けていかなければと思っています。

髙橋 諸外国はすでにそのおかしさに気づいて、自ら変わろうとしています。日本でも、森本学長のようにジェンダーギャップを熱く語る男性がもっと増えてほしいですね。女子学生が「女性を支援する男性がいる」と知り、その姿勢を間近で見ることができればきっと力になるでしょう。

森本 日本ではよくジェンダーギャップを指して「女性問題」と言いますが、実際は男性が意識を変える必要があるわけですから、これは男性問題ですよね。日本の男女格差を解決するには、まず男性が現状のおかしさに気づかなければならないと思います。

篠原 私自身も、学生時代に女性のキャリアを支援する男性教員に出会えたことが今につながっています。そうした男性がもっと増えてくれたら、女子学生たちが自分の可能性に気づける機会も増えていくはずです。

女子大学の環境が自信や創造性を育む

―そうした状況の中、女子大学としてどんな役割を果たしていきたいとお考えでしょうか。

髙橋 津田塾大学は女性をセンターに置いて育んでいくための場所です。女性が周囲から期待され、自己の可能性に気づき、自信を得られる。そんな環境は、残念ながら社会に出たら経験できません。また、女性がより深く長く学べるように後押しするのも私たちの重要な役割です。大学は4年間で終わるわけではなく、望めば修士課程や博士課程にも進めます。日本はまだ女性の大学院進学率が低いので、高等教育はもっと広く奥行きのあるものだとしっかり示していきたいですね。

森本 東京女子大学は学生が「世界には女性が活躍できる場がたくさんある」と実感できる場であり、高等教育におけるジェンダーギャップを変える役割も担っています。女子大学のカリキュラムは現代女性のニーズに合っていないなどという報道も見かけますが、これは大きな事実誤認で報道側の先入見の表れです。本学の使命は良妻賢母の育成ではなく、ビジョンや志を持つ女性を多く育てて日本社会を変えていくこと。そのために、自ら女子大学であり続けることを選んでいるのです。

篠原 創造性を育む上でも、大学時代をジェンダーフリーな環境の中で過ごすことには大きな意義があります。私は、ジェンダーバイアスのない環境で学生の創造力が開花していくのを幾度も目の当たりにしてきました。また、日本女子大学では学生に様々な職業のロールモデルを示すことも重視しています。例えば建築関係の現場監督など、女性に不向きとされてきた分野で活躍しているOGに話をしてもらい、学生の選択肢を広げるよう努めています。

―各大学の、歴代学長や教員の女性比率を教えてください。

髙橋 歴代の学長は11人中10人が女性で、この比率は日本でトップクラスです。教員については、現在の女性比率は約50%です。この数値をさらに高めようと、教員採用では女性を積極的に募集しています。

森本 本学の女性教員は約40%で、私が学長になってからは募集要項に「教員の女性比率を50%とする採用方針に則り、女性の積極的な応募を歓迎します」と明記しています。業績が同等なら女性を優遇するという大学もありますが、業績にのみ同等を求めるのではなく、前提条件の違いを考慮して「公平」に機会を分配すべきでしょう。例えば、ライフイベントを経た女性が男性と同じ業績を挙げていたら、その人は男性の倍の努力をしているはずですから。

篠原 確かに、教員に応募する世代は30〜40代が中心です。女性は妊娠や出産などのライフイベント期に当たるので、そのために業績の評価基準となる論文の本数が男性より少なくなりがちですね。本学の歴代学長は15人中10人が女性で、教員の比率は現在約50%です。女性教員比率は、今後さらに高めていく方針です。

世界の様々な課題にひるまず立ち向かう力を

―各大学の教育理念や、そこに込められた思いをお聞かせください。

髙橋 「変革を担う女性の育成」をモットーに掲げ、変革を待つのではなく自ら担っていく覚悟を持った女性の育成を目指しています。創立者の津田梅子は、女性に高等教育が認められていなかった時代に、自立した女性の育成を目指し、前身となる女子英学塾を創立しました。私たちもその意思を受け継ぎ、ジェンダーギャップのない社会への変革を担う女性を育てたいと考えています。

森本 本学はキリスト教精神に基づいたリベラルアーツ教育を軸としており、学生にはどんな場面にもひるまない力を養ってほしいと考えています。大学は、知識を得るだけでなく将来へのビジョンや志も育む場です。学生にこの両面を身につけてもらえれば、大学教育は成功と言えるのではないでしょうか。

篠原 信念徹底、自発創生、共同奉仕の三綱領に基づき、今年、新たなタグラインとして「私が動く、世界がひらく。」を策定しました。社会に出たら予想外の事態に直面することも多いでしょう。でも、「私はこの事態を改善できる」という意識があれば、きっと乗り越えられるはずです。それに、創造性は天から降るものではなく、知識や経験から生まれるもの。社会に出たら必要なタフネスや課題解決に使える引き出しを、大学での学びを通して養ってもらえたらと思っています。

理系人材をはじめ文理融合型人材も育成

―日本では理系分野に女性が少ないことも課題です。理系の学部学科を擁する女子大学として、この課題にどう取り組んでいらっしゃいますか?

髙橋 本学には数学科と情報科学科があり、両分野における男性優位の現状を変えていきたいと考えています。日本の初等・中等教育には、今も「理系分野は女性には不向きだ」というジェンダーバイアスが見られ、少女たちはその中で育っています。ですから、私たちは実際はそうではないと伝えていかなくては。その一環として、2008年に女性研究者支援センターを設立し、女性研究者を支援するとともに、中高生対象の科学全般に関するワークショップなども実施しました。

森本 リベラルアーツ教育には自然科学への理解が必須です。本学は開学初期からあった数学部門を現代のニーズに合わせるため、来年度から数学専攻と情報理学専攻を「情報数理科学専攻」に統合します。また、経営分野の学びを強化し、再来年度には経済経営学科を新設予定です。人的資本管理や業務管理などの学びを通してマネジメント力を育て、あらゆる組織でリーダーシップを発揮する女性を育てていきます。

篠原 本学では1948年に家政理学科を設置し、その後、私立大学唯一の理学部として独立させました。同学部では現在、高校生対象のサマースクールを実施するなど日本における理系女性の裾野拡大にも取り組んでいます。また2024年に建築デザイン学部、2025年に食科学部(仮称・構想中)を設置予定であり、女子総合大学として文理融合の多様な教育を推進します。

髙橋 ただ、社会では文理融合的な考え方ができる人が求められるようになりつつあります。私たちもより幅広い視野で理系を捉えて、文理を横断できる人材を育てていかなくては。同時に、次世代の女性たちには、大学院で深く学ぶことの重要性も伝えていきたいですね。世界では修士号や博士号を持つ女性がたくさん活躍しています。

森本 そもそも、高校生の段階で文系と理系のどちらかを選択させるところに無理があります。本来は、大学で幅広く学びながら自分の興味関心を見つけていくべきです。大学側も、学生に「学ぶって面白い」と思ってもらえるような授業をする必要がありますね。大学で学ぶことの面白さを知った人は、おのずと大学院を考えるし、生涯にわたって学びを深めたくなるでしょう。

篠原 確かに、日本の大学教育は4年間ですべて終えようとする傾向があります。専門性をしっかり深めたい人にとっては、プラス2年間は必要でしょう。日本でも早く、女性が修士課程や博士課程に進むのが当たり前になってほしいですね。

大学での学びを通じ自分の可能性を伸ばして

―最後に、受験生や保護者に向けてメッセージをお願いします。

髙橋 私は卒業式で、学生から「女子大学だから入学したわけではないけれど、ここで4年間を過ごして本当によかった」という言葉を何度も聞きました。受験生の皆さんはぜひ、自分にフィットする、自分の伸びしろを最大限に伸ばしてくれる大学を選んでください。世界には社会を変えようとしている女性がたくさんいます。その輪の中に入ることを具体的にイメージできる学びや、高い志を持った仲間が、皆さんの可能性を大きく広げてくれるでしょう。

森本 リベラルアーツ教育は時代に合わせて進化を続けています。来年度からは、日本文学と数学など異なる学問領域の教員がペアで授業を行う「知のかけはし科目」をスタートさせます。従来の教養科目とはまったく違う“生まれ変わった一般教養”にご期待ください。本学で養った課題発見力や未知の物事に取り組む姿勢は、社会に出た後、必ず役立つと思います。

篠原 本学は全学部学科に卒業論文または卒業制作があり、そのテーマは学生が自ら発見し設定します。また、全学部共通カリキュラムには、地域などにある課題の発見から解決手法、実際の行動を自治体や企業と取り組む実践的なプログラムもあります。こうした様々な教育を通して、自分らしく生きるための一歩を自ら踏み出せる女性に育っていってほしいと願っています。

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